「貨物運送取扱事業法附則第52条に規定する措置について」及び
「地域内物流の効率化のための方策について」(諮問第15号)


1.はじめに

 貨物運送取扱事業法(以下、「取扱事業法」という。)は、従来、鉄道、航空等各輸送機関ごとの事業法令に基づき、それぞれの運送を補完する事業として位置付けられてきた貨物運送取扱事業(以下「取扱事業」という。)を、各輸送機関にまたがり、独立した機能を果たす事業として位置付けるとともに、事業規制の簡素・合理化を図ることを目的として、平成2年12月1日施行された。
 取扱事業法は、従来異なる商慣習と法制度を持っていた事業を一元的制度としてまとめた法律であるので、法施行後3年を経過した時点で法律の施行状況に検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずる必要があるとし、国会審議の過程で附則第52条が追加されるとともに、施行にあたり政府がとくに留意して措置すべき事項について附帯決議がなされた。

2.取扱事業法の施行状況

  1. 取扱事業法の施行状況を概観すると、木目細かい経過措置の手当もあって、殆ど混乱もなく、この3年間に円滑に定着を見たといってよい。

  2. 取扱事業法施行後の新規参入状況をみると、法施行時期が深刻な景気後退期と重なったこともあり、事業者数は必ずしも大幅に増加しているとはいえないが、従来の趨勢と比べると着実に新規参入がなされている。また、外国フォワーダーとの相互参入も概ね適正に行われている。

  3. 運賃・料金の届出状況をみると、新規参入、路線追加等に係る運賃・料金について、概ね時宜を失することなく弾力的に設定・変更が行われている。

  4. 社会ニーズの変化、法制度の変更に対応した新サービスとして、平成3年12月より、「航空宅配便」サービスが開始された。

  5. 附帯決議に対し講じた措置の主なもの及びその遵守状況は以下のとおりである。

    1.  取扱事業者が実運送事業者や関連する貨物流通関係事業者(以下「実運送事業者等」という。)を運賃・料金等の面で不当に圧迫することのないように、施行規則に訓示規定を設けるとともに運賃・料金の遵守について地方運輸局等へ通達を行い、また監査等を通じてその指導を行っている。

    2.  参入に当たっての審査基準の統一性、透明性の確保を図るため、審査基準について地方運輸局等へ通達した。

    3.  港湾運送事業と取扱事業との関係については、両事業間に混乱がないよう地方運輸局等へ通達するとともに、周知徹底を図った。

    4.  取扱事業者の監査等について地方運輸局等へ通達するとともに、本省・地方運輸局において着実に行っている。
       関係団体の意見、監査結果等によれば、取扱事業と実運送事業等の関係は取扱事業法によって大きく変化したということはなく、附帯決議の趣旨は遵守されており、新法施行後の事業運営は概ね適正に行われていると評価してよい。
       ただ、港湾運送事業との関係において、取扱事業の業務の範囲の逸脱を懸念する声があり、附帯決議の更なる徹底が必要と思われる。

  6. 経過措置により、取扱事業法施行前からの事業者は、概ね大きな混乱もなく事業を継続しているが、一部事業者について所要の手続きが残っているものがある。

3.取扱事業法に関する必要な措置に関する基本的考え方

  1. 基本的視点

    1. 取扱事業法の施行当初懸念された点については、深刻な問題は生じておらず、利用者利便の向上等の法目的も達成されつつあるといえるため、法の基本的枠組みはこれを維持することが適当である。

    2. 取扱事業者と実運送事業者等との関係については、将来に向けてより良い関係の構築に向けた努力が引き続き必要である。

    3. 取扱事業者は、各種の輸送手段を組み合わせたサービスを提供することが容易になったにもかかわらず、多様な荷主のニーズに応えられるような新たな商品開発等はあまり進んでいない。多様な輸送手段を選択できるというメリットをもっと活用できるようにすべきである。

  2. 具体的提言

    1. 取扱事業者と実運送事業者等のより良い関係の構築
       取扱事業者と実運送事業者等の良好な関係を維持することは、安定的で高度な物流の実現のために必要不可欠であり、意思疎通を図る場を設けるなど関係者の努力が望まれる。

    2. 経過措置の完了

      • 「確認事業者」については、添付書類の省略等申請の手続の簡素化を図ることが適当である。

      • 取扱事業法施行により新たに規制がかかった事業者で、許可基準を満たしていないためいまだ処分を保留している者については、要件を満たすべく所要の指導を行うとともに、一定期間内に法令等の基準に照らして適切な措置をとるべきである。

    3. 政府及び事業者への提言

      • 小口定形貨物に関し、運賃と所要時間を主要素とするわかりやすいサービス、すなわち取扱事業者が複数の輸送機関からより適切なものを選択できるような商品の開発が期待される。

      • 一般混載事業においても、航空宅配便事業と同様に、利用者に分かり易いドア・ツー・ドア運賃の設定を進めていくことが適当である。また鉄道利用運送事業等においても、ドア・ツー・ドア運賃の設定に向けての努力が望まれる。

      • 路線追加等に伴う新たなサービスの開始に当たっては、意欲のある事業者が幅広いネットワークを形成することが容易になるよう、手続の簡素化が望まれる。

      • 申請者の利便や行政事務の効率化の観点から、窓口の整理等の検討が必要である。

  3. その他の関連事項

    1. 複合一貫輸送の進展を図る観点から、実運送に係る運賃・料金の規制等のあり方に関する検討が引き続き行われることを期待したい。

    2. 国際複合一貫輸送に係る運賃・料金については今後更に検討をしていく必要がある。

  4. 取扱事業法に関する許認可等の整理について 取扱事業法は、3年前に制定された際、従前の法制と比較すれば大幅な簡素・合理化が図られたところであるが、行革審答申等に示されているように、事業者の自発的な創意工夫を活かすとともに、国民負担の軽減・行政の簡素合理化の観点から、政府において所要の検討の上、更なる許認可の整理等が図られることを期待する。

  5. 問い合わせ先 運輸政策局 政策課


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