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知恵の学び舎
この時代のコミュニケーションスキルについて
残間里江子氏 写真

講師: 残間里江子氏(プロデューサー/コミュニケーション・プランナー)

「伝えたい中身について」

■実質的かどうか


  これまでは飾り立てた夢物語や絵空事でも、それが包装紙で奇麗に包まれていれば中身はさほど精査されていなくても良かった。しかし、現代ではコンセプトが本質を捉えているかどうか、それが本当に必要かどうかということが重要だ。
  開発神話や大量増大神話は、「実質的」ということにはならない。実質的かどうかということには、事業の「プロセス」が重要になる。プロセスが開示され、そこに誰がどう関わってきたがはっきり分かることが大切だ。テレビ番組「プロジェクトX」が流行していることからも分かるが、必ずしも著名な人がそこに関わっているということではなく、たとえ無名な人であっても、その人がその事業に関わったという証が見えることが重要だ。これまでは結果だけが見られる時代だったが、今は「最初に言いだしたのは誰だったのか」ということが重要になっている。

■対価に見合うかどうか

  現代人はお金に対して、「理に適い、筋の通ったお金」ということを重要視する。少し前のように、いたずらに大金を使うのは恥ずかしいと考えている傾向がある。つまり、自分にとって「要るものは高価でも買い、不要なものは安くても買わない」という時代だ。例えば、クローゼットには高価な服や安い服が混在している。「生き金」と「死に金」の両方が区別され、メリハリがついてきていることを考えなくてはならない。

■安全・安心が視野に入っているか

  住宅や路上での犯罪件数が増え、犯人の検挙率も低下している。こうしたことから、人々は防災だけではなく「防犯」の話題にも関心が高い。
  また、100歳以上の人が1万人を超える長寿時代となった。長く生きたいと願っている人は生き方、暮らし方、食べ方をコントロールする。このことは、健康不安は増大しており、人々の健康や体内環境への関心が高くなっていると言える。

■「公」への貢献

 最近は、「自分は富んでいる」「幸せである」と言っている人は恥ずかしい人だと思われる。「公」に貢献することで、「いい人になりたい」「いい人に見られたい」と考える人が多くなった。これはNPOやボランティア活動が盛んになってきたことからも分かる。人々の「いい人になりたい」という欲求を上手く刺激し、「公」の事柄に貢献するように道筋をつけられると良い。
  これからは「官」と「民」との関係ではなく、「公」と「私」という関係が大切だ。

■挑戦的かどうか

 フジフィルムのCFに、デーモン木暮の起用という意外なキャスティングで話題になったものがある。このCFはフジフィルムの宣伝部に「絶対にこれでやりたい」と言う若い人がいたから実現した。つまり、マイノリティーの意見を言える人がいたから実現した。
  異論と異端、異なることをする勇気が大切だ。「異なったこと」は「新しいこと」とは違う。「what's new」ではなく、現代では「what's different」ということが重要だ。異なったことを実現させるには「情熱」が必要で、仮説でも盲信でも、何かを信じて突き進む勇気を持つことが必要だ。
  それから、役所の人は、主観を排除して冷静に物事を伝えることが多いけれど、主観を排除した話し方は、冷たく感じられることもある。主観を排除しない話し方は、チャレンジングということに繋がる。

伝える際のテクニカルスキル。どんな人が伝わりやすいのか。

■人柄

 スポークスマンとしては、「傲慢」「不遜」「プライドが高い」ということは致命的。スポークスマンにはナルシストが向いていると言う意見がある。確かにナルシストは、自分の良いところを知っていて、それを活かせるという意味では向いている。
  人はどこかで勧善懲悪が好きだ。だから、物事を「善玉」「悪玉」の構造で見ることが多い。例えば、テレビ出演時に、キャスターの誘導に絵に描いたように乗せられてしまう人がいる。しかし、感情のコントロールが出来ない人は伝え手には向かない。人々は「事実」ではなく「事件」を待っている。怒るということは、それだけで事件になってしまう。

■笑顔・ユーモア

  笑顔は最大の武器になる。アメリカでは政府の高官、NPOの幹部、ジャーナリストには年齢の高い女性が多い。だから男性がコミュニケーションスキルを磨く際には、徹底的に笑顔の訓練をする。例えば、一つのパラダイムが終わった時に、ちょっと間を置いてニコッと笑う。そうした訓練をする。
  ユーモアも大切。日本人は、ダジャレとジョークを間違えている人が多い。江戸時代には、より下らないダジャレの方が価値を持っていたらしいけれども、ただ笑いを引き起こせばいいということではない。センスが大切だ。

■“見てくれ”

  現代は映像時代。ハンサムである必要はないが、テレジェニック、テレビ映りがいいということは大切だ。
  テレビ映像は、素人の「素」の部分を映し出す。ついキャスターの挑発に乗せられることがあるけれども、いきり立つことなく黙っていても、テレビは自分の素の姿を映していると思った方が良い。それから、現代人は、映像の洗礼を受けている。視聴者は、チラッと映ったノイズ的、サブ的な映像によりインパクトを受ける。自分が話をしている時はもちろんだが、他の人が話している時にもきちんとした態度でいることが大切だ。他人の話を、不遜な態度で聞いている映像がチラッとでも流れると、視聴者は話している時の様子よりも、そちらの映像によりインパクトを受ける。

■短いセンテンスでまとめる

  テレビでの発言は、数秒から数十秒に切られて放送される。だから、あまりズルズルと話さずに、一つ一つの発言の塊「サウンド・バイト」に分けて明確、明瞭にセンテンスを細かく切って話すことが重要だ。
  また、話す時に図表はなるべく見せない方が良い。ただ、扇大臣がテレビ出演時に手書きの図表を使ったのは、伝えるという意味では良かったと思う。
  また、数字を羅列するのも良くない。しかし、インパクトのある数字、シンボリックな数字を使うことは重要だ。例えば、離婚率を伝える時に「1年で60万人が離婚する」と言うと、少しは印象に残る。

■いきさつは語らない

  役所の人は、論理的で起承転結がしっかりとした話をする傾向がある。しかし、人に話す時は、まず結論から話すことが大切だ。人々は「いま何が起きているのか」に関心があり、それを知りたがっている。いきさつには退屈してしまい、話を聞いてくれない。

■情熱的に話す

  紙を見ながら読んではいけない。アメリカの要人には、有能なスピーチ・ライターがいる。彼らはライターが書いたことを見ながら読むこともあるが、演じ手としても優秀なので、うまくこなすことができる。
  アメリカには政治家の必読書と呼ばれる本がある。そこには「情熱的」「具体的」「正確」「豊富なエピソード」「冷静さ」と5つの事柄が書かれているが、1番大切なことは「情熱的」だということ。
  それから相当な達人でもない限り、情緒的表現や詩歌の引用は、陳腐に終わることが多いので、やめた方が無難。

■沈黙、空白の演出

  質問に当意即妙に答える姿を見ていると、あらかじめ答えが用意されているのではないかと思うことがある。ある芸能人のインタビューに立ち会って感心したことがある。その芸能人は質問をされて答えるのに、10秒くらい沈黙して間を作った。質問した人は、その沈黙によって何か悪いことを聞いてしてしまったのではないかと緊張する。「無の状態」を作ると、相手を緊張させることができる。話に調子や緩急をつけることは重要な演出になる。

■ボディ・コピーの時代

  バブルの頃は、キャッチ・コピー、ヘッド・コピーが重要で、15秒で伝わらないものは駄目だと言われていた。しかしそれは、情報の受け手が成熟していない時代の方法だと思う。現代は、例え15時間かかっても丁寧な説明が求められる「ボディ・コピー」の時代。だからこそ、どうやって退屈させずに伝えるのかを考えることが大切だ。

■プレス・リリースは個人宛てに出す

  メディア向けのプレス・リリースは、「個人宛て」で出す。さらに、その書面には手書きで1,2行の文を添えると良い。
  お詫びは偉くない人が5人で行くよりも、偉い人が1人で行った方が良い。職制上、上の人が行くことは、責任を感じていることが相手により伝わる。
  それから「お礼状」は、自分が手書きで書くことが大切だと思う。

■電話上手になる

  物事は大抵、電話から始まる。アメリカでは見知らぬ人に電話をかけることを「コールド・コーリング」という。コールド・コーリングでは、相手の警戒心を解いて、腹を割って話すことが大切だ。電話は、相手の顔が見えないコミュニケーション。だからこそ、自分の一番好きな人に電話をかけるように対応することが大切だ。

■言われ無き誤解はその都度解いておく

  マスコミの側から見ると、何のクレームも言ってこないところは叩きやすい。言われ無き誤解はその都度解いておくことが重要だ。役所の人たちは「マスコミの人たちは、あら探しばかりする」と言って諦めないことが大切だ。メディアの人たちは、意外とクレームに弱い。クレームは担当者宛で書くと握りつぶされることが多いので、社長宛てに書くことが大切。社長宛ての手紙は、社長室などがきちんと対応することになっている。

■小さな努力を馬鹿にしない

  人と知り合いになれば、その人の部署が変わってもその緑を大事にすることが大切だと思う。その人にきちんと対応していると、何かの機会に繋がる。小さな縁でも大切にして欲しい。

国土交通省技術調査課