国土審議会東北地方開発特別委員会(第13回)
議事概要
- 国土審議会東北地方開発特別委員会企画部会調査検討報告について
国土審議会東北地方開発特別委員会(委員長:明間輝行 (社)東北経済連合会会長)の下に設けられている企画部会(部会長:宮澤美智雄 (財)社会開発総合研究所理事長)では平成8年5月以来、新たな東北開発促進計画についての調査検討を行ってきたが、今回その結果をとりまとめ、特別委員会への報告がなされた。
本報告では、21世紀の日本の国土を先導するフロンティアとして調和のとれた発展を図るため、「多彩なライフスタイルの展開が可能で、暮らしやすい東北」を形成していくことを基本目標としている、また、計画の推進に向けては、国、地方公共団体、住民、NPO、民間企業等の多様な主体の参加と連携による地域の創意と工夫を重視した地域づくりを進めることとしている。
- 委員からの主な意見は以下のとおりである。
- 新たな東北開発促進計画では、具体のプロジェクトをきちんと位置づけるべきである。
- 時代の変化に対応して、ブロック計画は5年に一度くらい策定し、全総にその構想を盛り込ませるくらいのものをつくるべきである。
- 元気な東北、活力ある東北をつくるために、産業の部分を重視すべきである。
- 東北には、東北大学未来科学共同技術センターなどがあり、これらの知的資源の集積を活用すべきである。
- 首都機能移転については、北東地域が適地であるということを書くべきではないか。
- 人が住んでこそ地方であり、個性が大事にされた教育を行うことをもっと位置づける必要がある。
- 津軽海峡大橋、むつ小川原開発について位置づけるとともに、東北新幹線「盛岡・新青森間」の早期完成に配慮してほしい。
- 岩手山の観測強化が盛り込まれていることはよい。
- 厳しい財政状況の中でも、重点的に優先して実施すべき施策・プロジェクトについて計画に明示する必要がある。
- 首都機能移転について方向性を盛り込んでいくことはできないか。
- 仙台における国際ハブ空港を検討して行くべきではないか。
- 効率性だけではなく、地域間の公平に配慮した国土基盤投資を進める必要がある。
- 地方中枢だけでなく、地方中核・中心都市の整備も位置づけていく必要がある。
- ラダー(梯子)型地域構造の形成は、県の地域整備の考え方と合致している。
- ヒューマンスケールの都市と農山漁村が連携した生活圏を整備していくことが結果的に効率的な地域整備につながるのではないか。
- 日本海国土軸の形成は重要課題であり、骨格となる高速交通網の整備を進めてほしい。
- 仙台とともに新潟は中枢拠点都市圏として位置づけられており、日本海交流での中枢拠点として各種機能の整備が必要であるので支援してほしい。
- 首都圏、北海道とともに隣接している北陸、中部との連携についても書いてほしい。
- 都市ネットワーク強化という観点から、ラダー型構造の中での拠点などの適切な機能連携や役割分担を行うべきである。
- 光ファイバ等による情報ネットワークの整備について中身を充実させてほしい。
- 内容としてはよく網羅され、整理されており、検討に感謝したい。
- 大都市が元気のない時代であり、地方から新しい風を起こすべきである。
- 近年、長期的投資という姿勢がなくなってきているが、効率性のみで論じるべきではなく、インフラ整備などやるべきことはやっていかないといけない。
- 日本にはハブ空港らしいハブ空港はないので、きちんとつくっていくべきである。
- 国際化にあたっては、三内丸山、出羽三山、平泉などの東北独自の文化や歴史をアピールしていくべきである。
- 北東国土軸を支える新幹線ネットワーク整備、東北インテリジェント・コスモス構想や東北ベンチャーランド運動の支援体制整備、広域国際交流圏のゲートウェイ整備、意欲ある人材づくりなど夢のあるプロジェクトを盛り込んでほしい。
- 今後の新たな東北開発促進計画の策定スケジュールについて
今回の国土審議会東北地方開発特別委員会企画部会調査検討報告を基に、今回の特別委員会の議論を踏まえ、具体的な施策等を盛り込んだ計画案を作成し、東北7県及び仙台市をはじめ地元の意見を踏まえつつ、企画部会、特別委員会での審議を経て、本年度末を目途に新たな東北開発促進計画を閣議決定する予定で進めることとされた。
国土審議会東北地方開発特別委員会企画部会調査検討報告(概要)
本報告は、「21世紀の国土のグランドデザイン」及び東北の住民各層の意見を踏まえながら、企画部会の下に設置された「新たな東北開発促進計画の策定に向けたワーキンググループ」における検討を経て、これまでの企画部会における新たな東北開発促進計画の策定に向けた調査検討結果をとりまとめたものである。
第1章 東北開発促進計画の性格と課題
- 計画策定の意義
本計画は、人々が自然と共存しながら、ゆとりある生活をおくることができる東北を形成し、21世紀の日本の国土を先導するフロンティアとしての役割を円滑に担えるよう、東北がさらに調和のとれた発展を続けていくために策定する。
(計画期間)
概ね平成22〜27(2010〜2015)年を目標年次とするが、東北の望ましい姿については、21世紀前半を見通して掲げる。
(計画の性格)
東北に関わるすべての人々のための計画となること、すなわち、国及び地方公共団体の東北に関わる事業実施の基本となるとともに、地方公共団体が独自に事業を実施するに当たっての指針となり、また、地域振興を図る上での民間企業に対する指針及び住民等による自主的な地域づくりの指針となることが期待される。
本計画での「東北」とは、青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県、福島県及び新潟県の区域をいう。
- 東北の歴史と国土
(東北の歩み)
東北は縄文時代から経済、文化面等で独自の発展を遂げてきたが、一方で自然災害や資本蓄積の遅れ等の問題を抱えてきた。
戦後、東北の開発が国家的な観点からクローズアップされ、昭和32年には東北開発促進法等が制定された。その後、高度成長期においては、豊かな自然や文化・風土を残しつつ、食料、資源・エネルギー、労働力の供給等を通じて我が国の経済発展に寄与してきたが、全国との所得格差の縮小はわずかなものにとどまった。
昭和50年代以降、高速交通体系の整備が逐次進展するとともに、産業の集積が高まりを見せており、全国との所得格差も大幅に縮小しつつあるなど、東北は21世紀に向けて発展の新しいステージに入りつつある。
(東北の国土)
東北は、国土の約2割を占める広大な地域に全国の約1割にあたる人々が住み、豊かな自然環境に恵まれている。こうした環境の中で、東北は、都市が多核的に分散する変化に富んだ地域を形成している。また、東北は自然の豊かさが脚光を浴びているとともに、長い歴史に培われた文化や風土、地域社会における人と人とのつながりを豊富に有している。
- 新たな東北開発促進計画の課題
(近年の東北を取り巻く状況の変化)
戦後の経済成長の過程で一極一軸型の国土構造が形成されたが、そこでは人口、環境等さまざまな問題が生じた。
近年、東北においては、人口移動が転出超過から転出入が拮抗する形へと変化してきている。地域構造についても、南北軸とあわせて東西軸の整備も進んできており、ラダー(梯子)型地域構造の形成に向けた基礎が築かれつつある。
また、地球時代の進展、人口減少や過疎化・高齢化の進展、高度情報化の進展が予想され、また、ものの豊かさから心の豊かさ、自然とのふれあいをより大切にするような価値観の変化、多様化が進展している。
(新たな東北開発促進計画の課題)
近年の東北を取り巻く状況の変化等を踏まえ、人々が多彩なライフスタイルを展開することが可能で、魅力ある職場、活力ある産業が立地する社会を形成することにより、21世紀の日本における多軸型国土構造の形成を先導する自然共存型社会のフロンティアとして東北を整備していくことが課題となる。
第2章 計画の基本目標と基本方針
- 計画の基本目標
21世紀前半という長期を見通して、東北の持つ優れた条件を活かしながら、東北と関わりを持つ一人ひとりにとって、「多彩なライフスタイルの展開が可能で、暮らしやすい東北」を形成していくことを計画の基本目標とする。
- 計画の基本方針
計画の基本目標である「多彩なライフスタイルの展開が可能で、暮らしやすい東北」を形成するための計画の3つの基本方針は次のとおりである。
(1)ゆとりある暮らしの中で、自然の恵み、都市的サービスを享受できる東北
(2)世界と人々や情報、文化が交流する開かれた東北
(3)魅力ある職場が存在し、産業に活力のある東北
これら3つの基本方針に基づいて、本計画が進められることにより、「多彩なライフスタイルの展開が可能で、暮らしやすい東北」が実現され、21世紀に向け調和のとれた新しいライフスタイルが展開されるフロンティアとしての東北が形成される。
- 計画推進に向けた多様な主体による取組
21世紀に向けた東北の地域づくりにあたっては、公的主体による地域整備のための施策の実施とともに、民間主体の理解、参加、協力が不可欠であり、国、地方公共団体等のみならず、住民、NPO、民間企業等多様な主体の参加と連携による地域の創意と工夫を重視する。
- 東北の人口・社会経済の動向
(1)東北の人口・世帯の動向
東北においても全国と同様に、計画期間中である平成17年前後に総人口はピークを迎え、その後緩やかな減少が進むとともに、高齢化が進展するものと見込まれる。東北の世帯数は、核家族化により増加し、特に高齢単身者世帯は急速に増加するものと見込まれる。
(2)東北の社会経済の動向
東北の経済は、今後、成長率は鈍化するものの着実な成長を続けると見込まれる。就業構造については経済のサービス化の進展等により、第1次産業がさらに減少し、第3次産業は増加、第2次産業は微増すると見込まれる。
第3章 東北整備のための方向と施策
第2章で示した3つの基本方針を実現するための具体的方向と施策を示す。
「ゆとりある暮らしの中で、自然の恵み、都市的サービスを享受できる東北」については「ゆとりある暮らしを営むために」と「自然の恵みを守り、味わうために」にわけて記述している。
- ゆとりある暮らしを営むために
(1)地域の創意と工夫が活かされた地域づくり
ボランティアやNPOの活動の支援・連携、地域独自の特性を活かした地域づくりの支援
(2)多彩なライフスタイルの展開が可能な総合的居住環境の整備
上下水道等の整備、核家族化・高齢化に対応した住宅整備等生活関連資本の充実
(3)都市と農山漁村が結びついた多自然居住地域の形成
広域の市町村の連携、多自然居住地域の形成、一般国道・地方道の整備・改良、マルチメディアの活用等
(4)生活をゆったり過ごせ、子供がのびのび育ち、高齢者等が安心して暮らせる環境整備
運動公園等の整備、高度な医療体制の整備、保育施設の充実、高齢者等が暮らしやすいコミュニティの形成、男女共同参画社会の形成等
(5)歴史と文化を大切にする美しい地域づくり
歴史的・文化的環境の保全・復元、芸術活動への支援、景観への配慮等
(6)東北における都市のネットワーク形成と多彩で高度な都市機能の充実
中枢拠点都市圏、地方中核都市、地方中心都市、小都市の機能分担と機能強化、中心市街地の活性化、コンパクトな街づくり等
(7)雪と共存する地域づくり
除排雪、防雪施設等の整備、親雪活動の推進、克雪・利雪技術の研究開発等
(8)半島・離島地域の利便性向上
交通基盤・生活環境の整備、観光資源の活用等
- 自然の恵みを守り、味わうために
(1)自然と共存する地域整備
白神山地等の貴重な自然環境の適切な管理、環境と調和した地域整備、公害・環境ホルモン等への対応等
(2)中山間地域での国土保全と周辺地域との連携
中山間地域等の有する公益的機能の維持、多自然居住地域としての一体的な整備等
(3)災害に強い地域づくり
治山・治水、海岸保全等の国土保全施設の整備、地域防災体制の整備等
(4)流域圏に着目した国土の保全と管理
河川の上下流連携と管理、水土保全機能の高い森林の整備、農用地等の維持管理等
(5)廃棄物・リサイクル問題への対応
廃棄物発生の抑制、資源回収・利用体制の充実、廃棄物等の適正処理体制の整備等
(6)自然と人とのふれあい
参加型・体験型の交流の推進、自然と身近にふれあうことができる公園・森林の整備等
- 世界と人々や情報、文化が交流する開かれた東北のために
(1)東北での北東国土軸、日本海国土軸、東西軸の整備によるラダー型地域構造の形成
高規格幹線道路、地域高規格道路、新幹線鉄道、高度情報通信基盤の整備等
(2)世界に開かれた広域国際交流圏「東北」の形成
世界に開かれた都市機能の整備、空港・港湾機能の充実、国際イベントを通じた世界へのアピール等
(3)広域連携による地域づくり
県を越えた地域連携軸の形成、ブロックを越えた交流・連携、ブロック全体での広域連携等
(4)首都圏との連携と交流
首都圏の高次都市機能の受入れ等
- 魅力ある職場を確保し、活力ある産業を育てるために
(1)独創的な研究開発機能の充実と成長分野の産業育成
東北インテリジェント・コスモス構想をはじめとする産学官の連携・協力、ベンチャー企業育成、バイオ・情報通信・環境等成長分野の育成等
(2)多彩なライフスタイルを支える産業の展開
商業・サービス業や生活関連産業の充実、知識財を生産する産業の立地、、グリーンツーリズムやリゾート整備等
(3)高度化、高付加価値化による産業構造の強化と多彩な地域産業の充実
産業支援サービス業等の集積、地域産業の充実、特色ある地場産品の開発、企業・大学・研究機関間のネットワークの形成、企業による環境管理等
(4)豊かな農林水産業の展開
担い手の育成・確保、消費者の要求への対応、研究開発と基盤の整備、体験型・参加型農林水産業の展開等
(5)東北の活力を支える人材の育成
高等教育機関や試験研究機関等の整備、県立大学等の相互交流連携等
(6)エネルギーの安定供給
安定的な電力供給の確保、地熱等自然エネルギーの開発利用等
(7)地域金融の充実
新規産業創造、地域づくり支援等にも資する地域金融の充実等
第4章 計画実施にあたっての留意点
- 住民参加による計画推進
国、地方公共団体は、地域づくりに関する情報を広く開示、提供し、説明することなどを通じて、住民の主体性を重視し、住民と協調しながら計画を推進する。
- 重点的かつ効率的な地域整備
計画目標の達成に必要な基盤について重点的に投資を行うとともに、地域連携、建設コストの縮減、ストックの有効利用等により効率的な投資を行う。また、民間の資金、能力の活用を図る。
- 他計画等との調整
国土利用に関する諸計画、各県の総合計画をはじめとする各種長期計画と緊密な連携調整を図る。
- 計画の評価及び弾力的な運用
本計画の実施に当たっては、計画実施状況の評価を適時実施する。また、今後の東北の発展状況、諸情勢の変化、行財政改革の進展等に応じて、必要に応じて計画の見直し等を行う。
問合せ先:国土庁地方振興局東北開発室 (課長補佐)中島、(係長)藤原
(電話)03-5510-8060 (FAX)03-3580-7415