大深度地下利用に関する座談会(法制分野)

日時:平成9年8月5日(火)14:00〜
場所:東条会館 青柳の間

1 開会

2 出席者紹介

<出席者>
(有識者)
阿部 泰隆  神戸大学 法学部 教授
石井 芳光  弁護士
大橋 正春  弁護士
小幡 純子  上智大学 法学部 教授
秦  悟志  弁護士
原田 純孝  東京大学 社会科学研究所 教授
村上 愛三  弁護士
(調査会委員)
鎌田  薫  早稲田大学 法学部 教授
藤田 宙靖  東北大学 法学部 教授

3 議事
 調査会中間とりまとめの概要について説明が行われ、これをもとに以下のような意見が出された。

<主な意見>
(1)土地所有権の及ぶ範囲と大深度地下利用制度のあり方について
・大深度地下は私的利用価値のない空間であるので、公物的な空間として捉え、土地所有権は及ばないとし、その利用には許可制をとることが可能ではないか。
・大深度地下は利用の可能性が全くないとは言えない空間であるので、土地所有権が及ばないとし、私的利用を一切排除するのは無理がある。
・大深度地下に土地所有権が及ばないとすると、様々な法制に影響を与えることとなるので、これを全て解決する手間をとるよりは、土地所有権が及ぶとした上で制度を構築する方法の方が賢明である。
・土地所有権の及ぶ範囲について抽象的に議論するよりも、個別に利用を認めるべき施設が何かについて検討することが重要である。
・大深度地下利用制度を作る必要性・目的や、大深度地下空間の法的・社会的な特質について、明確にするべきである。
・法制度を作るに当たっては、協議・交渉等で決まる点を極小化し、行政の裁量を減らすとともに、権利者の過大な参加を否定すべきである。
・公法上の使用権の内容(譲渡性、登記、期間等)について、明らかにする必要がある。
(2)大深度地下利用の円滑化に資する制度と開発抑制・計画的管理を行う制度について
・遠い将来までを見込んで、公共性の高いもののみに大深度地下の利用を認め、不適正な利用や私的な利用は排除・コントロールする制度を作るべきである。
・大深度地下は貴重な空間であり、施設の作り直しも困難であるから、利用の計画や利用の規制が極めて重要である。
・大深度地下の利用が進み、空間が価値を持つことがないようにするためにも、経済的価値のない現段階で、利用規制を行うのが得策である。
・たまたま大深度地下施設ができれば地上の土地所有者は土地利用に制限が加わるのに、そうでない場所では全く自由に大深度地下を利用できるというのは、均衡を失するので、大深度地下は原則として利用できないという制度にするべきではないか。
・大深度地下利用の具体的施設が多くは考えられないので、一律にある地域の大深度地下利用を規制することは極端ではないか。
(3)制度を適用する地域と事業の範囲
・適用地域については、大深度地下は経済的価値を持たず、所有者に不利益もないのだから、全国に適用し、普遍的な制度とするべきである。
・適用事業については、地上で可能なものは排除し、国家的な意義のあるものに限るなど、公共性の高いもののみに大深度地下の利用を認めるべきである。
(4)補償の要否
・井戸、温泉の利益は、極めて微弱であり、抽象的・不確定な利益であるから補償の対象にはならない。
・地上の所有権でも、様々な建築規制が無補償で行われているのだから、この程度の荷重制限については補償は不要である。
・たまたま大深度地下施設がある地表の土地所有者には、土地利用に制限が課され、施設がない場合には何の制限もないのであれば、土地所有者間に不均衡が生ずるので、一律に無補償とするのは納得できない。
・荷重制限については、25階程度の建物に制限されるのであれば、無補償ということにはならない。
・補償の額は、使用権取得時を基準とするべきである。
・補償の時期については、定型的に見て現在利用していない権利の補償であるから、事前の補償は憲法上要求されず、現に利用している既存物件を除き、事後補償でよい。
・補償の時期については、原則としては使用権の取得と同時であるべきであり、大深度地下利用制度ではこの原則をどこまで変えることが許されるかという観点から検討するべきである。
(5)使用権設定の手続のあり方
・大深度地下かどうかの判定の際に、土地所有者などが争えるような手続を置き、そこで一旦大深度地下と認定されれば、事業の必要性などを土地所有者に争わせる必要はない。
・行政庁の認可に当たっては、第3者的な機関の関与を設けることが適当ではないか。
(6)その他
・大深度地下利用制度における環境アセスメントの位置づけをはっきりさせるべきである。
・損害賠償についても、何らかの工夫をし、国民が不利益を被らない制度にするべきである。
・地下空間の計画的な利用が図られるよう、施設配置等の情報を集積するべきである。
4.閉 会

問合せ先:国土庁大都市圏整備局計画課大深度地下利用企画室
     (室長)真鍋、(課長補佐)岩月
     (電話)03-5510-8046 (FAX)03-3501-6534