「官僚は業界の情報は持っているが、国民の意向に関する情報は持っていない。これを持つのは、政治家である。だから、政治家は官僚をコントロールするべきである」と、私は言い続けてきた。しかし、ほとんどの政治家は、残念ながら、自分の票を集めてくれる層の意向しか聞かない。だから、無党派無関心層が減らない。
世の中ままならないと思っていたら、官僚の方から、国民とのコミュニケーションを言い出した。それも、厚生省とか、「国民生活白書」を出している経済企画庁ではなく、国民からは建設業界の代弁者と見られがちな建設省からである。
もちろん、これは大変よいことである。というか、当然そうでなくてはならないことである。現に、日本国憲法は、50年以上前から、「公務員は、全体の奉仕者」だと宣言している。
心配なのは、はたしてこれが職員に浸透するか、また、永続きするかということである。
その鍵は、二つあると思う。
一つは、建設省の全幹部・職員が本気で国民の声を聞き、これを政策に生かす気持をもつということである。その気持がなければ聞くのが面倒になるだろうし、その気持があれば、いやな相手にも心広く対応出来るであろう。
二つは、自分たちの腹を明かすということである。それなくして信頼関係はなり立たない。情報の積極的公開を覚悟する必要がある。
建設省の真剣さがわかるまでの間、国民の方はおそらくシラーッとしているであろうが、根気よく続けてほしい。また、コミュニケーションの相手が特定の層に偏っていかないよう祈念している。
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