III.今後の航空機検査制度のあり方

1.耐空証明制度

 耐空証明検査において、現行制度に加え、民間能力及び外国の証明を活用する次のような枠組みを設けるべきである。

(a) 国産航空機の新規検査における航空機製造者の能力の活用
 型式証明を受けた型式の航空機について、十分な製造及び検査の能力を有する製造者が当該型式の航空機を製造及び検査し、耐空証明の基準に適合することを確認したときは、国の直接検査を省略できることとする。

(b) 輸入航空機の新規検査における外国の証明の一層の活用
 輸入航空機についても、その型式につき我が国の型式証明を受けたものであっ て、我が国と同等又はそれ以上の検査を行う外国が耐空性を証明したものについては、我が国の直接検査を省略できることとする。

(c) 更新検査における整備事業者の能力の活用
 更新検査を受ける航空機について、十分な整備及び検査の能力を有する整備事業者が整備及び検査し、耐空証明の基準に適合することを確認したときは、国の直接検査を省略できることとする。

 なお、耐空証明の有効期間については、1年毎に行われている更新検査における基準不適合の事例の発生率は必ずしも低いとは言えず、また、諸外国においても1年毎に耐空性の維持についての検査等が義務付けられているのが実態であることから、現行の有効期間を維持することが適当と考えられる。

2.型式証明制度

 近年、航空機の使用者等型式証明を受けた者以外の者が、複数の同一型式航空機に同一の設計変更を行う事例が増えているため、その設計変更については、個々の航空機毎ではなく型式毎に証明することが合理的と考えられる。このため、型式証明を受けた者以外の者もその型式に係る設計変更について国の承認を受けることができることとし、その承認を受けた型式の航空機は耐空証明検査等において型式証明を受けた型式の航空機と同様に取扱う、いわゆる追加型式設計承認(STC:Supplemental Type Certificate)制度を導入すべきである。

 なお、我が国にこの制度を導入することにより、我が国の型式証明を受けた型式の航空機であって、我が国の承認を取得した追加型式設計を組み込んだ輸入航空機についても外国の証明を活用した耐空証明検査省略という新たな制度を十分に機能させることが可能となる。

3.予備品証明制度

 予備品証明制度においても、民間能力及び外国の証明等を活用していくこととし、現行の修理改造認定事業場が確認した装備品に加え、次のいずれかに該当する装備品についても、予備品証明を受けたものとみなすこととすべきである。

(a) 十分な製造及び検査の能力を有する装備品の製造者が製造及び検査し、安全性 の基準に適合することを確認した装備品
(b) 型式証明を受けた型式の航空機について十分な製造及び検査の能力を有する製 造者が検査し、安全性の基準に適合することを確認した当該型式の航空機の装備品
(c) 我が国と同等又はそれ以上の検査を行う外国が安全性の基準に適合することを 証明した装備品
(d) 我が国と同等又はそれ以上の装備品の修理改造認定に係る制度を有する外国により当該認定を受けた者が安全性の基準に適合することを確認した装備品

また、現行制度においては、予備品証明に有効期間及び当該装備品を装備可能な航空機の型式についての限定を付すこととされているが、近年、電子化等に伴い装備品の品質が向上してきており、また、航空機の仕様の多様化に伴い、同一型式の航空機であっても装備可能な装備品が1機毎に異なる場合が生じていることから、国が一律に有効期間及び型式限定を付すことは国際的な動向からみても必ずしも合理的とは言い難い状況になってきている。
 一方、予備品を航空機に取り付ける際には、航空法の規定に基づき、有資格整備士が装備品の保管状況の確認や当該航空機の部品表に基づく装備可能か否かの判断を含め、安全性の基準への適合性について確認を行っており、有効期間及び型式限定を付さなくとも安全確保に支障を生ずることはないものと考えられる。
 このような状況を勘案すると、予備品証明に有効期間及び型式限定を付すことについては見直すべきである。

4.環境規制に関する制度

 プロペラ飛行機及びヘリコプターに対する騒音規制並びに発動機の排出物規制については、ICAO標準どおりに我が国制度に導入する必要がある。 その際、環境規制に関する型式証明制度を導入するとともに、環境基準への適合性の確認についても、民間能力や外国の証明の活用を図るべきである。

5.その他規制の簡素・合理化

 規制の目的、検査の手法が類似し、検査内容も密接に関係する証明等の制度につい ては、使用者等の負担軽減にも資するよう、騒音基準適合証明制度の耐空証明制度への一元化、航空機の整備改造認定事業場制度と装備品の修理改造認定事業場制度の統合等により、規制の簡素・合理化を図ることとすべきである。


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