運輸審議会答申書（運審第１０号）
運輸審議会答申書（運審第１０号）
主 文
１． スカイマークエアラインズ株式会社の申請に係る大阪〜福岡間（大阪国際空港起点５７８キロメートル）における定期航空運送事業は、免許することが適当である。 ２． スカイマークエアラインズ株式会社の申請に係る上記の定期航空運送事業における旅客運賃の設定は、次のとおり認可することが適当である。
旅客運賃（消費税を含む。）
大人普通運賃最高額 小児普通運賃 ２０，５２１円 設定される大人普通運賃（消費税込み）に０．５を乗じた額を端数処理した額
１． スカイマークエアラインズ株式会社は、大阪〜福岡間において定期航空運送事業を経営することにより、両地域間の利用者利便の向上に寄与したいとして、この申請に及んだものである。
申請者の事業計画によれば、平成１１年４月２４日から大阪（大阪国際空港）〜福岡間に、Ｂ−７６７型機を使用して１日１往復の運航を行おうとするもので、所要時間は往路１時間１０分、復路１時間５分を予定している。
なお、両地域間においては、現在、日本航空株式会社がＤＣ−１０型機等を使用して１日３往復、全日本空輸株式会社がＢ−７４７型機等を使用して１日４往復、株式会社日本エアシステムがＭＤ−９０型機を使用して１日２往復の運航による定期航空運送事業をそれぞれ経営している。２． 当審議会においては、本事案の審議に当たり、申請者の意見を聴取するとともに、当審議会に提出された資料その他によって検討を行ったが、その結果は、次のとおりである。 (1) この申請事業の開始は、平成９年度における輸送実績が８９万人を超え、座席利用率も３社平均６５．３％の高需要路線である大阪〜福岡間における輸送需要に対応し、両地域間における利用者の利便の向上に資するものであり、公衆の利用に適応するものであると認められる。 (2) 輸送需給については、両地域間の航空利用旅客の輸送実績等を勘案して予測すれば、日本航空株式会社等の運航と競合すること等を考慮に入れても、平成１１年度における平均座席利用率は４９．２％程度と見込まれており、平成１２年度以降も堅調な需要の増加が見込まれることから、申請者が申請どおり運航を行うとしても、航空輸送力が著しく供給過剰になることはないものと認められる。 (3) 事業収支は、上記の推定輸送量と使用航空機についての運送原価等に基づいて算定すれば、平成１１年度において、収入１，０００百万円、支出１，６０８百万円、差引き６０８百万円の損失を生ずることとなるが、その後堅調な需要の増加に伴う増収が見込まれること等から、損失額は減少していくものの、当分の間、路線収支においては欠損を生ずる状態が継続していくものと思われる。
しかしながら、申請者は申請路線以外に東京〜福岡間及び同時に申請されている大阪〜札幌間における定期航空運送事業を経営するものであるが、これらの路線に使用する機材は東京国際空港を主たる整備基地としており、その整備を適確に実施するためには、既免許路線である東京〜福岡間を利用して、東京国際空港に回航する必要があると認められる。
従って、他の路線と共通の機材及び要員を活用して運航される申請路線の収支については、当該路線の運航に係る経費の中から機材維持費等の固定的な経費を除外して検討すれば、通年運航となる平成１２年度には申請路線の収入により、燃料費等運航に直接必要な経費を賄うことができると認められる。
また、同時に申請されている大阪〜札幌間を含めた申請者の定期航空運送事業全体について見れば、平成１１年度において収入１２，１９７百万円、支出１３，７８８百万円、差引き１，５９１百万円の損失を生ずることとなるが、その後の堅調な需要の増加に伴う増収が見込まれること等から、平成１３年度以降は概ね収支の均衡が得られるものと見込まれる。
航空保安上の諸点については、使用空港及び申請路線に係る航行援助施設は整備されており、必要な航空機及び乗員等の要員も確保されている。
また、運航及び整備関係業務については、整備業務及び運航管理補助業務を当該業務遂行体制の整っている全日本空輸株式会社に委託することとしており、自社においては委託業務の管理を含む安全管理業務を遂行するため、十分な知識・経験を有する者を各部門の責任者として配置するなど必要な体制が整備されており、乗員等の訓練についても、設備及び体制が整っている全日本空輸株式会社に委託して行うこととしている。
以上により、申請に係る事業計画は経営上及び航空保安上特段の問題はないものと認められる。(4) 申請者は、前述のとおり定期航空運送事業の経営に係るそれぞれの部門に必要な知識・経験を有する者を役職員として配置するとともに、整備業務、運航管理補助業務、旅客取扱業務等を全日本空輸株式会社に委託し、当該受託者と連携して航空運送事業の運営に当たることとしており、事業を経営するために必要な資金の確保等についても措置されていることから、経営面及び安全確保の面において申請事業を適確に遂行するに足る能力を有するものと認められる。また、欠格事由に該当しないものと認められる。 (5) 運賃については、その最高額は、全定期航空運送事業者について調査して得られた適正な原価に基づき算定された標準原価に相当する額とされており、適正な経費に適正な利潤を加えたものの範囲を超えていないものと認められる。
なお、申請者は、申請に当たり運賃の下限を設定せず、当審議会における意見聴取の場において、大人普通運賃の額を１０，０００円とするとともに、事前購入割引等の営業割引は行わないことを表明している。これを前提とすれば、申請者の適用運賃は、既存各社の事前購入割引等を適用した場合の運賃と大差がないこと、ジェット機の発着便数が制限されている大阪国際空港における申請者の供給輸送力のシェアは低く、かつ、増便して供給輸送力を大幅に増加させることも困難であること等から、不当な競争をひき起こすこととなるおそれがないものであると認められる。３． 以上に掲げる理由により、この申請は航空法第１０１条第１項各号及び第１０５条第２項各号に掲げる基準に適合するものと認める。
