宇治地域の複数事業所における従業員への情報提供
(京都府宇治市)
 
背景
 宇治市中心部の宇治地域においては、多くの事業所や市役所、商業施設など都市機能が集中していることから、 通勤時間帯を中心に主要交差点(宇治橋西詰、宇治壱番、琵琶台口など)で渋滞が発生しています。 また、この地域は鉄道やバスなどの公共交通機関が比較的充実しているにもかかわらず、自動車通勤が多く見られます。 そこで、集中する通勤自動車の総量を減らし交通渋滞の緩和と公共交通の利用促進のために、商工会議所や地域に立地する事業所と行政、 交通事業者などが連携し、宇治地域通勤交通社会実験「かしこいクルマの使い方を考えるプロジェクト宇治2005」を実施しました。



 
内容
自動車通勤者の交通行動の転換を促すために、事業所の協力のもと、宇治地域に立地する事業所の全従業員約4300人に、 「通勤交通について尋ねるアンケート」「公共交通の地図」「クルマの使い方を考えるパンフレット」の3種類のツールを配布しました。

通勤交通について尋ねるアンケート

 問1や問2で、「現在の通勤手段」や「出勤時間」といった現在の通勤実態を答えてもらうと共に、問4や問5で「自宅から自転車やバイクで通勤できるかどうか」を答えてもらい、さらに問6で、同封した公共交通の地図(通勤マップ)を見ながら「もし電車やバスで通勤するとしたら、 どのように通勤するか」を考えてもらい、問8で「クルマを使わない通勤」の具体的な方法を書いてもらうことで、情報提供の資料を確実に読んでもらうと共に、 「クルマを使わない通勤」について考えてもらうきっかけを作りました。

公共交通の地図

 A3・表裏サイズの紙に、職場周辺の電車・バスの路線図や時刻表を示した地図を配布しました。

クルマの使い方を考えるパンフレット

「クルマと環境問題」「クルマ利用と健康」「渋滞の科学」等、クルマ利用のネガティブな側面を示した上で、クルマ以外での通勤を促すパンフレットを配布しました。   1分程度の短時間で読めるよう配慮されています。

実際に用いたアンケート調査

アンケート・質問内容

問1 現在、どの交通機関で通勤しているか?
(「ここ1週間」で何日ずつ「自動車」「電車・バス」「それ以外」を利用したか数字を記入)
問2 普段の通勤の出発・到着時間は?
問3 クルマ通勤に対する意識
 ・環境意識
  (クルマでの通勤は、あまり環境によくないと思いますか?)
 ・健康意識
   (クルマでの通勤は、あまり健康によくないと思いますか?)
 ・個人規範
  (クルマ通勤は、できることなら控えた方が良いと思いますか?)
 ・行動意図
  (クルマ通勤を、できるだけ控えてみようと思いますか?)
問4 自宅から自転車で、通勤しようと思えばできると思いますか?
問5 自宅からバイクで、通勤しようと思えばできると思いますか?
問6 (はじめに「宇治地域通勤マップ」の通読を要請した上で、)
・電車・バスで通勤しようと思えばできると思いますか?    
・電車・バスで通勤する場合の、職場の最寄りの駅・バス停は?    
・その駅・バス停と職場の間はどのように移動しますか?
問7 (通勤にクルマを少しでも使っている人に)
・普段、職場に到着するのは、8時〜8時半の間ですか?
・一部のクルマが、出発時間をずらすだけでも、渋滞は大きく緩和することが知られています. 出発時刻を変えることは、可能だと思いますか?
・出発時刻を変えるとしたら、何時頃、職場に着くように、何時頃に、自宅を出ようと思いますか?
問8 (通勤にクルマを少しでも使っている人に、動機付け冊子の通読を要請した上で、)  
・クルマ以外で通勤するとしたら、何を使いますか?  
・どのような経路で通勤しますか?
問9 業所名・所属名・名前・地域の公共交通に対する意見


宇治地域における取り組みで配布した公共交通マップ(表面)

宇治地域における取り組みで配布した公共交通マップ(裏面)
 
結果
・全体の68.8%にあたる3002人からアンケートを回収しました。
・従業員の「クルマは環境に良くない」「クルマは健康に良くない」「クルマ通勤を控えようと思う」という意識に変化が見られました。
・通勤時間帯の近隣鉄道駅の利用者が29%増加し、バス乗客が23%増加しました。
・中心部へ向かう(北行方向)乗用車の交通量が25%減少するとともに、通勤時間帯の渋滞長が短くなりました。
鉄道利用者数の変化
 
渋滞長の変化(青色矢印の交差点で減少)
      
 
出典
・京都府ホームページ(http://www.pref.kyoto.jp
・宇治地域における職場TFPとその効果〜宇治地域通勤交通社会実験〜
(第1回日本モビリティ・マネジメント会議)(http://www.plan.cv.titech.ac.jp/fujiilab/jcomm/pdf_file1/OK-28.pdf