戦後の日本経済の復興において、「国土の均衡ある発展」は国是であり、そのバックボーンの元で建設省は非常に大きな役割を果たしてきたと思う。しかし、均衡ある発展という概念は麗しいが実際は実現不可能であり、資源配分を歪めている。今後は「個性ある地域の発展」を目指すことが必要になってくると思う。
私は海外出張から日本に帰国し、東京に着くと何かがっかりした気分になる。米国の都市はここ20年で面目を一新した。東南アジアを見てもシンガポールや上海は随分きれいになっている。ところが東京は全く住み心地が良くならない。本来、東京はニューヨーク、ロンドンと較べても遜色のない都市を目指さなくてはならないはずなのに、現状は遠く及ばない。私が思うにその理由は都市計画がうまく実行されていないことに尽きる。例えば、せっかく新宿副都心をつくっても丸の内まで道路1つ引けないのであれば意味がない。ある程度私権を制限してでもビジネス、住み心地、美観など全てにおいて素晴らしい都市づくりを真剣に考えないといけない。そのためには、都市計画にそぐわない建物などには罰則を設け、その一方で計画に沿ったものには容積規制の緩和など大胆なインセンティブを与えるやり方が良い。都市整備は何としてもやらねばならない。
行政の仕事の進め方としてしっかりと意識していただきたいことがある。1つは経済合理性に基づいた費用対効果の徹底である。例えば、漁獲高を上回る漁港整備費は必要であろうか。河川整備においても、洪水の防御に固執するのではなく、人命さえ守られればある程度の浸水は認め、損失は補償で対応するなどの合理的な考え方を持ち込むこともできるはずだ。
2つめとして、省内の縄張り争いがあると聞く。これは時代遅れだといわざるを得ない。道路と河川、技官と事務官の縦割りの意識が一体感をなくす一因とも聞く。まずは省内においてもっと交流し幅広い知識の集積と公益への奉仕を目指してほしい。
さらに付け加えると、業務にサービス業の感覚を取り入れていただきたい。国民意識と乖離している最たる例が高速道路の料金所渋滞である。料金を頂くのに顧客に長時間の負担を求めるというのは、サービス業の観点からはイロハのイを間違えている。その解消策と謳われている自動料金徴収システムにしても欧米各国に較べて大幅に導入が遅れている。日本の技術力から考えると、行政の怠慢ではないだろうか。極端なことを言うと、500m渋滞したら料金を無料にする、それくらいの感覚で取り組んでいただきたい。
色々勝手なことばかり申し上げたが、私は国土交通省には新しい日本の国づくりのリーダーシップをとっていただきたいと大いに期待している。今こそ「過去のやり方」を止め、値打ちのあるお金の使い方を考えるべきである。現在の状況をバッシングととるのではなく国民からの期待のあらわれだと受け取っていただきたい。
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