国土交通省
 第1回交通事業に係る運転従事者の睡眠障害に起因する
 事故等の防止対策に関する連絡会議議事概要

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  1. 日時
     平成15年3月7日(金)10:00〜12:00

  2. 場所
     合同庁舎3号館11階特別会議室

  3. 出席者
      講師(3名)
    虎の門病院呼吸器科          成井浩司先生
    筑波大学社会医学系社会健康医学 谷川 武先生
    順天堂大学医学部精神医学講座   井上雄一先生
      青山事務次官
      連絡会議メンバー(7名)、他
    総合政策局参事官(交通安全担当)(座長)
    総合政策局技術安全課長
    鉄道局技術企画課長
    鉄道局技術企画課安全対策室長
    自動車交通局総務課安全対策室長
    海事局船員労働環境課長
    航空局技術部乗員課長

  4. 議事概要
     (1)開催趣旨説明(総合政策局)
    資料1に基づき説明が行われた。

     (2)情報提供(鉄道局)
    資料2に基づき説明が行われた。

     (3)講演
     睡眠時無呼吸症候群について、次の講師の方々から配布資料等に基づき講演が行われた。
    • 「睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診断と治療」資料3−1
         成井浩司先生(虎の門病院呼吸器科)
    • 「睡眠時無呼吸症候群スクリーニングの実際」資料3−2
         谷川 武先生(筑波大学社会医学系社会健康医学)
    • 「閉塞性睡眠時無呼吸症候群での作業・運転リスク」資料3−3
         井上雄一先生(順天堂大学医学部精神医学講座)

     (4)主な質疑応答

      Q:(鉄道局)

     居眠りのパターンは、ウトウト(浅い)する場合と、今回の運転士の場合のように深い眠りの場合があると思いますが、睡眠時無呼吸症候群の場合、どちらのケースもあるということでしょうか。
      A:(井上先生)
     両方あり得ますが、一般的には浅い眠りのケースが多いです。太った患者の方が仰向けに寝た場合、喉が塞がるので、眠りは深くなりません。しかし、運転台などの座位の場合は、喉が開いたままの状態ですので、健常者にとっては寝づらい状態ですが、睡眠時無呼吸症候群の患者の方にとっては、快適に眠れる状態となり、深い眠りとなる場合があります。重症の睡眠時無呼吸症候群の患者の中には座って眠る人もいます。

      Q:(自動車交通局)
     CPAPの場合、今の段階でどれくらいお金がかかるのでしょうか。
      A:(成井先生)
     CPAP治療は、睡眠時無呼吸症候群と診断された方に、月に一度の通院で治療を続ける場合、健康保険による治療が行えます。診療報酬点数は指導管理料250点、機器加算1,210点の合計1,460点で14,600円の診療となり、3割負担の場合、月々4,600円から5,000円程度の自己負担となります。なお、CPAP治療継続の際の鼻マスク、チューブなどの消耗品も病院から支給されます。
     通院が不可能であれば、CPAP機器を購入して治療を継続することも可能です。機器は日本では16万円から36万円程度します。
     診療の現場では、1回/月の通院治療をし、健康保険を用いて治療継続しております。

      Q:(総合政策局)
     適切な治療をすれば、健常者と同じように生活ができるということですが、重症と軽症によっても異なると思いますが、治療の期間はどのくらいになるのでしょうか。
      A:(成井先生)
     睡眠時無呼吸症候群の患者さんは、CPAP治療を行えば、病気が治ってしまうというものではありません。通常はCPAP等の治療を継続して、毎日無呼吸のない、良い睡眠状態で、おやすみいただくということなります。しかし、CPAP治療を導入すれば、翌朝から眠気も消失し、集中力も向上し、事故・トラブルの予防が可能です。太っている方の場合は、減量してCPAP治療を中止することも可能ですし、扁桃肥大のある方は手術が有効な方もいます。しかし、減量には時間がかかりますし、手術も完全に有効というわけではありません。
     診療の現場では、8〜9割の方はCPAP治療を継続し、外来通院をしているのが実態です。

      Q:(自動車交通局)
     自動車の関係は、バス事業、タクシー事業、トラック事業があり、運転者の数だけで135万人、事業者数も11万の規模です。同じ対処方法でも、鉄道、航空等の場合は企業レベルが高く、ある程度難しい話でも企業の方で対処してくれると思いますが、自動車運送事業の場合は大手企業から小規模な事業者までさまざまです。
     運行管理者に対する指導講習や、運転者に対する安全講習というツールで安全の問題を啓蒙しており、今回の問題も、それに乗せて実施していくことになると考えていますが、今回の件は、安全講習の先生ですら知らない初めての問題ですので、小規模な事業者の運行管理者の実態に合わせた、できるだけ分かりやすいテキスト、マニュアルを作ってキャンペーンしていくことが必要であると考えています。テキスト作り等で、今後いろいろアドバイス等をいただきたいと思いますので、よろしくお願いします。
      A:(成井先生)
     国民に広く睡眠時無呼吸症候群を理解していただくため、わかりやすいパンフレットやマニュアル作りは必要です。平成13年11月から厚生労働省でも、健康日本21の活動の一環で、睡眠時無呼吸症候群の保険指導マニュアル作成をし、SASの普及啓発に取り組んでおります。早急に作成し、広めていきたいと考えています。
        (井上先生)
     昨年の道路交通法改正により、免許の保留等の基準に「重度の眠気の症状を呈する睡眠障害」が明文化されましたが、こうした法規の動きと一緒に啓蒙していくことも重要であると考えています。

      Q:(航空局)
     航空の現状を紹介しますと、航空局長の諮問機関として航空身体検査審査会を作っておりまして、その中に各分野の専門医を集めています。
     実は2月にもエアラインで1件、睡眠時無呼吸症候群の患者が出まして、航空身体検査審査の基準でいくと不合格となりますが、審査会に諮って専門の先生に診てもらった結果、その患者に関してはCPAPを装備した上で乗務して結構ですという大臣判定をいただいて、パイロットの世界で乗務しているところです。
     航空は身体検査が非常にシビアになっていて、判断をしていただくお医者さんも判定会で抱えて、月1回開催しているものですから、対策としては、専門家の意見を聴きやすいということと、陸と違って、大きな会社はしっかりとした健康診断をしているものですから、割と対応はとりやすいのかなという感じはしています。
     今回の対応も、今の専門家の方のお話を聞いていると妥当な対応であったと思いました。この場を借りましてご紹介させていただきます。

      Q:(海事局)
     船員の健康検査に関する条約がありまして、それに基づいて年1回健康審査を実施し、健康証明を持たない人は船員の職務をできないことになっています。
     アメリカのメイン州では、未治療の重症患者は運転禁止にされているそうですけれども、問題は、どの程度の症状で、発見するのにどのくらい時間がかかるかということが一つの問題だと思いますが、どうなのでしょうか。血液検査とか血圧測定でわかるというような話でもないので、そことの兼ね合いが非常に難しい問題であると思いまして、かなり時間がかかるものであれば、乗員の確保をどうするかという問題もあって、いろいろ難しい問題が出てくると思っております。
      A:(井上先生)
     すべての患者さんを検出するのは、人的負担が大きくて無理ですが、パルスオキシメトリーによるスクリーニングでピックアップし、重症の人の検査を優先的にできるシステムを作る必要があります。
        (成井先生)
     患者の受け入れ先をリストアップし、検査治療のできる施設を充実させることが重要です。しかし、講演でも話しましたように、日本はこのような施設が不足しているのが現状です。
     また、パルスオキシメトリーは、軽量化され、精度も良く、すぐに解析結果がでるようになっています。何度も申し上げますが、症状の重い人、運転リスクの高い方を、すぐに治療に回せるシステムが必要です。しかし、受け入れ体制を全国的に見ると、地域差があります。

     (5)その他
    次回開催日は未定。


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