あっせんは、相対立する当事者に話合いの機会を与え、第三者が双方の主張の要点を確かめ、相互の誤解を解くなどして、紛争を終結(和解)に導こうとする制度です。
調停と同様に、和解による紛争の解決をめざすものですが、あっせんは法律的又は技術的な争点が少ない事案に適しており、また、基本的に当事者間の話し合いを促すものですので、必ずしも「あっせん案」の提示は行われません。
紛争審査会によるあっせんの結果、紛争が解決すれば、両当事者は和解書に調印することになります。この和解契約の効力は、民法上の和解(民法695条〜696条)の効力と同じです。したがって、この和解書は民事執行法上の債務名義とはならないので、これに基づく強制執行はできません。
いずれか一方が任意に履行をしない場合は、裁判所に訴訟の申立てをし、和解書の内容に沿った判決を得、それを債務名義にして強制執行を行うことになります。なお、これ以外に債務名義とする方法としては、公証人役場で強制執行の認諾のある公正証書を作成することでも可能です。
また、あっせんは、調停と同様、時効中断効がないとされています。したがって、請負人の工事に関する債権(代金不払い等)は、あっせん申請にかかわらず、3年で消滅時効が成立してしまいますので注意が必要です。
調停は、相対立する当事者に話合いの磯会を与え、紛争解決のための努力を行って頂き、場合によっては調停案を示して、その受諾を勧告することにより紛争を解決しようとする制度です。単に当事者間の話合いを促すだけでなく、当事者に調停案の受諾を勧告することができる(建設業法25条の13第4項)点に、あっせんに対する特色があります。調停による合意の効力は、あっせんと同様民法上の和解の効力と同じです。
次に、あっせんと異なる第二の点は、担当委員数の相違です。あっせんは原則として法律又は技術の委員一人が担当しますが、調停は三人の委員で行われ、原則として法律委員一人と技術委員二人、若しくは法律委員一人、技術委員一人、一般委員一人の合議制によって運営されます。このことから、あっせんは法律的又は技術的な争点が少ない事案に適し、調停は、法律的又は技術的な争点が多い事案に適していると言えます。
また、調停には、あっせんと同様、時効中断効がないとされていますので、注意して下さい。
仲裁は、あっせんや調停と異なり、和解による解決ではなく、第三者に裁判所の判決に代わる「仲裁判断」を下してもらう制度です。(ただし、後述するように、現実には仲裁手続きを行った結果、和解が成立して紛争が解決することもよくあります。)
建設工事紛争審査会による仲裁は、「公示催告手続及ビ仲裁手続二関スル法律」に基づく仲裁制度の本質を維持しつつ、より積極的、機動的な活用が図れるよう、建設業法25条下にいくつかの規定を設けています。すなわち、仲裁人の数を3人と定め(建設業法25条の16)、仲裁人の選任についても、当事者の合意による自主的な選定を尊重しつつ、その合意が成立しない場合は、審査会の会長が選任することにより手続を進行させることにしています。仲裁には、あっせん、調停とは異なり、時効中断効があるとされています。
次に、仲裁に固有の仕組みである仲裁合意と仲裁判断の法的効力の二点について説明します。
(1) 仲裁合意
仲裁は、当事者間の紛争を裁判によらずに仲裁委員の判断(仲裁判断)によって解決しようとする制度であることから、仲裁の申立てをする前提として、当事者間で紛争を仲裁に付する旨の合意(仲裁合意)が必要です。仲裁合意の時期は、紛争の発生前であると紛争が発生してからであるとを問いません。仲裁合意をすると、当事者の一方が裁判所に訴えを提起しても、相手方は仲裁合意の存在を主張して訴えの却下を求めることができます。このようなことから、仲裁の場合は、紛争の当事者は、紛争解決の手段として裁判所によるのか、あるいは紛争審査会の仲裁により解決するのかをはっきりと認識し、かつ定めておくことが大切です。
なお、仲裁合意は請負契約締結時に使用される標準的な請負契約約款の中に「紛争解決条項」として盛り込まれているのが普通です。最も広く使われていると言われる民間(旧四会)連合約款や中央建設業審議会作成の標準請負契約約款では、請負契約書の他に別途「仲裁合意書」の様式を設け、当事者が仲裁の制度を十分理解した上で署名押印するようにしています。
(2) 仲裁判断の法的効力
紛争審査会の仲裁人による仲裁判断には、確定判決と同様の効力が認められています。 すなわち、裁判においては第一審判決が上訴期間(二週間)が経過することによりそのまま確定する場合もありますが、敗訴者がこれを不満とすれば、控訴、更には上告といった道も開かれています。しかし、仲裁においてはこのような上訴に相当する手続はありません。したがって、仲裁判断イコール確定判決ということになります。
なお、民事訴訟手続による強制執行を行うためには債務名義(民事執行法22条)が必要ですが、仲裁判断に基づいて強制執行を行うためには、裁判所の「執行判決」(執行を許す旨の判決)を得ることが必要とされています(公示催告手続及ビ仲裁手続二関スル法律802条1項)。この執行判決は、仲裁判断の内容の当否について審査を行うものではなく、形式的に公示催告手続及ビ仲裁手続二関スル法律801条の取消事由の存しないことを確認し、強制執行を許す旨の判決を行うものであるとされています。
仲裁の申請がなされると、仲裁委員の選定がなされて、その仲裁委員による当事者の審尋が行われ、必要に応じて文書(主張書面、証拠)の提出、立入検査、証人尋問、鑑定等が行われます。これらの手続きを経た後、仲裁委員は、その審理の結論を仲裁判断としてまとめ、最後に仲裁判断が当事者に送達されて仲裁事件は終了します。また、このような仲裁手続きを進めていく過程のなかで和解の気運が生ずる場合は、次のいずれかによって仲裁事件を終了させることができます。
(a)当事者間のみで和解契約を締結し、仲裁申請を取り下げます。(期日外和解)
(b)仲裁の審理の場で仲裁委員が立会人として当事者とともに記名押印する和解書を作成し、仲裁申請は取り下げます。(期日内和解)
(c)当事者で合意した和解の内容を主文とする仲裁判断を審査会が行います。(和解的仲裁判断)