高齢者、身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の円滑化の促進に関する法律要綱

第一 目的(第一条関係)
 この法律は、高齢者、身体障害者等の自立した日常生活及び社会生活を確保することの重 要性が増大していることにかんがみ、公共交通機関の旅客施設及び車両等の構造及び設備を改善するための措置、旅客施設を中心とした一定の地区における道 路、駅前広場、通路その他の施設の整備を推進するための措置その他の措置を講ずることにより、高齢者、身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の利便性 及び安全性の向上の促進を図り、もって公共の福祉の増進に資することを目的とすること。

第二 定義(第二条関係)
一   この法律において「高齢者、身体障害者等」とは、高齢者で日常生活又は社会生活に身体の機能上の制限を受けるもの、身体障害者その他日常生活又は社会生活に身体の機能上の制限を受ける者をいうものとすること。
二   この法律において「移動円滑化」とは、公共交通機関を利用する高齢者、身体障害者等の移動に係る身体の負担を軽減することにより、その移動の利便性及び安全性を向上することをいうものとすること。
三   この法律において「公共交通事業者等」とは、鉄道事業者、軌道経営者、乗合バス事業者、バスターミナル事業者、海上旅客運送事業者、航空運送事業者及びそれ以外の者で鉄道施設、旅客船ターミナル又は航空旅客ターミナルを設置し、又は管理するものをいうものとすること。
四   この法律において「旅客施設」とは、鉄道駅、軌道停留場、自動車ターミナル法によるバスターミナル、旅客船ターミナル及び航空旅客ターミナルをいうものとすること。
五   この法律において「特定旅客施設」とは、旅客施設のうち、利用者が相当数であることその他の政令で定める要件に該当するものをいうものとすること。
六   この法律において「車両等」とは、公共交通事業者等が旅客の運送を行うためその事業の用に供する鉄道車両、軌道車両、自動車、船舶及び航空機をいうものとすること。
七   この法律において「重点整備地区」とは、特定旅客施設を中心として設定される次に掲げる要件に該当する地区をいうものとすること。
 1   特定旅客施設との間の移動が通常徒歩で行われ、かつ、高齢者、身体障害者等が日常生活又は社会生活において利用すると認められる官公庁施設、福祉施設その他の施設の所在地を含む地区であること。
 2   特定旅客施設、当該特定旅客施設と前号の施設との間の経路 (以下「特定経路」という。)を構成する道路、駅前広場、通路その他の施設(以下「一般交通用施設」という。)及び当該特定旅客施設又は一般交通用施設と 一体として利用される駐車場、公園その他の公共の用に供する施設(以下「公共用施設」という。)について移動円滑化のための事業が実施されることが特に必 要であると認められる地区であること。
 3   当該地区において移動円滑化のための事業を重点的かつ一体的に実施することが、総合的な都市機能の増進を図る上で有効かつ適切であると認められる地区であること。
八   この法律において「特定事業」とは、公共交通特定事業、道路特定事業及び交通安全特定事業をいうものとすること。
九   この法律において「公共交通特定事業」とは、次に掲げる事業をいうものとすること。
 1   特定旅客施設内においてエレベーター、エスカレーターその他の移動円滑化のために必要な設備を整備する事業
 2   前号の事業に伴い特定旅客施設の構造を変更する事業
 3   公共交通事業者等が特定旅客施設を利用する旅客の運送を行うために使用する自動車(以下「特定車両」という。)を床面の低いものとすることその他の特定車両に関する移動円滑化のために必要な事業
十   この法律において「道路特定事業」とは、次に掲げる道路法による道路の新設又は改築に関する事業(これと併せて実施する必要がある移動円滑化のための施設又は設備の整備に関する事業を含む。)をいうものとすること。
 1   歩道、道路用エレベーター、通行経路の案内標識その他の移動円滑化のために必要な施設又は工作物の設置に関する事業
 2   歩道の拡幅又は路面の構造の改善その他の移動円滑化のために必要な道路の構造の改良に関する事業
十一   この法律において「交通安全特定事業」とは、次に掲げる事業をいうものとすること。
 1   高齢者、身体障害者等による道路の横断の安全を確保するた めの機能を付加した信号機、道路交通法第九条の歩行者用道路であることを表示する道路標識、横断歩道であることを表示する道路標示その他の移動円滑化のた めに必要な信号機、道路標識又は道路標示(以下「信号機等」という。)の同法第四条第一項の規定による設置に関する事業
 2   違法駐車行為に係る自転車その他の車両の取締りの強化、違法駐車行為の防止についての広報活動及び啓発活動その他の移動円滑化のために必要な特定経路を構成する道路における違法駐車行為の防止のための事業

第三 基本方針(第三条関係)
 主務大臣は、移動円滑化を総合的かつ計画的に推進するため、移動円滑化の促進に関する基本方針を定めるものとし、当該基本方針には、次に掲げる事項について定めるものとすること。
1   移動円滑化の意義及び目標に関する事項
2   移動円滑化のために公共交通事業者等が講ずべき措置に関する基本的な事項
3   第五の基本構想の指針となるべき次に掲げる事項
 イ   重点整備地区における移動円滑化の意義に関する事項
 ロ   重点整備地区の位置及び区域に関する基本的な事項
 ハ   特定旅客施設、特定車両、特定経路を構成する一般交通用施設及び当該特定旅客施設又は一般交通用施設と一体として利用される公共用施設について移動円滑化のために実施すべき特定事業その他の事業に関する基本的な事項
 ニ   ハに規定する事業と併せて実施する土地区画整理事業、市街地再開発事業その他の市街地開発事業に関し移動円滑化のために考慮すべき基本的な事項その他必要な事項
4   移動円滑化の促進のための施策に関する基本的な事項その他移動円滑化の促進に関する事項

第四 移動円滑化のために公共交通事業者等が講ずべき措置
(第四条及び第五条関係)
一   公共交通事業者等は、 旅客施設の新設若しくは大改良又は車両等の導入を行うときは、これらを移動円滑化のために必要な一定の基準(以下「移動円滑化基準」という。)に適合させ るとともに、その後、これらを当該移動円滑化基準に適合するように維持しなければならないものとすること。
二   公共交通事業者等は、既にその事業の用に供している旅客施設及び車両等を移動円滑化基準に適合させるために必要な措置を講ずるよう努めなければならないものとすること。
三   公共交通事業者等は、高齢者、身体障害者等に対し、これらの者が公共交通機関を利用して移動するために必要となる情報を適切に提供するとともに、その職員に対し、移動円滑化を図るために必要な教育訓練を行うよう努めなければならないものとすること。
四   旅客施設及び車両等の移動円滑化基準への適合性を担保するために必要な手続を定めるものとすること。

第五 移動円滑化基本構想(第六条関係)
一   市町村は、基本方針に基づき、当該市町村の区域内の重点整備地区について、移動円滑化に係る事業の重点的かつ一体的な推進に関する基本構想を作成することができることとし、基本構想には、次に掲げる事項について定めるものとすること。
 1   重点整備地区における移動円滑化に関する基本的な方針
 2   重点整備地区の位置及び区域
 3   特定旅客施設、特定車両、特定経路を構成する一般交通用施設及び当該特定旅客施設又は一般交通用施設と一体として利用される公共用施設について移動円滑化のために実施すべき特定事業その他の事業に関する事項
 4   3に規定する事業と併せて実施する土地区画整理事業、市街地再開発事業その他の市街地開発事業に関し移動円滑化のため考慮すべき事項その他必要な事項
二   市町村は、基本構想を作成しようとするときは、これに定めようとする特定事業に関する事項について、関係する公共交通事業者等、道路管理者及び都道府県公安委員会(以下「公安委員会」という。)と協議しなければならないものとすること。
三   市町村は、基本構想の作成に当たり、あらかじめ、関係する公 共交通事業者等、道路管理者及び公安委員会に対し、特定事業に関する事項につき基本構想の案を作成し、当該市町村に提出するよう求めることができるととも に、当該案の提出を受けた市町村は、基本構想に当該案の内容が十分に反映されるよう努めるものとすること。
四   三に規定するもののほか、関係する公共交通事業者等、道路管理者その他の一般交通用施設及び公共用施設の管理者並びに公安委員会は、市町村による基本構想の作成に協力するよう努めなければならないものとすること。

第六 公共交通特定事業(第七条から第九条まで関係)
一   基本構想が作成されたときは、関係する公共交通事業者等は、当該基本構想に即して公共交通特定事業を実施するための計画(以下「公共交通特定事業計画」という。)を作成し、これに基づき、当該公共交通特定事業を実施するものとすること。
二   公共交通特定事業計画には、次に掲げる事項について定めるものとすること。
 1   公共交通特定事業の対象となる特定旅客施設又は特定車両
 2   公共交通特定事業の内容
 3   公共交通特定事業の実施予定期間並びにその実施に必要な資金の額及びその調達方法
三   公共交通事業者等は、公共交通特定事業計画を作成しようとするときは、あらかじめ、関係する市町村及び道路管理者の意見を聴かなければならないものとすること。
四   主務大臣は、公共交通事業者等の申請に基づき、公共交通特定事業計画が重点整備地区における移動円滑化を適切かつ確実に推進するために適当なものである旨の認定をするものとすること。
五   一による公共交通特定事業の実施を担保するために必要な手続を定めるものとすること。

第七 道路特定事業(第十条関係)
一   基本構想が作成されたときは、関係する道路管理者は、当該基本構想に即して道路特定事業を実施するための計画(以下「道路特定事業計画」という。)を作成し、これに基づき、当該道路特定事業を実施するものとすること。
二   一による道路特定事業は、当該道路が、重点整備地区における移動円滑化のために必要な道路の構造に関する一定の基準に適合するよう実施されなければならないものとすること。
三   道路特定事業計画においては、基本構想に定められた道路特定事業について定めるほか、当該重点整備地区内の道路において実施するその他の道路特定事業について定めることができるものとすること。
四   道路特定事業計画においては、三の道路特定事業について次に掲げる事項を定めるものとすること。
 1   道路特定事業を実施する道路の区間
 2   1の道路の区間ごとに実施すべき道路特定事業の内容及び実施予定期間
 3   その他道路特定事業の実施に際し配慮すべき重要事項
五   道路管理者は、道路特定事業計画を作成しようとするときは、あらかじめ、関係する市町村、公共交通事業者等及び公安委員会の意見を聴かなければならないものとすること。

第八 交通安全特定事業(第十一条関係)
一   基本構想が作成されたときは、関係する公安委員会は、当該基本構想に即して交通安全特定事業を実施するための計画(以下「交通安全特定事業計画」という。)を作成し、これに基づき、当該交通安全特定事業を実施するものとすること。
二   一による交通安全特定事業(第二の十一の1に掲げる事業に限る。)は、当該信号機等が、重点整備地区における移動円滑化のために必要な信号機等に関する一定の基準に適合するよう実施されなければならないものとすること。
三   交通安全特定事業計画においては、実施しようとする交通安全特定事業について次に掲げる事項を定めるものとすること。
 1   交通安全特定事業を実施する道路の区間
 2   1の道路の区間ごとに実施すべき交通安全特定事業の内容及び実施予定期間
 3   その他交通安全特定事業の実施に際し配慮すべき重要事項
四   公安委員会は、交通安全特定事業計画を作成しようとするときは、あらかじめ、関係する市町村及び道路管理者の意見を聴かなければならないものとすること。

第九 一般交通用施設又は公共用施設の整備等(第十二条関係)
 国及び地方公共団体は、基本構想において定められ た一般交通用施設又は公共用施設の整備、土地区画整理事業、市街地再開発事業その他の市街地開発事業の施行その他の必要な措置を講ずるよう努めなければな らないものとし、その他の当該施設の管理者は、基本構想の達成に資するため、その管理する施設について移動円滑化のための事業の実施に努めなければならな いものとすること。

第十 土地区画整理事業の換地計画において定める保留地の特例(第十三条関係)
 基本構想に定められた土地区画整 理事業であって都道府県、市町村等が施行するものの換地計画においては、施行地区内の宅地について所有権その他の使用収益権を有するすべての者の同意を得 た上で、特定旅客施設、一般交通用施設又は公共用施設(公共施設を除く。)の用に供するため、一定の土地を換地として定めないで、その土地を保留地として 定めることができるものとし、その処分金は、これらの者に交付するものとすること。

第十一 地方債の特例等(第十四条関係)
一   地方公共団体が、第六の四により認定を受けた公共交通特定事業計画に基づく公共交通特定事業に関する助成を行う場合に地方債を起こすことができるものとすること。
二   地方公共団体が基本構想の達成のために起こす地方債については、特別の配慮をするものとすること。

第十二 指定法人(第十五条から第十九条まで関係)
一   主務大臣は、公益法人を、その申請により、二に規定する事業を行う者として指定することができるものとすること。
二   指定法人は、公共交通事業者等による移動円滑化のための事業の実施に関する情報の収集、整理及び提供、当該事業の実施に関する必要な助言、指導、資金の支給その他の援助、当該事業に関する調査及び研究その他当該事業を促進するために必要な業務を行うものとすること。
三   公共交通事業者等は、指定法人の求めがあった場合には、移動円滑化のための事業の実施状況を当該指定法人に通知しなければならないものとすること。

第十三 国、地方公共団体及び国民の責務(第二十条関係)
一   国は、移動円滑化を促 進するために、必要な資金の確保その他の措置、移動円滑化に関する研究開発等の推進、移動円滑化の促進に関する国民の理解を深めるための広報活動等を行う よう努めなければならないものとし、地方公共団体は、国の施策に準じて、移動円滑化を促進するために必要な措置を講ずるよう努めなければならないものとす ること。
二   国民は、高齢者、身体障害者等の公共交通機関を利用した円滑な移動を確保するために協力するよう努めなければならないものとすること。

第十四 運輸施設整備事業団の業務の特例(第二十一条関係)
 運輸施設整備事業団は、この法律の目的を達成するた め、移動円滑化のための一定の事業を実施する公共交通事業者等に対し、当該事業に要する費用に充てる資金の一部について、予算で定める国の補助金の交付を 受け、これを財源として、補助金を交付する業務等を行うことができるものとすること。

第十五 その他(第二十二条から第二十八条まで関係)
 報告及び立入検査、主務大臣等、経過措置及び罰則について、所要の規定を設けるものとすること。

第十六 附則
一   この法律は、公布の日 から起算して六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行するものとすること。ただし、第四の一等に関する規定のうち車両等(自動車を除く。)に 係る部分は、公布の日から起算して二年を超えない範囲内において政令で定める日から施行するものとすること。(附則第一条関係)
二   その他所要の事項を定めるものとすること。(附則第二条から第八条まで関係)



トップページへ 戻る