IV.制度見直しに当たって留意すべき事項


1.安全確保に関する措置

(1)民間事業者の能力を活用するに当たっての安全確保措置
 民間事業者の能力を活用するに当たっては、製造、整備、検査を通じて、国に代わって基準への適合性の確認を的確に行い得る能力を有する製造者又は整備事業者を国が認定することとし、当該認定において事業者が自ら製造又は整備を行った航空機等について確認を行うこととすべきである。
 また、国においても、民間事業者による確認が適正に行われることを確保するため、確認の方法、手順等の明確化を図るとともに、定期及び臨時の立入検査等により、制度の適正な実施を指導・監督すべきである。

(2)外国の証明を活用するに当たっての安全確保措置
 輸入航空機について外国の証明を一層活用するに当たっては、我が国と同等又はそれ以上の検査を実施する外国に限ってその証明を活用することとし、輸出国との間で航空機の耐空性に関する相互承認協定を締結することを原則とすべきである。  また、国は輸入後の航空機の故障情報の収集等に努め、必要な情報を輸出国や航空機製造者に伝達するなど、輸入航空機の安全確保に万全を期すために必要な措置を講じる必要がある。

(3)国の業務の充実強化
 航空機の安全性の一層の向上を図るため、国においては、輸入航空機に対して型式証明を行うこと等による設計検査の充実、我が国航空機に発生した重要故障に関する情報や外国政府、外国メーカー等から得られる安全確保に関する情報の収集、分析及び提供、技術進歩等に対応した安全基準の策定、安全性の向上に資する技術に関する調査等を総合的な視点から充実させていくほか、新たな制度の下で国の検査に代わり基準適合性の確認を行う民間事業者の指導・監督等に万全を期すなど、国として安全性向上に不可欠な業務を着実に推進していく必要がある。
 また、新たな制度を有効に機能させるためには、相互承認の推進を図っていく必要があることから、諸外国との間において航空機の耐空性に係る相互承認協定の締結を促進していくべきである。
 さらに、今般の制度見直しに伴い国の業務内容が変化していくこととなるため、職員の研修の充実等により国としての業務遂行能力の向上を図る必要がある。

(4)航空機使用者の安全意識の向上
 航空機の整備方式を記載した書類は、航空機の安全に第一義的に責任を有する航空機の使用者がその整備を行うに当たって基本的指針とするものであることから、当該書類に定時点検の内容や実施方法を記載することを法令上明確化すること等により定時点検の重要性に関する意識を喚起するなど、その安全意識の向上を図ることが適当である。

2.その他制度運用に当たって留意すべき事項

(1)耐空証明の有効期間起算日の合理的運用
 耐空証明の有効期間は、検査に合格した日を起算日としているため、有効期間の満了前に更新検査に合格した場合は、有効期間が実質的に1年未満に短縮されているのが現状である。このため、検査合格日から1年とする現行の方式を改め、例えば、有効期間満了日の1ケ月前以内に更新検査に合格した場合は、従前の耐空証明の有効期間満了日の翌日から起算するなど、より合理的な運用を行うべきである。

(2)輸入航空機の型式証明を円滑に行うために必要な事項
 新たな制度においては、輸入航空機についても我が国の型式証明を受けることにより、耐空証明取得のための国の直接検査が省略されることとなることから、今後は輸入航空機の製造者が積極的に我が国の型式証明を申請するようになると想定される。
 このため、国としては、航空機の設計検査業務の充実にも資する輸入航空機の型式証明の取得が促進されるよう、検査内容の明確化とこれに見合った手数料の設定等を行う必要がある。

(3)輸出用の装備品等の証明に当たっての民間事業者の活用
 従来から、輸出用装備品等については、相手国政府からの要請も踏まえ、国が安全証明書等を発行しているが、民間事業者による安全証明書等の発行についても考慮すべきである。

(4)新たな環境規制を円滑に導入するために必要な事項

 新たな環境規制の導入に当たり、騒音基準又は発動機排出物基準に適合しない既存の航空機について適切な経過措置を設けるなど、使用者に過剰な負担がかからないよう所要の措置を考慮すべきである。

(5)現行の認定事業場制度における認定の範囲及び認定基準
 現行の認定事業場制度においては、重要装備品以外の装備品や内部部品の修理改造及び特殊作業工程の業務は認定対象としていない。
 一方、諸外国においては、これらの業務をも認定の対象とした制度を前提として認定事業場の相互承認が進められている状況にある。
 このため、今後、諸外国との間で認定事業場の相互承認を進めるとともに、安全性の一層の向上を図る観点から、我が国における業務分業化の動向等を踏まえつ つ、これらの業務の能力について認定を行う新たな仕組みを検討する必要がある。
 更に、認定基準自体についても、相互承認を推進するための整合化の動きが国際的に進展しており、我が国としても相互承認を推進する環境を整備するとともに、時代の変化に対応し、安全確保のために十分かつ合理的なものとするため、品質管理要件の充実、整備改造の実績要件の削除等その見直しを行う必要がある。


戻る