12国審第23号
平成12年12月14日
 
内 閣 総 理 大 臣
    森 喜 朗 殿
 
国 土 審 議 会 会 長     
石 井 威 望   
 
新産業都市の建設及び工業整備特別地域の
整備の今後の在り方について(答申)
 
 平成11年9月27日付け国地総第225号をもって意見を求められた新産業都市の建設及び工業整備特別地域の整備の今後の在り方についての当審議会における審議の結果を下記の通り報告する。
 
 
 新産業都市の建設促進及び工業整備特別地域の整備促進に係る制度(以下「新産・工特制度」という。)は、各指定地区(以下「新産・工特地区」という。)において、国、関係地方公共団体、地元住民等の関係者が一丸となって積極的な建設整備に努めてきた結果、日本の経済成長の実現、地域間格差の是正に大きく寄与してきたと考えられる。
 しかしながら、重厚長大型産業の誘致を中心として工業拠点都市を育成することにより国土の均衡ある発展及び国民経済の発達に資することを目的とした新産・工特制度は、制度創設以来の長い年月の間に生じた社会経済環境の変化や地方産業振興をめぐる手法の変化の結果、今日においては制度創設時における意義が失われつつある。 このため、現行計画の終期である平成12年度末をもって新産・工特制度を廃止することとし、新産業都市建設促進法、工業整備特別地域整備促進法、新産業都市建設及び工業整備特別地域整備のための国の財政上の特別措置に関する法律を廃止すべきである。ただし、制度を廃止するにあたり、次の事項に特に配慮することが必要である。
 
1.関係地方公共団体は、新産・工特制度に基づく国庫補助負担率のかさ上げ等の各 種支援措置を活用しながら、これまで各種の事業に積極的に取り組んできており、 本制度は関係地方公共団体の財政運営に少なからぬ影響を持っており、直ちに支援 措置がうち切られた場合には、既にこれまで計画に基づいて進められてきている各 種事業の円滑な実施に支障を来すこととなる。
 このため、現行計画の終期である平成12年度末をもって新産・工特制度を廃止するに際しては、制度廃止後も一定期間、それまでに着手された各種事業についての国庫補助負担率のかさ上げ等の財政上の特別措置及び重要港湾建設事業に係る市町村負担の免除規定を中心に激変緩和的な考え方で制度の廃止に伴う影響等諸問題に対する適切な配慮が必要である。
 
 
2.新産・工特制度廃止後の地方産業振興の在り方については、従来のように工場を誘致するだけでなく、地域資源(人材、技術、自然、文化、知的基盤等)を活用しながら地域産業の競争力強化や新事業の創出を推進し、地域経済の自立的発展を図ることが求められている。そのためには、地域の特性に応じて目指す方向を決定し、目標に向けて適切な施策を講じることができる地方公共団体が中心となって、それぞれの地方の特性、資源、産業集積、住民のニーズ等を踏まえた内発的な産業発展に重点を移す方が有効であると考えられる。
 このような状況を踏まえたとき、新産・工特制度廃止後の地方産業振興は、IT、バイオ、医療・福祉、環境といった今後大きく成長する分野の振興あるいは地域の特色や豊富な地域資源を活用して生産された農林水産物の付加価値を高めるといった取り組み等各地方が独自性を発揮しつつ競い合うようにすべきであり、そうした観点から、原則として地方公共団体の判断と責任において行うという方向にあるものと考えられる。なお、各地方公共団体がそれぞれの目標に向けて施策を講じるにあたって、国として地方の自立的な発展を後押しする観点から、必要な環境整備を行うことも重要である。
 また、地方公共団体が実施する産業振興の新たな手法として人材育成、研究開発、産学官連携等のよりソフトな手法が重視されるようになってきていることから、地方公共団体がこのようなソフト面を重視した施策を自主的に展開していこうとする場合においては、国として、新産・工特地区も含めた地方におけるそのような施策の調査・企画立案に対して、調査の実施及び情報の提供といった側面的な支援を行うべきである。
 最後に、以上のような方向性も踏まえ、新産・工特制度廃止後の新たな地方産業振興策の在り方については、国においても省庁再編後の新たな体制下で引き続き検討が行われることを期待するものである。