建設業法第18条によれば、「建設工事の請負契約の当事者は、各々の対等な立場における合意に基づいて公正な契約を締結し、信義に従って誠実にこれを履行しなければならない。」ことが請負契約の当事者の努力義務として定められています。
しかしながら、建設工事の請負契約の締結の現状と言えば、現在においても正規の請負契約書を定めず、注文書・同請書で工事に着手したり、また、定めたとしても、特に追加工事の場合、工事金額や工事内容、工事完成時期等について、両当事者で合意をしないまま、工事に着手する事例が多々あります。我が国では、このような慣行によって建設工事の紛争が生じやすくなっています。
請負契約の当事者の方々におかれましては、工事着手に当たっては、必ず正規の請負契約書を両当事者合意のうえで作成されるよう願う次第です。
この他、発注者、請負人それぞれで注意すべきことは、以下のとおりです。
発注者の方へ
1.下請業者の選定や監督も含めて信頼できる業者を選ぶこと。また、地盤調査や基礎工事をおろそかにしないこと。できれば建築事務所に工事管理を依頼すること。
2.確実な資金計画を立てること。また、契約の際は、契約書はよく読み、納得するまで印鑑を押さないこと。その際、無理な工期は設定せず、必ず余裕をもつこと。
3.追加工事に限らず、業者との約束は日付を記入し、必ず書面にしておくこと。
4.業者まかせにせず、現場にも自分の目で見ること。
請負人の方へ
1.発注者との長いつきあいを考え、また、発注者との円滑なコミュニケーションを図ること。
2.きちんとした契約書を作成すること。また、相手方にきちんと説明すること。
3.追加工事に限らず、相手方との約束は日付を記入し、必ず書面にしておくこと。
4.元請負人は、下請業者の選定・監督は元請の責任であることを十分自覚し、元請としての責任を果たすこと。(一括下請や不当に低い請負代金、また、不当な使用資材等の購入はいずれも法律違反)
5.下請負人は、自分の身は自分で守る気持ちをもち、技術的にも法律的にもきちんとした仕事をする。
(参考)建設業法
(目的)
第一条
この法律は、建設業を営む者の資質の向上、建設工事の請負契約の適正化等を図ることによつて、建設工事の適正な施工を確保し、発注者を保護するとともに、建設業の健全な発展を促進し、もつて公共の福祉の増進に寄与することを目的とする。
(建設工事の請負契約の原則)
第十八条
建設工事の請負契約の当事者は、各々の対等な立場における合意に基いて公正な契約を締結し、信義に従つて誠実にこれを履行しなければならない。
(建設工事の請負契約の内容)
第十九条
建設工事の請負契約の当事者は、前条の趣旨に従つて、契約の締結に際して次に掲げる事項を書面に記載し、署名又は記名押印をして相互に交付しなければならない。
一 工事内容
二 請負代金の額
三 工事着手の時期及び工事完成の時期
四 請負代金の全部又は一部の前金払又は出来形部分に対する支払の定めをするときは、その支払の時期及び方法
五 当事者の一方から設計変更又は工事着手の延期若しくは工事の全部若しくは一部の中止に申出があつた場合における工期の変更、請負代金の額の変更又は損害の負担及びそれらの額の算定方法に関する定め
六 天災その他不可抗力による工期の変更又は損害の負担及びその額の算定方法に関する定め
七 価格等(物価統制令(昭和二十一年勅令第百十八号)第二条に規定する価格等をいう。)の変動若しくは変更に基づく請負代金の額又は工事内容の変更
七の二 工事の施工により第三者が損害を受けた場合における賠償金の負担に関する定め
七の三 注文者が工事に使用する資材を提供し、又は建設機械その他の機械を貸与するときは、その内容及び方法に関する定め
八 注文者が工事の全部又は一部の完成を確認するための検査の時期及び方法並びに引渡しの時期
九 工事完成後における請負代金の支払の時期及び方法
十 各当事者の履行の遅滞その他債務の不履行の場合における遅延利息、違約金その他の損害金
十一 契約に関する紛争の解決方法
2 請負契約の当事者は、請負契約の内容で前項に掲げる事項に該当するものを変更するときは、その変更の内容を書面に記載し、署名又は記名押印をして相互に交付しなければならない。