建設産業再生プログラム(骨子) T プログラムの意義と行政の役割 (プログラム策定の背景) ・ 我が国経済が低迷する中で、大きな構造変化に直面している建設産業のあり方は、国民や市場の大きな関心事。 ・ このため、建設産業界との意見交換、学識経験者等からなる研究会での議論を踏まえ、建設産業の戦略的な取組みの方向について、プログラムにとりまとめた。 ・ 平成7年4月に策定した「建設産業政策大綱」を踏まえ、その後の状況変化に対応して、重点的な課題整理を行うもの。 (建設産業再生の意義) ・ 厳しい環境の下で、建設産業においても競争が激化し、建設産業も淘汰の時代。 ・ 個々の企業の勝敗は市場で決まるが、単に失敗した企業が排除され、リストラに成功した企業が生き残るだけでなく、企業間の公正な競争を通じ、21世紀の経済社会のニーズに応えられる創造力と活力を有する産業となることが、「建設産業の再生」。 (プログラムの対象) ・ 建設産業の中で大きなウエイトを占め、バブル崩壊以降、厳しい経営環境にある大手総合建設会社の今後のあり方に焦点を当てつつ、全建設産業に共通する課題についても、必要に応じて方向性を示した。 ・ 地方建設業界、専門工事業界等のあり方についても、議論を深めることが必要。 (行政の役割) ・ 「建設産業の再生」は、各企業の自己責任、自助努力により進めて行くべきもの。 ・ 行政は、国土空間のあり方、公共事業の発注、建設産業の健全な発達と消費者保護などについての責任を有する立場から、将来展望を提示しつつ、企業の多様な選択を可能にする環境整備と競争性を重視した公正な市場環境整備を行うもの。 U 建設投資の動向と建設産業の現状 1 建設投資の動向 ・ バブル崩壊以降、我が国経済が低迷する中で、今後の建設投資についても、全体としては弱含みで推移。 2 建設業者、建設就業者等の動向 ・ 建設就業者数は、平成9年11月以降、減少傾向が続く。 ・ 建設業許可業者数については、企業規模や業態等で多様なものが混在し、総数だけを論じる意味はあまりないが、公共工事の元請実績のある業者数等の動向から見ても、供給過剰な状況。 3 建設産業の経営状況等 ・ 建設業者の経営状況は、厳しい経営環境を踏まえ、財務状況が悪化。 ・ 特に、大手50社は、受注が大幅に減少し、利益率の低下も著しい。また、有利子負債・保証債務、滞留している完成工事未収入金も増加。 ・ 建設業者の倒産も増加し、一部上場企業などの大型倒産も発生。 V 建設市場の構造変化 1 投資分野の変化 ・ 需要内容の多様化が進むとともに、新たな需要が見込める分野(都市環境の改善、環境対策、高齢化社会への対応、情報化への対応など)も。 ・ 海外の建設市場も、技術力や提案力で国際競争力を有する企業には、戦略的な分野。 ・ CM、PMなどの施工管理等の業務、PFIなどの公的な業務、既存施設の維持・更新サービスなどの建設関連業務なども成長期待分野。 2 発注者ニーズの変化 ・ 民間発注者の競争の激化から、受注者にもコストの削減や透明化を求め、競争入札の導入や分離発注、CMなどのニーズ発生の動き。 ・ 公共発注についても、民間の技術力を活用した発注方式に加え、発注者の体制に応じて外部組織を活用する仕組みやPFIなどの制度の検討も進む。 3 供給サイドの構造変化 ・ 近年、メーカーや専門工事業者が競争力を伸ばすとともに、「材工一式」や「分離発注制度」などの生産体制も普及。 ・ 建設技術の汎用化の進展により、中小企業等が施工できる分野が拡大し、コスト面での中小企業や地場企業の有利性と相まって、大手総合建設会社にとって厳しい状況。 ・ さらに、リフォーム市場等では、専門工事業者やメーカーと総合建設業者の関係、地場企業と全国展開している企業の関係なども多様化。 4 経済社会からの要請 ・ 大手総合建設会社を中心とした有利子負債の削減やリストラの推進など、早急な経営改善や過剰債務の解消は、建設産業の大きな課題。 ・ 企業の財務情報等も開示が要請され、エンドユーザーにとっても、財務状況、工事経歴、技術者等の情報が広く提供され、企業を的確かつ容易に評価・選択できることが、極めて重要。 5 建設市場における競争の激化とその局面 ・ 今後、建設産業は、競争の激化に伴い、コストダウンと品質、商品開発力、提案力による差別化という、2つの局面での競争力の強化が求められる。 @ コストダウン・・・ダンピング等によるものではなく、技術力に基づいた生産効率の向上や、生産システム、建設資材に係る流通の合理化に裏打ちされたコスト競争。 A 品質、商品開発力、提案力による差別化・・・CM・PMなどの施工管理等の業務、施設の継続的な維持補修、品質向上を図るマネジメントシステムの構築、完成物の品質や性能の保証、運営業務を含めた施設建設の提案など。 W 企業戦略の方向 1 「選択と集中」のための企業戦略 ・ 各企業において、それぞれの得意分野に思い切った重点化を図り、経営の「選択と集中」を通じて「利益率の向上」を目指すことが必要。 ・ 特に、大手総合建設会社においては、単なる規模縮小のリストラではなく、競争力の強化につながる経営改革の視点から、企業の体力、規模、特色等に対応した早急な企業戦略の策定が課題。 2 企業戦略の4つの方向 @ 不採算部門からの撤退と優位部門への重点化 ・ 自社の収益構造を分析し、経営資源を重点配分。 A 成長期待分野、戦略的投資分野の強化 ・ 今後成長が期待できる分野で、将来的に自社が競争優位性を持ちうる分野に、経営資源を戦略的に重点投入。 ・ このような分野として、@都市開発、福祉、環境、情報などソフト能力も必要な分野、A高度な技術力や提案力が要求される海外建設市場、B維持・更新分野、C施工のノウハウが活用できる分野(例えば、不動産の証券化の際に必要となる建築物の評価業務)など。 B コストダウンによる競争力の強化 ・ 新たな施工技術の開発や人件費の削減、物流の効率化、情報技術の活用など、コスト内容を吟味した削減の促進。その前提条件として、コスト構造の明確化が重要。 C 品質や商品開発力、提案力による競争力の強化 ・ 品質やソフト面の能力等による差別化、競争力の強化(長期間の品質保証等、施設の運営方法等提案力の強化など)。 ・ その際、品質に応じたコストの明示、特許など知的財産権の獲得・活用、継続的な提案システムの構築等により、競争優位性を確保。 3 経営組織の革新と連携の強化 ・ 「選択と集中」の方策として、分社化、執行役員制度などの「経営組織の革新」と異分野・異業種も含む企業との新たな「連携の強化」が選択肢。 ・ 具体的には、@自社の分社化、AMBO等の活用による企業分割、B他社との業務提携、Cフランチャイズ、D営業譲渡、E他社への資本参加、F合併など。 X 行政による環境整備の課題 (行政の基本的スタンス -競争的な市場環境の整備-) ・ 建設産業再生は、各企業が、各々の自己責任、自助努力で、「経営組織の革新」と「連携の強化」を進め、達成すべきもの。行政の役割は、その動きを促進するような「競争的な市場環境」を整備すること。 ・ とりわけ、大手総合建設会社の再生に向けた努力を促す市場環境を早急に整備。 @ 経営組織の革新と連携の強化への対応 ・ 各企業の多様な組織形態の選択を可能にし、経営の自由度を拡大する観点から、分社化、資本参加等に対応した経営事項審査のグループ評価のあり方、新たな企業連携のあり方などについて検討。 A 情報開示による透明で公正な市場の確保 ・ 競争力のある企業の評価・選択が可能な企業情報の的確な開示に資するため、企業会計基準の国際化への対応、建設工事原価計算基準の策定、経営事項審査に関する企業情報等のデータベース化などについて検討するとともに、これらの情報の活用方策を検討。 B ニーズの変化に応える市場づくり ・ 品質や商品開発力、提案力による競争を促進するための環境整備として、PFIやCM、PMなどの普及促進方策や瑕疵担保保証、品質保証のあり方、技術力が評価できる発注方式や知的財産権の一層の活用方策について検討。 ・ また、新たな成長分野の研究や官民共同による技術開発の推進、海外建設市場への展開の円滑化の促進などを実施。 C 公共工事における競争性・透明性の確保 ・ 入札・契約制度改革の徹底と民間の技術力の活用等を推進するとともに、不良不適格業者の参入やいわゆる「上請け」等の弊害に対し、適切に対処。 ・ このため、多様な入札・契約方式の導入、JV制度・運用のあり方、過度な分割発注の是正などについて検討するとともに、不良不適格業者の排除を徹底。 D リストラの促進とセーフティネットの整備 ・ 「建設産業の再生」の過程で生ずる「雇用転換」や「過剰債務・設備の解消」、「連鎖倒産の防止」については、建設産業界での努力はもとより、広く全産業的な視野と関連する制度の活用によって対応。 |