国土交通省
 運輸審議会答申書(運審第30号)
ラインBack to Top

 主  文
  奈良生駒高速鉄道株式会社の申請に係る奈良県生駒市元町一丁目から同県奈良市北登美ヶ丘一丁目までの間(8.6キロメートル)における第三種鉄道事業の経営及び近畿日本鉄道株式会社の申請に係る同区間における第二種鉄道事業の経営については、免許することが適当である。
 理  由
1.  京都府、大阪府及び奈良県の6市2町にまたがる地域において、関西文化学術研究都市建設促進法に基づく関西文化学術研究都市(以下「学研都市」という。)の建設が進められている。
 学研都市の区域においては、研究所、大学、交流施設等の整備が進むとともに、人口も20万人余りに達し、大規模な住宅開発が各所で進められている。しかしながら、現在、学研都市の区域と大阪方面との通勤・通学等の手段である近鉄奈良線等とのアクセスは道路交通によらざるを得ないが、道路混雑等により、当該アクセスの定時性及び速達性の確保が困難な状況となっており、当該地城に鉄道を整備することが重要な課題となっている。
 このため、地元の関係者間で事業化について協議した結果、平成10年7月奈良県、生駒市及び奈良市並びに近畿日本鉄道株式会社等により奈良生駒高速鉄道株式会社が設立され、奈良生駒高速鉄道株式会社は、奈良県生駒市元町一丁目(生駒)から同市上町を経由して同県奈良市北登美ヶ丘一丁目(登美ヶ丘)までの鉄道施設を整備する第三種鉄道事業を、近畿日本鉄道株式会社は、同区間における奈良生駒高速鉄道株式会社が整備する鉄道施設を使用しての第二種鉄道事業をそれぞれ経営するため、これらの申請に及んだものである。
2.  当審議会に提出された資料その他によって検討した結果は、次のとおりである。
(1)  申請路線は、運輸政策審議会の平成元年5月の答申において整備することが適当とされている路線の一部であり、申請路線の開設により、学研都市の整備及び近鉄奈良線沿線における開発に伴い発生する輸送需要の増加に対応し、学研都市の区域と大阪都心部等とを結ぶ鉄道ネットワークを形成するとともに、近鉄奈良線の著しい混雑の緩和にも寄与するものであるので、申請事業の開始は、輸送需要に対し適切なものであると認められる。
(2)  申請路線に係る輸送需給については、平成17年10月に予定されている開業時において1日当たり66千人程度の輸送需要量が見込まれ、これに対し申請者は6両編成により1日最大151往復の列車運行を行うこととしていることから、供給輸送力が輸送需要量に対し不均衡にならないものであると認められる。
(3)  申請路線の収支については、前記の推定輸送需要量等に基づいて算定すれば、奈良生駒高速鉄道株式会社における第三種鉄道事業については、開業11年目以降継続的に利益を生ずるとともに、開業24年目には累積赤字の解消が図られるものと認められ、また、近畿日本鉄道株式会社における第二種鉄道事業については、開業11年目以降継続的に利益を生ずるとともに、開業28年目には累積赤字の解消が図られるものと認められる。
 また、申請路線の輸送計画及び施設計画が適切であり、安全上十分配慮がなされていること等を考慮すれば、事業基本計画は、経営上及び輸送の安全上適切なものと認められる。
(4)  申請路線の建設に要する費用については、奈良生駒高速鉄道株式会社の建設費は概算839億円と見込まれ、その資金は、出資金、国庫補助金、関係地方公共団体補助金、開発者負担金及び借入金により賄うこととしている。近畿日本鉄道株式会社の建設費は概算296億円と見込まれ、全額借入金により賄うこととしている。必要な資金の調達については、申請者の資力、信用状態等を考慮すれば、いずれも調達可能であり、かつ、申請者の鉄道敷設能力及び運営能力は十分であるので、申請事業を自ら適確に遂行するに足る能力を有するものであると認められる。
(5)  申請事業の開始は、これにより、沿線地域住民の輸送利便の向上を図ることができるとともに、沿線地域の開発、整備等の地域振興に寄与するものであるので、公益上必要なものであり、かつ、適切なものであると認められる。
3.  以上に掲げる理由により、これらの申請は、鉄道事業法第5条第1項各号の免許基準に適合するものであると認める。

ラインライン
All Rights Reserved, Copyright (C) 2001, Ministry of Land, Infrastructure and Transport