地域づくりの活性化のポイントはどこに? 今回は、平成18年度の「手作り郷土賞(地域整備部門)」を受賞した「まごの店」オープンへの立役者である三重県・多気町役場企画調整課の岸川政之さん、そして実際に運営に関わる相可高校食物調理科の船谷光成君にお話を伺いました。
― 町の財産は、農産物と高校生たち ―
三重県のほぼ中央に位置し、農業を中心に栄えた多気町ですが、同町ならではの特色づくりは大きな課題でした。そこで多気町役場に勤める岸川政之さんは、まずは主産業である農業の活性化からと、土着菌の培養や生ゴミを利用した堆肥づくり(のちに多気有機農業研究会として組織化)などに農家の方々と取り組んでいました。
伊勢いもや柿、みかんなど農産物は豊富、でもPRが足りない。そこで試食会も兼ねたイベントを開催しました。その席で岸川さんは驚いたそうです。
「試食用の料理を地元相可高校食物調理科の生徒たちにお願いしたところ、レベルの高い料理がずらり!もちろんイベントは大成功。私は一瞬で彼らのファンになったんです」
― おばあちゃんの店とまごの店 ―
高校生や彼らを指導する先生の姿に心を動かされた岸川さんは、彼らのパワーと農作物で町おこしができると確信。地元の農産物を使い高校生が運営するレストランをつくったら、町おこしにつながるだけでなく、若い世代を応援することにもなる。行政も支援を惜しみませんでした。
店舗建設地に選ばれたのは、五桂池(ごかつらいけ)ふるさと村です。当時人口わずか1万人ほどの同町にありながら年間35万人もの来場者があり、敷地内にある農産物直売所「おばあちゃんの店」での売り上げも安定していました。ですが、民間施設で高校生が店を持つという前例のない試みは、すぐには承諾されません。そこで高校生たちは、夏休みにふるさと村でアルバイトをしながら熱意をアピール。その頑張りが評価され、平成14年10月には「おばあちゃんの店」の前に、うどんや田楽を販売する屋台「まご(=孫)の店」が誕生しました。
― 全国初、高校生主体のレストラン ―
さまざまな料理コンクールでの優勝者も多く、生徒たちの腕は確か。評判もいい。もっと本格的な料理にもチャレンジさせたいと、平成17年に現在の店舗「まごの店」オープンに踏み切りました。平成15年6月に「目指せスペシャリスト事業」(文部科学省)の指定校に選ばれたことも追い風となり、地域が一丸となったのです。
またこの店は、「料理人を目指す高校生たちの夢を、建築家を目指す高校生が形にする」をテーマに県内の建築学科に通う高校生による設計コンペを開催し、最優秀作品を建設したもの。オープンキッチンにし、頑張る高校生たちの姿をお客様にも見てもらえるようにしました。より多くの人に利用してほしいと、店内はすべてバリアフリーです。
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まごの店の外観。壁には地元の小学生たちが描いた壁画が彩る |
営業日にはお客様がひっきりなし。ランチだけで200〜250食ほど出るそう |
さらに、店の営業から材料の仕入れ、コスト管理まですべて高校生が行います。食材はなるべく「おばあちゃんの店」から仕入れ、店から出た生ゴミは多気有機農業研究会に引き取ってもらい堆肥化。その堆肥を利用しながら、農家は農作物を育てる……と、地域循環への配慮もなされています。
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多気有機農業研究会のメンバー。まごの店を影で支える |
― 地域と高校生が共に未来を歩む ―
料理の味だけでなく、高校生らしいきびきびとした接客態度が評判を呼び、授業のない土・日・祝日、春夏冬休みなどをを中心とした営業日には、お客様が絶えません。運営に関わる3学年60人ほどの高校生たちはほとんど休みなしなしで活動しています。部長の船谷光成君に話を聞きました。
「店を任せてもらえて嬉しい。普通の高校生ではできないことを体験させてもらって、やりがいがありますが、とにかく寝る暇もないくらいハードです。でも、ニコニコ帰って行くお客様の笑顔を見ると、自分たちまで嬉しい気分になりますね」
未来を夢見て頑張る彼らの姿に、地域の未来を重ねた同町。相乗効果で活性化されていった町には、今日もさわやかな風が吹いています。
※豊富なメニューなど「まごの店」の情報がHPで見られます。 http://jr2uat.net/mago/mago.htm
※五桂池ふるさと村 http://www.furusatomura.taki.mie.jp/
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