バリアフリー

第5回国土交通省バリアフリー化推進功労者大臣表彰について

第5回国土交通省バリアフリー化推進功労者大臣表彰受賞者

第5回の受賞者は、19の候補案件の中から選考委員会(※)の審査を経て、次の4件を表彰いたしました。

 特定非営利活動法人 まち研究工房
 佐賀県
 特定非営利活動法人 旅とぴあ北海道
 倉敷市・倉敷美観地区バリアフリー推進会議

(※)平成23年度表彰においては、選考委員会の委員は、次のとおりでした。
    秋山 哲男 北星学園大学 客員教授
    高橋 儀平 東洋大学 教授
    三星 昭宏 近畿大学 教授

第5回国土交通省バリアフリー化推進功労者大臣表彰式のパンフレットはこちら


以下、各受賞者の講評と概要になります。

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特定非営利活動法人 まち研究工房 休憩スポットのネットワーク化によるまちのバリアフリー化

【講評】
 受賞者は、埼玉県戸田市のJR埼京線戸田駅周辺の市街地に点在する未利用地などにおいて、ベンチからなる休憩スポット「おやすみ処」を約50箇所設置することにより、高齢者や障害者などの移動困難者の休憩や多世代の交流が行えるスペースとしてネットワーク化するなど、全国的にもユニークな活動を行い、住民主体でまちのバリフリー化に取組んだ点を高く評価し、表彰することとした。

【受賞者の取組み】
●取組みの概要
 埼玉県戸田市は、東京都に隣接した首都圏近郊の市街地であり、JR埼京線戸田駅周辺には、市役所・福祉センター・病院などが多くある。NPO法人「まち研究工房」は、街中において、足腰の弱った高齢者、乳児を抱いた
人や幼児を連れた人などが辛そうに歩いていたり、地ベタに座り込んでいる様子を見かけたことを契機に、生活道路上や沿道に休憩スポットを数多く創出しネットワーク化するなどの、以下の取組みを進めた。

●まちなかにおける休憩スポット「おやすみ処」のネットワーク化
 「まち研究工房」が中心となり、まちなかの沿道に散在する、JR高架下、医療施設、店舗、公道等のデッドスペース(未利用地等)を、主に移動困難者のための休憩スポット「おやすみ処」として、市内約50箇所にベンチを設置し、植栽を整備・維持管理などを進めてきている。これらの休憩スポットは、移動困難者の歩行距離を勘案し、沿道50~100m間隔で設置するなどのネットワーク化を目指している。
 民間主体で進めているため、さまざまな民間事業者・ボランティアからの協力や県からの助成を受けながら柔軟に運営してきている。
 整備の効果としては、退院後の歩行リハビリとして役に立っているという声があったり、高齢者や障害者などの移動困難者の休憩ポイントとなるとともに、さまざまな世代の交流が行えるスペースとしても役立っている。

【今後期待される取組み】
 今後も、ベンチのネットワーク化を進め、市や関係事業者と連携した面的かつ一体的なバリアフリー化に取組むとともに、同様の取組みが全国に広がることが期待される。

【連絡先】
 〒335-0021 埼玉県戸田市新曽1442
 TEL 048-445-9038

【Web-URL】
 http://www.machi-ken-kou.net/


  • 「おやすみ処」ネットワーク・マップ

    「おやすみ処」ネットワーク・マップ

  • JR高架下の休憩スポット(とだ1番地)

    JR高架下の休憩スポット(とだ1番地)

  • JR高架下の休憩スポット(とだ3番地)

    JR高架下の休憩スポット(とだ3番地)

  • 公道上におけるベンチの設置(バス停前)

    公道上におけるベンチの設置(バス停前)

  • 店舗前のベンチでくつろぐ歩行者

    店舗前のベンチでくつろぐ歩行者

佐賀県 パーキングパーミット制度導入などによる先導的なまちづくり

【講評】
 受賞者は、公共施設やショッピングセンターなどの身障者用駐車場において、障害のない人による不適正利用を防ぐために、利用証交付などからなる「パーキングパーミット制度」を全国に先駆けて実施するとともに、高齢者や障害者などが外出しやすい環境づくりを進めるために、店舗、事業所などの協力により、誰でも利用できるように開放され、バリアフリー化されたトイレを整備していく「みんなのトイレ協力制度」を実施するなど、地域の課題に対応した先導的なまちづくりに取組んだ点を高く評価し、表彰することとした。

【受賞者の取組み】
●取組みの概要
 佐賀県は、すべての人にやさしいユニバーサルデザインのまちづくりを進めてきており、その一環として、身障者用駐車場において、障害のない人による不適正利用を防ぐために、「パーキングパーミット制度」を実施するとともに、高齢者や障害者等が外出しやすい環境づくりを進めるために、「みんなのトイレ協力制度」を実施するなどの取組みを積極的に進めた。

●パーキングパーミット制度の実施
 公共施設やショッピングセンターなどの身障者用駐車場に障害のない人が駐車しているために、障害のある人が駐車できない問題が発生している。そのことから、佐賀県は、本当に身障者用駐車場を必要とする、「歩行困難な」身体に障害のある方、高齢者や妊産婦などに利用証(パーキングパーミット)を交付し、駐車時に掲示するとともに、施設の協力により車いす使用者などのための幅広い駐車スペースを確保する「パーキングパーミット制度」を平成18年7月から実施している。その後、近隣する長崎県、熊本県、鹿児島県や山口県との利用証の相互利用が進み、全国21府県3市で制度が導入(平成23年11月時点)され、拡がっているところである。
 また、制度実施後、利用者の増加に伴い、車いす使用者から「利用者が増えて、身障者用駐車場に駐車できないことも多くなった」との声があり、平成21年度からは、車いす使用者などのための幅広い駐車スペースに加えて、車いす使用者を除く利用証保持者のために、施設出入口に近い通常の幅の駐車スペース(プラスワン)の確保の協力を進め、利用者の分散化を図るなど、利用者全体の利便性の向上を図っている。

●「みんなのトイレ協力制度」の実施
 高齢者や障害者などが外出しやすい環境づくりを進めるために、店舗、事業所、公共施設など施設の協力により、設備や広さなど誰もが利用しやすいように配慮され、また誰もが安心して使えるように開放されたトイレ「みんなのトイレ」を整備していく協力制度を平成18年3月から実施し、県内で775施設(平成23年3月末時点)の協力を得ている。
 今後も誰もが利用できるトイレが県内に増え、車いすを使用されている方やオストメイト(人工肛門・人工膀胱)の方、高齢者、妊婦、こども連れの方などが気軽にまちに出かけられるようになることを目指している。

【今後期待される取組み】
 地域の課題に対応したまちづくりを進めるために、「パーキングパーミット制度」や「みんなのトイレ協力制度」の取組みが、地域の実情に応じて、できる限り全国各地に広がることが期待される。

【連絡先】
 佐賀県佐賀市城内1丁目1番59号
 TEL 0952-24-2111

【Web-URL】
 http://www.saga-ud.jp/


 

  • 利用証の例

    利用証の例

  • 駐車スペース

    駐車スペース

  • 駐車スペース(プラスワン)

    駐車スペース(プラスワン)


  • 「みんなのトイレ」ステッカー

    「みんなのトイレ」ステッカー

  • 「みんなのトイレ」内部

    「みんなのトイレ」内部

特定非営利活動法人 旅とぴあ北海道 「旅に出よう!誰でも、自由に、どこへでも」外出可能なサポートシステム構築に向けた観光のバリアフリー化

【講評】
 受賞者は、障害や年齢などの違いに関わらず、「誰でも、自由に、どこへでも」外出可能なサポートシステムを構築することを目的に、障害者と一緒にバリアフリー交流ツアーを実施するとともに、全国各地の旅先で障害者などがサポートを受けられる体制づくりを目指して、旅の企画や旅に同行し介助などの役割を担うトラベルサポーターを育成するための養成講座を全道各地で開催するなど、全国に先駆けて、観光のバリアフリー化に取組んだ点を高く評価し、表彰することとした。

【受賞者の取組み】
●取組みの概要
 NPO法人「旅とぴあ北海道」は、「誰でも、自由に、どこへでも」外出可能なサポートシステムを構築することを目的に設立し、全国各地の旅先で障害者などがサポートを受けられる体制づくりを目指して、以下の取組みを進めた。

●トラベルサポーターの養成講座等の実施
 旅に同行し介助やツアー行程全般に関わる役割を担うトラベルサポーター「たびっと」を育成するための養成講座を全道各地で開催している。具体的には、障害者のサポートに必要な介助方法や旅行に関する基礎知識、コミュニケーション能力の向上のための講習を行っている。
 また、全国各地から障害者などの道内旅行を受け入れているほか、海外ツアーにも同行し障害者の外出支援に大きな貢献を果たしている。
 さらに、全国各地において同様の取組みを行う団体とのネットワーク体制を整備するために、新たなNPO法人の設立に関わるなど、幅広い活動を行っている。

●行政のバリアフリー施策推進へのサポート
 これまで空港、ホテル、バス事業所、JRの駅などで行った「バリアフリー教室」や全道各地で開催しているトラベルサポーター養成講座等の講師及び交流ツアーのサポーターを務め、高齢者や障害者の外出支援に大きく貢献してきた。
 また、「バリアフリー推進セミナー」においてパネリストとして参加し、自身の経験の深さを踏まえ、国土交通省が推進している施策に対してのサポートを行うなど、多様な場面での活動を行っている。

【今後期待される取組み】
 全国的にバリアフリーツーリズムが注目されており、全国各地において、同様の取組みが行われ、ハードとソフトの両面でネットワーク化されることが期待される。

【連絡先】
 北海道旭川市宮下通23丁目6番157号
 TEL 0166-32-3910

【Web-URL】
 http://tabitopeer.org/

  • トラベルサポーター養成講座(座学)

    トラベルサポーター養成講座(座学)

  • トラベルサポーター養成講座(介護実習)

    トラベルサポーター養成講座(介護実習)

  • トラベルサポーター養成講座(プラン作成実習)

    トラベルサポーター養成講座(プラン作成実習)

  • バリアフリー交流ツアー(ラワンブキ畑で収穫体験)

    バリアフリー交流ツアー(ラワンブキ畑で収穫体験)

  • バリアフリー交流ツアー(犬ぞり体験)

    バリアフリー交流ツアー(犬ぞり体験)

  • バリアフリー交流ツアー(アンコールワット遺跡巡り)

    バリアフリー交流ツアー(アンコールワット遺跡巡り)

  • 「旅とぴあ北海道」のトラベルサポーター 「たびっと」さんはこんな人!

  • 雪道介助の様子

    雪道介助の様子

  • 乗車介助の様子

    乗車介助の様子

倉敷市・倉敷美観地区バリアフリー推進会議 市と住民の連携による重要伝統的建造物群保存地区のバリアフリー化

【講評】
 受賞者である倉敷市と倉敷美観地区バリアフリー推進会議は、文化財保護の観点からハード整備によるバリアフリー化が難しい地区である重要伝統的建造物群保存地区に指定された倉敷市美観地区内において、ハードにおけるバリアを“心のバリアフリー”により補完するために「おもてなしマイスター制度」を実施し、さらに地区内の道路整備において、住民主体によるバリアフリー化を実施するなど、市と住民が協働したまちのバリアフリー化に取組んだ点を高く評価し、表彰することとした。

【受賞者の取組み】
●取組みの概要
 倉敷市美観地区は、重要伝統的建造物群保存地区(伝建地区)に指定されており、文化財保護の観点からバリアフリー化による改修が難しい地区である。そのなかで、倉敷市と住民主体の推進会議とが連携して、以下の取組みを積極的に進めた。

●市独自のバリアフリー整備計画の策定
 倉敷市は、美観地区におけるバリアフリー整備のあり方について検討し、平成20年3月に市独自の整備計画「倉敷市美観地区バリアフリー整備計画」を策定するとともに、その整備計画を推進するために、平成20年11月に地元住民・事業者・民間団体からなる「倉敷美観地区バリアフリー推進会議」が組織された。

●「おもてなしマイスター制度」の実施
 ハード整備によるバリアフリー化が難しい伝建地区において、残った段差を「ひとの手」で解消する目的から、地区内で働いている方、活動されている方、ボランティアされている方、存在の方を対象に、おもてなしの「こころ」を育むとともに、おもてなしの「技術」を習得し、観光などで倉敷を訪れ、手助けを必要としている方に対して、“おもてなし”ができる人(マイスター)を育てていく制度を、推進会議が提案し、市と協働で実施している。
 この制度では、人に対するマイスター認定だけでなく、店舗・事業所に対しても「おもてなし処」として認定を行っており、美観地区全体での取組みとなっている。

●道のあり方検討会の実施
 地区内の道路の電線地中化を契機として、地元住民などが主体となり、道路構造・デザイン、交通規制導入による通過交通の排除などの検討や合意形成を行い、その結果を市に提案し、市はそれに基づき伝建地区にふさわしいバリアフリー・美装化工事を行った。結果として、工事が円滑に進捗し、地元住民が道路の維持管理に協力するなどの動きが出てきている。

【今後期待される取組み】
 おもてなしマイスター制度は、美観地区にとどまらず、全市的に展開するとともに、同様の課題を抱えた全国の伝建地区にも広がることが期待され、また道のあり方検討会での住民主体による取組みは、同市の他の公共事業においても導入されることが期待される。

【連絡先】
(倉敷市)
 岡山県倉敷市西中新田640
 TEL 086-426-3545(交通政策課)

【Web-URL】
(倉敷市)
 http://www.city.kurashiki.okayama.jp/

 

  • 倉敷市美観地区の風景

    倉敷市美観地区の風景

  • マイスター認定を受けた店員の方々

    マイスター認定を受けた店員の方々

  • 店頭に設置されたおもてなし処の掲示板

    店頭に設置されたおもてなし処の掲示板

  • バリアフリー・美装化された美観地区内の道路

    バリアフリー・美装化された美観地区内の道路

  • マイスター認定者に貸与される認定証と認定バッジのイメージ

    マイスター認定者に貸与される認定証と認定バッジのイメージ

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