「新しい全国総合開発計画の基本的考え方」について |
平成7年12月 国土庁計画・調整局 |
I.新しい全国総合開発計画の策定に関する経緯とスケジュール
- 経緯
- (1) 国土総合開発法(昭和25年制定)に基づく全国総合開発計画は、昭和37年の第1次から昭和62年の第4次まで4つの計画が策定されている。
- (2) 第4次全国総合開発計画(四全総)は、西暦2000年を目標年次としているが、策定後国土をめぐる諸情勢が大きく変化し、新しい時代の変革に対応した新しい国土政策が求められている。
- (3) 平成4年から2年間かけて四全総の総点検を行い、平成6年11月の国土審議会で、計画策定後の情勢の変化を踏まえて、「これまでの全総計画の単なる継続でない新しい理念に基づいた国土計画(西暦2010年頃を目標)の策定が必要」と提言
- (4) 平成7年1月より、国土審議会に計画部会を置き検討開始
- スケジュール 21世紀の国土づくりの指針となるもので、広く国民の意見を踏まえたものにすることが重要と考え、ある程度時間をかけ、節目節目で検討の途中段階を公表し、各方面の意見を聞きながら作業をすすめる予定
- (1) 12月11日の国土審議会に計画部会から「新しい全国総合開発計画の基本的考え方」を報告したあと公表。国民各層での幅広い議論を期待
- (2) 平成8年秋に「計画の中間案」をとりまとめ公表する予定
- (3) 平成9年春に「新しい全国総合開発計画」を決定する予定
II.「新しい全国総合開発計画の基本的考え方」(国土審議会計画部会報告)の要点
- 新しい全国総合開発計画の意義と役割
−いま、なぜ新しい全国総合開発計画をつくるのか−
阪神・淡路大震災の経験や時代の大転換(地球時代、人口減少・高齢化時代、高度情報化時代へ)に直面して、国民が国土や生活の将来に懸念を抱き、将来の方向付けが見えない状況のなかで、国土開発の理念の変化を踏まえ、国土づくりの新しいビジョン(国土づくりの目標、政策課題及び対応の方向の体系)を提示することは有意義
(国土開発の理念の変化)
- 単なる経済的発展のための「開発」から、自然との共存、国土の質的向上を重視
- 「開発」の主体が国主導から地域の選択と責任で地域づくり
- 国内的視点のみでなく、地球的視点の重視
- 個人の生活の視点重視と価値観に応じた暮らしの選択可能性の拡大が重要
- 新しい全国総合開発計画の目指す国土づくりの基本目標と望ましい国土構造の姿
- (1) 価値観の変化や新しい時代の流れを踏まえた国土政策の視点
- 人や企業の活動が国境を超えた形で広がるなかで、我が国を個々人や企業にとってより魅力あるものとすること
- 人口減少・高齢化時代のなかで、国や地域をより生き生きとしたものにするため、性、年齢を問わず国民一人一人を大切な知的資源として捉えること
- 国土に展開する自然は現代世代が将来世代と共有する財であるとの認識に立ち、生物の多様性と健全な自然の物質循環に基礎を置いた人と自然の共存を目指すこと
- 世界の中の日本という視点に立って、地球環境問題の解決や基礎研究、学術・文化等の面で人類史的貢献を目指すとともに、世界における我が国の文化的アイデンティティーを創出していくこと
- (2) 以上のような認識と開発理念の変化を踏まえた国土づくりの基本目標
「生活の豊かさと自然環境の豊かさが両立する世界に開かれた活力ある国土の構築」
- (3) 国土政策が目指すべき望ましい国土構造
- 現在の国土構造は経済面を中心とする欧米へのキャッチアップという20世紀の歴史的発展段階を色濃く反映したもの。これからの人々の価値観やライフスタイルの変化及び時代の大きな転換を踏まえ、21世紀の文明的状況にふさわしい国土づくりを進めていくためには、太平洋ベルト地帯(第一国土軸)の形成から東京一極集中へとつながってきたこれまでの国土構造の流れを明確に転換する必要がある。
- 20世紀型の都市、産業文明の波に洗われることの少なかった第一国土軸から離れた北東地域、西南地域、日本海沿岸地域において、新しい国土軸を形成し、過去の長い歴史・文化の流れと海域を含む多様な自然環境を生かした新しい日本文化と生活様式の創造を目指す。
- 「新しい国土軸」は、「気候、風土等の自然的、地理的条件及び文化的条件等において共通性を有する地域の連なりであって、交通、情報通信インフラのもとで、人、物、情報の密度の高い交流が行われ、人々の価値観に応じた就業と生活を可能にする国土の広い範囲にわたるもの」
- 新しい国土軸の発展とともに、第一国土軸についても過密に伴う諸問題が解決され、より魅力的な居住地域として再生される。
- 国土軸がその特徴を生かしながら相互に補完・連携することにより、日本列島は国土の均衡ある発展が達成され、人々の価値観に応じて、性、年齢を問わずところを得た就業と生活を可能にする多様性に富んだ国土空間として捉られることになる。
- 当計画部会としては、「ほくとう新国土軸」、「太平洋新国土軸」、「日本海国土軸」といった各地から提唱されている構想と歴史的考察も踏まえた上でこれからの国民的議論の素材として、別添図のような4つの国土軸からなる新しい国土構造を提示。
- 「基本目標」と「望ましい国土構造」の実現に向けての主要計画課題
- (1) 対応を迫られる自然災害への懸念と高齢社会への不安に対して、国土の安全と暮らしの安心を確保すること。
- (2) 価値観の多様化に対して、価値観に応じた暮らしの選択可能性を拡大させるよう、地域の自立を促進すること。
- (3) 自然の減少と劣化に対して、人と自然の望ましい関わりの再編成を行うこと。
- (4) 産業の空洞化と地域の雇用喪失の懸念に対して、経済構造の変革と地域経済基盤の強化を行うこと。
- (5) 地球社会の一体化が進行するなかで、アジアとの相互依存関係を深めるとともに世界に対して積極的に貢献をすること。
- 計画課題を達成し、望ましい国土構造を目指していくための戦略的政策課題
−地域の連携・自立による多様性に富んだ分散型国土の形成−
- (1) 「地域連携軸構想」、「交流圏構想」などにより地域連携を促進するとともに広域国際交流圏の整備などにより地域の自立の基礎づくりを行い、分散型国土を形成する。「地域連携軸構想」の中でも、新しい国土軸の一部を構成するもの及び国土軸相互を結びつけ国土軸の機能を高めるものについては、その形成を促進するための政策的支援を行う。
- (2) 多自然居住地域(小都市、農山漁村、中山間地域等)を新たなライフスタイルの実現を可能とするフロンティア等として整備する。
- (3) 東京などの大都市を豊かで安心できる生活空間として修復、更新するとともに、質の高い国際交流機能の整備等により集積の高質化を図る。
- (4) 太平洋ベルト地帯などの産業集積を規制緩和やインフラ整備などにより高質化する。
- 社会資本整備の課題と国土づくりの制度的枠組みの再構築
- (1) 地域の自立促進のために、機会均等の確保という視点で、地域のいかんを問わず一定水準以上のサービスへのアクセス条件を整備
- (2) 投資余力の減少が予想されるなかで、効率的整備、ソフト面の工夫、整備主体、費用負担、整備財源などの再検討
- (3) 長期的な目標に沿って整備が進められている下水道、都市公園、高規格幹線道路網、高速鉄道網等の社会資本は、21世紀初頭以降の投資余力の大幅な減少が見込まれるまでの間に、基礎的な社会資本サービスを享受することが可能となるよう、概成を目指す。
- (4) そのうえで、地球時代に対応した国際交流基盤の整備、高度情報通信社会へ向けてのインフラ整備、リニア鉄道、テクノスーパーライナー、廃棄物の再資源化など国土の新しい可能性を創出する新技術への取り組みなど、新たな要請に重点的対応
- (5) 国土総合開発関連諸制度、国土利用関連諸制度、環境と経済社会活動の統合に向けた新しい枠組みなど新しい国土づくりに向けた制度的枠組みの再構築
*新しい全総計画策定に関する経緯と今後のスケジュール (GIF File, 53.5KB)