建設省行政情報化推進計画

平 成 7 年 5月 30日
情報政策推進委員会 決定
平成10年5月28日 改定

項目
第1 計画策定の意義等
1 計画策定の経緯

2 計画の意義及び性格
3 計画の対象機関
4 計画の期間
第2 建設行政の情報化の推進に関する基本方針及び施策
1 社会の情報化の進展に対応した建設行政情報化の推進
2 情報通信技術の活用による建設行政の簡素化・効率化及び行政運営の高度化
3 建設行政情報化推進のための基盤整備
第3 個別課題及び施策
1 社会との接点の情報化のためのシステムの整備

2 入札・契約手続をはじめとする建設行政内部の情報化のためのシステムの整備
3 防災に関する施策
第4 各部局における行政の情報化の推進に関する計画
第5 その他

第1 計画策定の意義等
1 計画策定の経緯

 行政の情報化については、「行政情報化推進基本計画」(平成6年12月25日閣議決定)に基づき、平成7年度(1995年度)を初年度として、総合的・計画的に推進してきたが、計画の進ちょくに伴い、ネットワーク基盤を始めとする情報通信基盤の整備が大きく進展し、整備された基盤の活用の可能性が増大するとともに、インターネットの急速な普及、電子商取引の実現の動き等社会の情報化の進展等の諸情勢が大きく変化した。このような状況を踏まえ、行政情報化をより一層強力に推進するために、「行政情報化推進基本計画」が平成9年12月20日の閣議決定により全面的に改定されたところである。この計画により、我が国は、国民サービスの飛躍的な向上と行政運営の質的向上等を目的とした行政の情報化を推進し、21世紀初頭に高度に情報化された「電子政府」の実現を目指すこととしている。
 「行政情報化推進計画」は、行政の情報化を推進するための政府全体としての取り組み方針や整備方針等を定める「基本計画」、基本計画の第2に掲げる行政情報化推進の基本方針に定める事項のうち各省庁が共同・分担して実施する事項を定める「共通実施計画」及び、各省庁が実施する事項を定める「各省庁別計画」から構成される。
 これまでの建設省行政情報化推進計画は、平成7年5月30日に、当時の建設省における省庁別計画として策定(情報政策推進委員会決定)され、建設省における行政の情報化を推進してきたが、上述のように、政府全体の行政情報化推進基本計画の改定に伴い、「建設省行政情報化推進計画」を建設省における省庁別計画として改定する。

2 計画の意義及び性格

 新しい「建設省行政情報化推進計画」は、今後の建設行政の各分野における行政の情報化を総合的・計画的に推進し、公共事業をはじめとする建設行政の効率化・透明性を確保するとともに、行政サービスの質的向上や国民負担の軽減等を図るための指針となるものである。
 なお、建設省においては、情報システムの整備等を計画的に進めるため、建設省電子情報システム管理運営規程(昭和52年建設省訓第14号)第5条に基づき、5箇年間の「電子情報システム整備目標」(以下「整備目標」という。)を策定することとされており、前計画と同様に新しい「建設省行政情報化推進計画」についても、この「整備目標」として取り扱うこととする。

3 計画の対象機関

 この計画は、建設省の部局(本省、土木研究所、建築研究所、建設大学校、国土地理院及び地方建設局)を対象とする。

4 計画の期間

 この計画の期間は、平成10年度(1998年度)から14年度(2002年度)までの5年間とする。

第2 建設行政の情報化の推進に関する基本方針及び施策
1 社会の情報化の進展に対応した建設行政情報化の推進
(1) 行政サービスの質的向上
ア 行政情報の提供等

1. インターネット等を活用した行政情報の提供等
 日々公表される報道発表資料、国民生活に必要な各種の行政情報などについて、インターネット・ホームページ及びパソコン通信を活用し、オンラインによる提供を進めるとともに、提供内容の充実、タイムリーな提供を進める。また、国民からの意見、要望、問い合わせの受付等にインターネットの活用を推進する。さらに、道路に関する意見や相談等をインターネット等を活用し総合的に受け付ける窓口(「道の相談室」)の全国展開を図る。
 また、行政サービスに関する業務を効率的に行っていくため、LANシステムとインターネットとの接続をセキュリティの確保を図りつつ行っていくとともに、地方建設局等の事務所レベルも含め、インターネット・ホームページの整備を推進していく。
2. 情報交流の推進
 行政情報について国民とのコミュニケーションを促進するための、「さいたま広域合同庁舎」をはじめとする行政情報プラザの整備を推進する。
3. 行政情報の電子的な提供等
 平成11年度までに行政情報システム各省庁連絡会議において取りまとめられる提供内容の充実、提供に伴う対価の在り方、提供方法等の基本的な考え方を踏まえ、行政情報の電子的な提供を積極的に推進する。
4. 白書、統計情報等の電子的な提供
 建設白書等の刊行物、各種統計資料、建設省関係法令集、審議会答申等の行政情報について、インターネット、CD−ROM等の電子的な手段・媒体による提供を一層進める。
5. 地理情報システム(GIS)の効率的な整備
 地方公共団体等と連携して、県庁所在地等の都市計画地域を対象として、空間データ基盤のうちGISの利用に不可欠な骨格となるデータ(測地基準点、道路中心線、行政区画等)の整備を行うとともに、地方公共団体に対し、GIS整備手法等に係る技術的支援を行う。
6. クリアリングシステムの整備
 国民等への情報サービスの向上のため、建設省版クリアリング(行政情報所在案内)システムを整備し、平成10年度の早い時期に運用を開始するとともに、引き続き提供すべき情報の一層の充実を図る。

イ 申請・届出等手続の電子化

また、電子化を行うに当たっては、事務処理手続等の見直しを行い、必要に応じ関係法令の改正等所要の措置を講ずる。
 

2. 国民のニーズを踏まえ、インターネット・ホームページを活用し、申請・届出等手続の案内、申請等様式の提供を推進する。

ウ ワンストップサービスの実施

 国民生活、企業活動等に必要な行政手続、行政情報の提供等について、地方公共団体等との連携・協力を図りつつ、情報通信技術を活用した手続の案内・教示、必要な行政情報の提供、申請・届出等の受付、結果の交付等の行政サービスを総合的に提供する、いわゆる「ワンストップサービス」については、平成10年度に行政情報システム各省庁連絡会議において策定されるワンストップサービスの整備方針を踏まえ、制度的、技術的課題の解決を図りつつ、段階的に推進する。

(2) 民間部門との電子データ交換の推進
ア 調達手続の電子化

 インターネットによる発注予定情報、入札公告等に係る情報提供を一層充実させる。さらに、工事の競争参加資格審査申請について、平成11、12年度の定期審査からインターネットを活用した一元受付を開始する。

 また、発注関連情報等について、JACIC NETによる情報提供をさらに推進する。

イ 公共事業支援統合情報システム(建設CALS/EC)の構築

 公共事業の業務の一層の効率化を図るため、公共事業の計画、設計、工事及び管理の各段階で発生する各種情報(文書、図面、表など)の標準化、電子化を行い、そのやり取りや保管についてネットワーク、データベース等を活用することにより、受発注者間(及び発注者内部)の効率的な情報共有・活用を図ることを目的とした、公共事業支援統合情報システム(建設CALS/EC)の構築について、「建設CALS/ECアクションプログラム」(平成9年6月公共事業支援統合情報システム(建設CALS/EC)研究会策定)に基づき、システム及び体制の整備を実施するとともに、地方建設局の全事務所を対象とした実証フィールド実験を積極的に推進する。また、発注関連情報等の提供については、ホームページ上の全調達情報の一元的検索の実現等を可能とするクリアリングハウスの構築を、積極的に推進する。

2 情報通信技術の活用による建設行政の簡素化・効率化及び行政運営の高度化
ア 個別業務のシステム化、機能の高度化及びシステム間の連携

1. 各種許認可等に係る事務等
 申請・届け出等手続のオンライン化、ワンストップサービスの実施を念頭に、関連するシステムとの連携等に留意しつつ事務処理手順等の見直しを行い、業務のシステム化及び既存システムの機能の高度化を推進し、業務の簡素化・効率化を図る。
2. 人事、会計等内部管理業務
 セキュリティの確保、関連業務との連携に留意しつつ事務処理手続き等の見直しを行い、LANを活用したシステム化等を推進し、業務の簡素化・効率化を図る。
3. 各種報告等の業務
 省庁間で実施されている各種報告、法令等の協議などの業務については、霞が関WAN等を活用し、業務の簡素化・効率化を図る。
4. 情報公開の制度化に対応したシステム整備
 制度の的確で円滑な運用に資するため、下記イ@の行政文書ファイル管理システムの統一的仕様に基づき、逐次、行政文書ファイル管理システムの整備を行う。

イ 文書の管理・流通のシステム化

1. 総合的な文書管理システムの整備
 電子文書を含む文書のライフサイクルを通ずる総合的な文書管理システムについて、先行省庁における取組を参考にしつつ、平成10年度に各省庁事務連絡会議及び行政情報システム各省庁連絡会議において策定される、システムの機能、構成等の統一的な指針、並びに、文書ファイルの目録等をデータベース化するための行政文書ファイル管理システムの統一的仕様に基づき、総合的な文書管理システム(電子稟議決裁システムを含む。)の整備を進める。なお、本システムの整備は、省庁再編の具体化の動向等を考慮しつつ行う。
2. 省庁間電子文書交換システムの整備
 省庁間電子文書交換システムの運用に必要なシステムを、省庁間電子文書交換システムの基本仕様(平成10年3月文書管理規則等研究会・共通システム専門部会了承)等に基づき整備する。なお、本システムの整備は、省庁再編の具体化の動向等を考慮しつつ行う。
3. 文書管理規程の見直し
 上記ア.4並びにイ.1及び2を進めるに当たっては、必要に応じ、文書管理規程等の見直しを行う。

ウ 情報共有の推進

1. 省内部・省庁間の情報共有
 建設白書等の利用価値の高い情報をデータベース化する白書等データベースシステムを平成10年度より運用開始し、また、提供可能な情報について、霞が関WAN上に提供するとともに、総務庁をはじめ他省庁から霞が関WAN上に順次提供される各種データーベースの積極的な利活用を推進する。また、平成11年度に行政情報システム各省庁連絡会議において策定される統一的な仕様に基づき、通達、告示等のデータベース化を推進する。さらに、インターネット等を介した民間商用データベースシステム等外部データベースシステムの利活用を一層推進する。
2. データベースのイントラネットの活用等
 各部局内のLAN及び建設行政WANのイントラネットを活用し、各種データベース等の情報共有の推進を図る。また、本省においては他省庁に提供可能なデータベースについて、霞が関WANによる省庁間利用を推進する。

エ LAN等情報通信基盤の活用による業務の効率化・高度化

1. LAN等の一層の活用の推進
 LAN等に組み込まれた電子メール、電子掲示板、イントラネット等グループウェアの各種機能を最大限に活用し、LAN等による業務の簡素化・効率化、コミュニケーションの円滑化・高度化等を推進する。このため、特に説明を要せず読めば理解可能な、連絡事項をはじめとした情報の伝達・共有については、電子メール、電子掲示板、イントラネット等を活用することとし、原則として紙による配布は行わないなど紙媒体の配布を制限する措置を検討する。
2. テレビ会議システム
 時間と経費の節減、業務の効率化・高度化を進めるため、建設行政WANを利用した、本省・地方建設局間等における、テレビ会議システムの導入を検討する。
3. テレワーク
 情報通信技術の活用による業務の効率化、労働生産性の向上を図るため、先行省庁の検討を参考にしつつ、サテライトオフィス勤務、在宅勤務等のテレワークの導入について調査研究等を進める。

オ 民間へのアウトソーシング等の推進

 情報システムの外注化に当たって留意すべき情報の管理等、業務の管理監督の方法等の基本的考え方に関する行政情報システム各省庁連絡会議での検討を踏まえ、情報システムの運営管理を一括して民間に委託するアウトソーシングの推進を図る。

3 建設行政情報化推進のための基盤整備
(1) 情報通信基盤の整備
ア 省内ネットワーク基盤の高度化

1. 1人1台パソコンの配備等
 地方建設局等も含め、引き続き職員1人1台のパソコン環境の整備を進めるとともに、業務形態に応じ、庁外業務のためのモバイル端末等情報機器の整備を推進する。
2. 省内LAN、建設行政WANの整備・運用
 地方建設局等を含め、引き続きLANの整備・充実を進めるとともに、本省と地方建設局等のLANを接続する建設行政WANの整備・拡充を図る。建設行政WANの運用には商用回線を利用するが、別途、災害時のバックアップ用にマイクロ回線の活用を検討する。さらに、管理用光ファイバーを活用した、建設行政WANの構築について今後検討を行う。
3. LANシステムとインターネット等との接続
 本省においては、内部LAN(1人1台パソコン)と外部接続LANの二重のLAN回線により構築された建設本省LANシステムのシステム構成を見直し、1人1台パソコンからのインターネット及び霞が関WANの利用を可能とするために、セキュリティの確保を図りつつ段階的なシステム整備を進める。
 地方建設局等においても、1人1台パソコンからのインターネットの利用を可能とするため、本省と同様にセキュリティの確保を図りつつシステム整備を進める。
4. マルチメディアへの対応等
 省内LAN及び建設行政WANについて、マルチメディア機能への対応等機能の高度化を推進する。
5. 省庁再編、本省庁舎移転等への対応
 今後予定される省庁再編、本省庁舎移転等の具体的動き等を踏まえ、全体のネットワーク整備及び省内LANシステム等に関する計画の検討を行う。

イ 行政部門を通ずるネットワーク基盤の整備

1. 行政情報通信ネットワークシステムの整備への対応
 霞が関WANの活用による、地方公共団体、特殊法人等を結ぶ汎用性の高い総合的・広域的な行政情報通信ネットワークシステム(ADMIX)の整備に対応して、地方公共団体等の霞が関WAN加入を考慮に入れた省内システムの構築を検討する。
2. 個別事業の広域ネットワーク
 個別事業の広域ネットワークについて機能の高度化を推進するとともに、建設行政WAN等との接続を検討する。

ウ 民間部門との間のネットワーク基盤の確立

 個別業務システムについて、申請・届出等手続、データ交換等のオンライン化を実現していくため、インターネット等の活用による民間部門との間のネットワーク化を検討する。
 また、公共事業支援統合情報システム(建設CALS/EC)の実現のために必要な、省内全機関における電子デ−タによる受発信体制の確立に向けて、セキュリティに配慮しつつ、1人1台パソコンからのインターネット利用環境の整備を推進する。

(2) 情報システムの開発、高度化・効率化及び運用・保守
ア システム開発時の連携・協力

 情報システムの開発に当たっては、効率的な開発と運用及び重複投資の排除等を図るため、利用者の情報システムに対するニーズを把握し、利用目的・将来の発展性を十分勘案した上、「システム開発連絡調整会議」等の場を活用し、電算情報担当部門及び関係する部署等との十分な調整を図る。また、各部局に共通するシステムの開発に当たって、遵守すべき事項等をとりまとめた「システム開発指針(案)」(平成7年7月)について、最新の技術動向により、必要に応じて見直しを行う。このほか、省内を通じて利用するデータベースシステムの開発については、標準化すべき事項について統一を進める。

イ オープンシステム化、システムの最適化の推進

 システムの円滑な相互接続、データの共有化等を図るため、システム環境整備において標準化すべき事項等をとりまとめた「建設省システム環境整備ガイドライン(案)」(平成7年7月)に基づき、引き続きオープンシステム化・システムの最適化を推進するとともに、技術動向を踏まえつつ、必要に応じて見直しを実施する。また、汎用機システムからクライアント・サーバシステムへの転換をはじめとするシステムの最適化を推進する。

ウ セキュリティの確保

 行政情報システム各省庁連絡会議において平成10年度早期に策定される「行政情報システムの安全対策指針」や、最新の技術動向を踏まえ、「建設省電子情報システムの安全対策の検討に関するガイドライン(案)」(平成5年3月)を見直すとともに、障害時における安定運用確保、侵入防止等機密情報の保護、不正利用の防止及びコンピュータ・ウィルスに対する安全保護等の情報システムに係る効果的かつ適切な安全確保策を十分に講じる。

エ コンピュータの西暦2000年問題への対応

 コンピュータの西暦2000年問題について、行政情報システムに係るプログラムの改修等により、国民生活への影響等を生じないよう的確な対応を進める。

オ 個人情報保護対策の充実

 ネットワーク化の進展等新しい情報化の進展状況を踏まえ、個人情報保護の充実強化を図る。

カ 著作権の保護

 情報システムの開発等に当たっては、プログラム等の著作権の保護について適切な措置を講じる。特に、業務委託等によって開発される情報システムのプログラム等の著作権の帰属等に関しては、契約書に明記する等十分配慮するものとする。

キ 運用・保守

 情報システムの運用に当たっては、利用マニュアル、管理マニュアル等利用支援・運用管理情報の整備を徹底し、情報システムを的確に活用できる運用体制の整備を図る。また、情報システムの保守に当たっては、日常のハードウェア・ソフトウェア管理やネットワーク管理等の保守体制を整備するとともに、緊急時における保守体制の整備を図る。

ク システム評価の実施

 情報システムの整備を適切かつ効率的に行うため、平成10年度に行政情報システム各省庁連絡会議において策定される、情報化の成果を定量的に把握し評価するための指標等を活用するとともに、評価体制を充実する。さらに、定期的にシステム評価を実施し、その結果をシステムの改良に反映する。

ケ 情報化の進展に対応した執務環境の整備

 引き続き施設のインテリジェント化を進めるとともに、文書の重複保有の解消等による執務スペースの確保等情報化の進展に対応した執務環境の整備を推進する。

(3) 標準化の推進
ア ネットワークの標準化

 建設省の情報通信ネットワークの構築・高度化においては、国際的な情報通信ネットワーク(インタ−ネット等)に準拠し、標準的な通信プロトコルであるインターネット・プロトコル(TCP/IP)を引き続き採用する。また、電子稟議決裁システムや認証等のシステムで必要となる、上位プロトコルのX.509等の利用の可能性についても検討する。

イ 電子文書等の標準化

 行政情報システム各省庁連絡会議専門部会にて策定される省庁間電子文書交換システム等で利用するための公文書の文書型定義(DTD)等への対応可能なソフトウェアの導入等を段階的に推進する。また、省内における標準化すべき文書の文書型定義(DTD)について検討を進め、文書構造形式に係る国際的な標準であるSGML等をベースとした電子行政文書の構造等の標準化を推進する。

ウ その他

1. 地理情報システム(GIS)のデータ様式の標準化等の促進
 ISO(国際標準化機構)で行われている地理情報の標準化の検討を踏まえつつ、官民連帯共同研究において、GIS間における空間データの交換に要する手間を軽減するための交換標準及び空間データの作成標準の研究を進めるとともに、その成果をGIS関係省庁連絡会議に提案していく。
2. 公共事業支援統合情報システム(建設CALS/EC)における標準化等
 建設CALS/EC構築に向け、公共事業の受発注者間等においてやり取りされる工事関係書類等のうち、図面のCAD化について、CADデ−タの交換ルール、CAD製図基準等の検討を行う。また、建設CALS/ECにより電子化される文書(報告書、施工計画書等)の標準化を推進する。さらに、公共事業において用いられる各種コードの標準化について検討する。

(4) その他情報化を推進するための基盤整備
ア 省内の行政情報化推進体制の強化

イ 人的基盤の強化

1. 職員の情報活用能力の向上
 職員の情報活用能力、いわゆる情報リテラシーの向上を図る観点から、管理職等への個別講習の実施等、情報システム関連の講習会、建設大学校で実施している研修等の一層の充実を図るとともに、ヘルプデスク(パソコンの操作方法等の問い合わせに個別に応じる外部スタッフ)の設置等を検討する。
2. 要員の養成・確保
 建設大学校ほか、各部局で実施している研修の充実を図るとともに、総務庁等外部で実施している研修等の積極的な活用により、情報化をリードする中核的な人材の養成・確保に努め、全体的な情報処理能力の底上げを目指す。
3. 民間技術者の活用
 LANシステムの開発、拡充、運用等に当たっては、限られた人材を有効に活用するとともに、コンサルタント、システムインテグレーション(SI)等の外部リソース(人材)の活用を図る。

ウ 予算の計画的・効率的な執行

 本計画の推進に当たっては、計画的かつ効率的な情報化投資の実現に努めるものとする。

(5)共通課題の解決
ア 各省庁の共通課題への対応

イ 省内の共通課題
(ア) ハード面

1. ネットワーク回線容量

 民間部門とのネットワーク化(インタ−ネットの利用)、情報の共有、公共事業支援統合情報システム(建設CALS/EC)の実現などに十分に対応可能なネットワークの回線容量を確保するため、インタ−ネットの回線容量を計画的に拡大する。 建設行政WANについては、部局間の情報共有、データ交換に必要な回線容量について計画的に拡大する。
2. サーバー、クライアント等
 民間部門との情報共有・デ−タ交換、公共事業支援統合情報システム(建設CALS/EC)の実現、建設省内のデ−タの共有、インタ−ネットメールの利用等に十分対応可能な性能(記憶容量、処理速度、安定性等)を有するサ−バー等、ネットワークの基幹を成す電子情報機器の整備及び更新を計画的に推進する。
 また、省庁再編、庁舎移転等の動向を踏まえつつ、最適なLAN環境を整備・維持できるよう、クライアントの更新又は機能向上を計画的に推進するとともに、必要な場所で必要な機能・性能を有する機器(クライアント)が配備されるような、機器の再配置及び更新についても検討を進める。

(イ) ソフト面

1. 基本ソフト(OS)、アプリケーションソフト等
 省内におけるデ−タの交換・共有等及び民間部門等との文書交換のため、SGML等の文書の標準化の動向及び民間部門で標準的に利用されているソフト等の動向を踏まえつつ、建設省内で利用する基本ソフト(OS)やアプリケーションソフトの統一を推進する。
 なお、基本ソフト(OS)やアプリケーションソフトなどの最新バージョンの利用について、民間部門とのデ−タ交換等のための可用性、クライアントの更新等を踏まえ、検討を進める。また、省内において、デ−タ交換等に支障が生じないよう、一定の基準を設ける等の運用面についても検討を進める。
2. IPアドレス体系の再構築
 建設省内アドレス空間とインタ−ネットアドレス空間の重複を防ぐため、「建設省LAN/WANアドレス標準」(平成10年3月)に基づき、ネットワークを再構築し、インターネットの利用を促進する。

第3 個別課題及び施策
1 社会との接点の情報化のためのシステムの整備

 建設行政サービスの質的向上を目的とした、社会との接点の情報化のためのシステムについて、次の方針のもとに、システムの開発、改良を推進する。

(1) 公共事業支援統合情報システム(建設CALS/EC)

 「公共事業支援統合情報システム(建設CALS/EC)」は、公共事業の計画、設計、工事及び管理の各段階で発生する各種情報(文書、図面、表など)の標準化、電子化を行い、そのやり取りや保管をネットワーク、データベース等を活用して行うことにより受発注者間(及び発注者内部)の効率的な情報共有・活用を図ることを目的としている。
 今後は、「公共事業支援統合情報システム研究会」が策定した「建設CALS整備基本構想」(平成8年4月)や「建設CALS/ECアクションプログラム」(平成9年6月)に基づき、平成16年度(2004年度)の本格運用に向けたシステム及び体制の整備を実施するとともに、地方建設局の全事務所を対象とした実証フィールド実験を積極的に推進する。

(2) 地理情報システム(GIS)

 「地理情報システム(GIS)」は、地図を媒介にした様々な情報を総合化するコンピュータシステムであり、建設省においては、各部局におけるデータや各種計画への利用、施設管理及び防災システム等のシステムに利用することによって、建設事業における業務の合理化、効率化を図ることを目的としている。
 今後は、各部局の業務に関連したデータ作成、システム開発等についての検討を行う。

(3) 道路管理データベースシステム(MICHI)

 「道路管理データベースシステム」は、道路管理業務の高度化、効率化を図るために、必要な情報を収集し、それを効果的に活用することにより、道路管理行政への支援、道路利用者への情報提供、研究や技術開発への支援を行うことを目的としている。
 今後は、引き続きデータベースの整備を推進するとともに、道路管理業務等への活用を図る。

(4) 道路管理システム(ROADIS)

 「道路管理システム」は、占用許可申請業務、道路工事調整業務、道路占用物件情報(道路及び占用物件の位置、状況等)を最新のコンピュータマッピング技術を利用して総合的に管理し、通信回線等を通じて道路管理者や公益事業者に提供し、諸業務の支援を行うことを目的としている。
 今後は、引き続きデータの整備、申請手続の電子化及び未導入の政令指定都市への展開を推進する。

2 入札・契約手続をはじめとする建設行政内部の情報化のためのシステムの整備

 公共事業をはじめとする建設行政の効率化・透明性を確保するため、入札・契約手続をはじめとする建設行政内部の情報化のためのシステムについて、次の方針のもとに、システムの開発、改良を推進する。

(1) 建設事業予算執行管理システム(CAMS)

 「建設事業予算執行管理システム」は、建設事業予算の執行管理を合理化・効率化し、予算執行に係る情報を迅速に処理するとともに、これらの情報を必要部門に的確に提供することを目的としている。
 今後は、情報処理技術の進展等に対応したCAMSシステムのあり方について検討を行う。

(2) 新土木工事積算システム

 「新土木工事積算システム」は、近年のコンピュータ技術を活用しつつ、工事工種の体系化等を推進し、積算業務の合理化・効率化を図ることを目的として、分散処理方式によるシステム開発を行っており、汎用工種については開発を完了している。
 今後は、対象工種の拡充を図るとともに、計画的に将来性及び拡張性等に優れたシステムへ移行する。また、各積算結果のデータベース化(類似工事の積算デ−タの利用、歩掛かり・単価の共有等)や数量計算結果と積算システムの連携について検討する。

(3) 営繕積算システム(RIBC)

 「営繕積算システム」は、公共建築物の発注機関における積算業務の合理化、省力化及び積算体系の統一を促進し、ソフトウェアの共同開発と共同利用を推進することを目的としている。現在、パソコン上で「営繕積算システム等利用協議会」(建設省、都道府県及び政令指定都市で構成)の会員が共通的に使用する部分については開発を完了している。
 今後は、操作性の向上と積算体系の統一化・標準化を図り、将来性、拡張性等に優れたシステムの高度化を図る。

(4) 工事実績情報サービス(CORINS)

 「工事実績情報サービス」は、建設業者に関する工事実績情報、技術者情報等のデータベースを整備・活用することにより、一般競争入札方式等の入札・契約手続きを支援することを目的としている。
 今後とも、発注者の協力を得て、他のデータベースとも連携を図りつつ、本システムの整備を進めるとともに、普及・活用を図る。

(5) 測量調査設計業務実績情報サービス(TECRIS)

 「測量調査設計業務実績情報サービス」は、建設コンサルタント等に関する業務実績情報、技術者情報等の客観的なデータベースを整備・活用することにより、プロポーザル方式等の入札・契約手続きを支援することを目的としている。
 今後とも、発注者の協力を得て、他のデータベースとも連携を図りつつ、本システムの整備を進めるとともに、普及・活用を図る。

(6) 公共建築設計者情報システム(PUBDIS)

 「公共建築設計者情報システム」は、建設コンサルタント等の業務実績、技術者情報等のデータベースを用いて、公共建築物の設計業務受託者の公正かつ客観的な選定の支援を行うことを目的としている。
 今後とも、本システムの整備・拡充を引き続き進めていくとともに、普及・活用を図る。

(7) 業者選定・契約・検査管理システム(CCMS)

 「業者選定・契約・検査管理システム」は、地方建設局における工事、コンサルタント関係の契約関連業務を常時管理し、業務を適切かつ迅速に処理することを目的としている。
 今後は、様々な角度からより詳細な情報を得られ、かつ、複数の検索項目に対応できるよう、システムの高度化を図る。

(8) 発注者支援のためのデータベース・システム

 「発注者支援のためのデータベース・システム」は、公共工事の発注機関が必要とする建設業者に関する各種情報を一体的に提供することにより、建設工事の入札・契約・施工の適正化を図ることを目的としている。
 今後とも、本システムの整備・拡充を進めるとともに、普及・活用を図る。

(9) 新技術情報提供システム

 「新技術情報提供システム」は、建設分野を取り巻く諸課題の解決に向け、民間等で開発された新技術の情報を収集し、全地方建設局で共有することにより、優れた新技術を公共事業で積極的かつ円滑に活用することを目的としている。
 平成10年度には建設行政WANにより、地方建設局の事業に関わる新技術の情報提供サービスを開始する。今後は、地方公共団体、関係公団等にも情報の提供の可能性について検討する。

(10)図書館総合管理システム

 「図書館総合管理システム」は、貸出、返却等利用者手続の簡略化を図り、併せて図書館業務の合理化、効率化を図ることを目的としている。
 今後は、新旧のデ−タを調整、整理し、統一性を図ると共に、未入力分の図書情報について順次入力を行い、デ−タの整備を図る。

3 防災に関する施策

 情報通信手段を活用し、防災業務の効率化、的確化などを推進するため、次のような施策を講ずる。

(1) 情報収集・通信基盤の強化

 防災情報を迅速かつ的確に収集・伝達するため、情報収集・通信基盤の強化及び高度化を図る。
 建設省主要幹線無線回線のデジタル化、二重ルート化及び移動通信システムの整備等を推進するとともに、所管施設の監視用カメラの画像等の情報を迅速に伝達するため、光ファイバーを導入するなど通信基盤の強化を図る。また、発災後初期から広域的に状況把握が可能となるようリモートセンシング、ヘリコプター等による画像収集体制を確立するとともに、その映像を本省、地方建設局等への伝送が可能となるよう画像受信基地局、衛星通信車の整備を推進する。

(2) 防災業務の情報化

 防災活動の迅速化・高度化を図るため、防災業務の情報化(情報の収集・分析・提供のシステム化等)の方策について検討する。
 今後、災害発生時の対応を含めた道路情報の収集、分析、提供等を行う道路災害情報システムの整備や、洪水時等の適切な水防活動、住民の迅速な警戒避難活動等に役立てるため、河川情報システムの高度化を図るとともに、地震時に迅速に対応するため地震計等ネットワークの整備を図り情報の充実に努める。また、大規模災害時に、防災情報を迅速かつ的確に収集・分析・提示できる情報システム等の設備を備えた建設省防災センターの整備を推進する。

(3) 防災関係機関との情報の連携

 防災情報の重要性に鑑み、関係省庁、地方公共団体、ライフライン事業者等防災関係機関の情報化の状況を考慮し、防災関係機関との迅速かつ的確な情報の連携方策について検討する。

(4) 一般住民等への情報の提供

 洪水、土砂災害等災害時における迅速な警戒・避難活動等に資するため、報道機関や一般住民等への情報提供システムの検討を行う。

第4 各部局における行政の情報化の推進に関する計画

 各部局は、この計画を踏まえるとともに、部局における情報化の状況を勘案して、部局における情報化の推進に関する計画を策定するものとする。
 各部局は、毎年度、上記計画の進ちょく状況を把握するものとする。

第5 その他
(1) 計画の見直し等

 情報政策推進委員会は、計画の進ちょく状況、技術の進展、共通実施計画の変更等を踏まえ、必要に応じて、計画の見直し等の措置をとるものとする。
 なお、省庁再編、庁舎移転計画等の具体化に伴い、計画の見直し等の措置を講ずるものとする。

(2) その他

 この計画を円滑かつ着実に遂行し、建設行政の情報化を一層推進するため、必要に応じて、建設省電子情報システム管理運営規程の改正等所要の措置を講ずるものとする。