−記者発表資料−                    平成13年8月21日

国 土 交 通 省


国土交通省公共工事コスト縮減対策に関する新行動計画の
平成12年度の実施状況について

 平成12年9月に公共工事コスト縮減対策関係閣僚会議において、平成12年

度以降の政府の新たな「公共工事コスト縮減対策に関する新行動指針」が策定

され、国土交通省においても平成13年3月に新行動指針を踏まえた「公共工

事コスト縮減対策に関する新行動計画」を策定しました。
   新行動指針では、「実施状況については、具体的施策の着実な推進を図る観

点から、適切にフォローアップし、その結果を公表する。」こととしており、

今回、平成12年度の実施状況をとりまとめ、報告するものです。
 

1.これまでの経緯

   公共工事コスト縮減対策については、平成9年4月4日に策定された「公共工事

コスト縮減対策に関する行動指針」に基づき、同行動指針の対象期間である平成9

年度から11年度までの3年間、各省庁が一致協力して施策を推進し、一定の成果

を得てきました。

   しかしながら、依然として、厳しい財政事情の下で引き続き社会資本整備を着実

に進めていくことが要請されており、また、これまで実施してきたコスト縮減施策

の定着を図ることや新たなコスト縮減施策を進めていくことが重要な課題となって

います。よって、これまでの取り組みにおける課題も踏まえ、平成12年9月1日

に公共工事コスト縮減対策関係閣僚会議において、平成12年度以降の新たな「公

共工事コスト縮減対策に関する新行動指針」が策定され、これを踏まえ公共工事担

当省庁において新行動計画を策定しました。

   さらに、平成13年1月6日の省庁再編に伴い、運輸省、建設省及び北海道開発

庁において策定した新行動計画を統合し、平成13年3月30日に国土交通省におけ

るコスト縮減のための具体的施策を盛り込んだ新行動計画を策定しました。

     平成9年1月17日  公共工事コスト縮減対策関係閣僚会議設置

     平成9年4月4日  関係閣僚会議において行動指針を決定

              〜 行動指針を踏まえ、公共工事担当省庁16省庁が行動

計画を策定

     平成10年4月24日  平成9年度の成果を発表

     平成11年4月27日  平成10年度の成果を発表

     平成12年9月1日  平成9年度から11年度の取り組みの成果を発表

               関係閣僚会議において新行動指針を決定

             〜 新行動指針を踏まえ、公共工事担当省庁16省庁が新

行動計画を策定

     平成13年3月30日  国土交通省における新行動計画を策定

     平成13年8月21日  平成12年度の成果を発表

2.公共工事コスト縮減の取り組みの成果

(1)公共工事コスト縮減実績のフォローアップ方法

   ・公共工事コスト縮減対策関係省庁連絡会議において、コスト縮減実績の平成12

年度のフォローアップ方法を作成し、全府省を通じて共通的な考え方のもとで

フォローアップを実施しています。

(2)平成12年度コスト縮減実績

   1)各施策の実施状況

    総合的なコスト縮減の視点に立って様々な施策を実施しました。

(詳細は別紙−1)

   ・国土交通省  30施策308項目(政府の項目をより具体化し実施)

   ・政府全体   30施策194項目

   2)工事コストの低減(以下、詳細は別紙−2)

    〜平成12年度の工事コストは平成8年度と比較して、国土交通省・関係公団等

合計で10.5%、政府全体(全府省・全公団等)で10.2%の低減となりました

    国土交通省・関係公団等の平成12年度実績

     ・平成12年度縮減率  10.5%  ・平成12年度縮減額  6,131億円

    全府省・全公団等の平成12年度実績

     ・平成12年度縮減率  10.2%  ・平成12年度縮減額  7,276億円

    注)コスト縮減実績は、全省庁が共通の考え方で算定作業を実施しており、平成8年度に

      おける標準的な公共工事のコストと比較しています。

    ・なお、これらの縮減額は、行動指針の本来の目的に準拠し、社会資本整備の

     推進に充当し、公共事業全体の進捗を図っています。

<実施内容>

   計画手法の見直し(施策番号@)

    ・港湾・漁港事業等と連携し、効率的かつ経済的な海岸侵食対策事業を実施す

    る「渚の創生事業」を平成9年度に創設(平成13年度より制度拡充)し、平

    成12年度においても引き続き実施。皆生海岸において公共マリーナ浚渫土

    砂を利用した養浜を実施し、工事コストで約18%(17百万円)を低減。

    ・近隣市町村において、下水汚泥の移動脱水車の共有又は中核となる下水処理

    場に共同の汚泥処理を設けたり、監視設備や水質試験施設を中核処理場に設

    置し各処理場の水質試験や運転監視を集約して行う等、下水施設の共通化・

    共同化を図り、工事コストを約10%低減。(日本下水道事業団)

・工事用道路としての現道拡幅工事において、拡幅部を従来のコンクリート擁

 壁構造から鋼桟橋形式に変更することにより、コンクリート量の削減等の結

 果、従来と比較して65%の工事コストを低減。(水資源開発公団)

   設計手法の見直し(施策番号B)

・従来の鋼鈑桁に比べ、主桁本数を減らし、さらに場所打ちRC床版に代えて

 プレキャストPC床版とすることにより、約20%の工事コストの低減、約40%

の現場工期の短縮が図られた。

・PC合成桁橋で計画されていたものを主桁を少本数としたPCコンポ橋(P

C合成T桁橋)を採用することにより、約10%の工事コストの低減と約13%の

工期の短縮(約400日→約350日)が図られた。

・ひとつの橋梁で鋼部材とコンクリート部材を接合する混合橋を採用し、上部

 工・下部工・基礎工の総工事費がPRC構造に比べ約20%(2.5億円)の縮減。

・既存構造物の免震化を図る工事(免震レトロフィット)において、免震装置

     の架台を鉄筋コンクリート構造から鉄筋鉄骨コンクリート構造にすることに

より、コンクリートおよび鉄筋量、残土処分等の費用が削減され、従来に比

 べ約13.7%の工事コストを低減。

・耐震強化岸壁にS.G.M工法(セメント系固化材を用い気泡・発砲ビーズ等を

混合)を用いることにより、背後地の土砂に近隣工事からの発生土を再利用

することができ、土砂購入費を9%低減。

・タイルの接着面に凹凸を設け、タイルの接着を強固にする専用シートを用い

 るMCR(モルタル・コンクリートリベット・バック)工法をRC造灯台の外壁タイル張り工の

 仕様として一般化し、施工の確実化及び簡便化を図った結果、0.8%の工事コ

 ストを低減(0.11百万円/箇所、H12年度2箇所)。

・船舶気象通報運用卓の機器仕様の見直し、汎用・規格部品を数多く採用する

 ことにより製造コストが71%低減(約16百万円/箇所、H12年度1台)。

技術開発の推進(施策番号C)

・樋門を現場打ちのRC構造から強化プラスチック複合管(FRPM管)に変

 更することにより約11%の工事コストを図るとともに、工期の大幅な短縮を

実現(約30日→約5日)。

・排水機場のポンプを従来の横型ディーゼルエンジンから立型ガスタービンエ

 ンジンにすることにより、ポンプ室上屋を縮小し、約30%の工事コストを低

減。

・灯台等の灯火の光源を白熱電球から反応速度が速い発光ダイオードに代える

 ことにより、通電時間を短縮し、消費電力の低減を図った結果、付属する蓄

電池の整備コストを約50%低減(0.87百万円/箇所、H12年度298箇所)。

・開削地下駅のホーム階やコンコースで採用されている、コンクリートを充填

 した合成鋼管柱について、材料強度・設計方法の変更及び汎用品を採用する

 ことで鋼管部分の薄肉化と支圧板の縮小化を図った新型合成鋼管柱を開発し

 たことにより、従来の合成鋼管柱より約4割の経済化が図られた。

 (日本鉄道建設公団)

入札・契約制度の検討(施策番号G)

・民間の技術提案を受け付ける入札契約方式(VE方式、総合評価落札方式、

設計・施工一括発注方式等)の導入により、目的物の機能と品質の確保の両

立を図りつつ、コスト縮減を推進。

  建設副産物対策(施策番号P)

・オートキャンプ場内の園路をゴムチップ舗装からウッドチップ舗装にするこ

 とにより環境・景観に考慮し、さらに約20%の工事コストの低減。

・港湾工事において、資源の有効利用と環境保全の見地からリサイクル材の積

極的活用を図るため、防波堤の地盤改良工事において、牡蠣殻を地盤改良材

  に混合して有効利用を図り、約4%の資材費の低減

・大阪国際空港のエプロン舗装工事において、工事費縮減の観点から既設路盤

 が新設路盤と見なせるだけの厚さ及び所定の支持力が確認できれば、新設路

 盤として再利用した。それにより建設副産物の発生を抑制すると共に材料費

 等を7.2%(19.31百万円)縮減。

3)工事の時間的コストの低減(施策番号U

〜集中投資や新技術の活用により工事期間を短縮しました。

<実施内容>

・現地の土とセメントを混合し斜めの地中壁を構築して護岸とする斜め控え護岸

 (TRD工法)の採用により、従来のコンクリートブロック張りの施工に比

 べ、工事コストを約39%低減し、工期を約2ヶ月間短縮。同様の工事を10件実

 施(H11:7件)。

・道路擁壁に大型セミプレハブ擁壁を利用することで、従来の現場打ちコンク

 リート擁壁の施工に比べ、約3ヶ月の工期短縮と約3%の工事コストを低減。

・水中コンクリート型枠にプレキャストブロック型枠を活用することにより、

 鋼製又は木製の型枠を使用した場合に比べ、施工期間を約44%短縮し、工事

コストを約4%低減。

・大型ローラの仕様により、盛土施工厚を一層あたり30cmから60cm程度に厚層

 化が図られたため、工事コストを25%低減し、工期を50%短縮。

 (日本道路公団)

4)ライフサイクルコストの低減(施設の品質の向上)

〜より耐用年数の長い施設、省資源・省エネルギー化に資する施設、環境と調

和する施設等の整備を推進するなど、施設の品質の向上を図ることにより、

ライフサイクルを通じてのコストの低減及び環境負荷の低減を図りました。

<実施内容>

施設の耐久性の向上(長寿命化)(施策番号V@)

・耐候性鋼材を活用することにより、防錆塗装に係る維持管理コストを約9割

 低減。平成12年度42件実施。

集合住宅の構成要素を躯体や共用設備部分[スケルトン]と住宅専有部分の

 内容や設備[インフィル]に明確に分離することにより、スケルトンの耐久

 性とインフィルの更新性・可変性を高めた長期耐用型住宅であるKSI(公

 団型スケルトンインフィル)住宅を建設。H12年度2,115戸発注(H11:849戸)。

 (都市基盤整備公団)

  施設の省資源・省エネルギー化(運用、維持管理費の低減)(施策番号VA)

・地方合同庁舎の建築に際し、太陽光発電、高効率照明等を採用したグリーン

 庁舎として整備することで、地球環境負荷を低減。平成12年度は3件整備中。

・温泉の余り湯を活用した歩道ヒーティングを実施することにより、歩道歩行

 の快適性を図るとともに、電気の場合に比べ32%のコストを低減。

・航路標識電源について太陽光、風力、波力などの自然エネルギー化を進め、

 環境を配慮した航路標識整備を行うことにより、二酸化炭素等の排出削減に

 より地球環境負荷の低減を図るとともに、ライフサイクルコストの低減を図

 る。

環境と調和した施設への転換(施策番号VB)

・多自然型護岸を整備することにより、従来の工事コストを低減するとともに、

 緑の創出や、コンクリート使用量の低減など環境にやさしい川づくりを推進。

・山腹工施工において間伐材を利用することにより、資源の有効利用と周辺環

 境の調和を進め、さらに従来のコンクリートを使用した工法に比べ約25%の工

 事コストを低減。

・従来に比べ舗装内部の空隙が多い低騒音効果のある高機能舗装の実施により、

 自動車騒音の低減を図るとともに、排水性の向上により走行性や視認性を向

 上。平成12年度施工延長約500km。

・閉鎖性海域における海水交換防波堤の整備を図るとともに、緩傾斜護岸等の

 整備により、自然にやさしい港湾施設の整備を実施。

・成田空港では、平成10年度に策定した「エコエアポート基本構想」に基づき、

平成12年度に世界で初めて航空機用低温蓄熱システムを採用し、安価な夜間

電力で蓄熱し、昼間放熱することで、エネルギーの有効利用によって地球環

境負荷を低減。

・消波ブロックの一部に環境共生型消波ブロックを活用することにより、魚介

 類の生息及び稚仔魚の育成の場等の海域環境を創造。

 (関西国際空港株式会社)

5)工事における社会的コストの低減

〜リサイクルの推進、環境対策及び安全対策を通じて、資源の有効利用、環境

負荷の低減、人的損失の低減を図りました。

<実施内容>

工事におけるリサイクルの推進(施策番号W@)

・循環型社会の構築を図るため、建設リサイクル法の主旨をふまえ、公共事業

 において建設副産物のリサイクルを強力に推進。

・下水の排除、処理の過程で発生する下水汚泥等について有効利用を進め、平

 成10年度は約57%の下水汚泥を農用地及び建設資材等に利用。

・現存する亜炭坑跡の埋めるため、窯業用の陶土や珪砂の採掘現場から発生す

 る廃汚泥(キラ)を利用した充填工法により施工し、リサイクルを推進。

・高速道路の維持管理で発生する刈草や剪定枝など植物発生材を堆肥化し、高

 速道路の建設工事・改良工事で土壌改良材として有効利用。全国8箇所のプ

ラントで5万m3の植物発生材から6千m3の堆肥を生産し、活用。

(日本道路公団)

   工事における環境改善(施策番号WA)

ISO14001に基づく環境マネジメントシステムを構築し、モデル工事を実施。

平成12年度は12工事事務所において試行を実施。

工事中の渋滞緩和対策(施策番号WB)

・路上工事の集中的な実施や工事規制方法の工夫により、渋滞時間を短縮し、

 社会的コストを低減。(阪神高速道路公団)

工事中の安全対策(施策番号WC)

・「安全文化」の創造、安全教育等の充実等を通じて、公共工事での事故災害

 の防止及び災害の低減。平成12年度の建設業の死傷者数は平成11年に比べ約

 4.8%減少(全産業約2.5%減少)。また、平成13年度は、建設事故防止のため

 の重点対策として、手すり先行型足場、デルタクッションを活用したモデル

 工事を実施。

・河川堤防法面除草作業に大型遠隔操縦除草機械を導入することにより、作業

 の安全性を向上と作業コストを約45%低減。平成12年度は、大型遠隔操縦除草

 機械を全国で19台購入し、現場作業の更なる効率化と安全性向上を実施。

・港湾工事における大水深の法面均し、被覆石据付け、出来形検査等の水中作

 業を遠隔で操作するタイプの水中作業機械において行えるよう技術開発を推

 進。

6)工事の効率性向上による長期的コストの低減

〜工事情報の電子化や電子交換等の実施により、工事の効率化を図りました。

<実施内容>

工事における規制改革(施策番号X@)

・平成13年度より本格施行となった「公共工事の入札及び契約の適正化の促進

 に関する法律」の執行を通じて、公共工事の透明性の確保、公正な競争の促

 進、適正な施工の確保、不正行為の排除の徹底を図る。

工事情報の電子化(施策番号XA)

・公共事業の調査・計画、設計、入札、施工及び維持管理の各事業プロセスに

 おいて、図面や書類、写真等の各情報の電子化、通信ネットワークを利用し

 た情報の交換・共有、電子入札及び電子納品の実現等を目指し、環境整備を

 実施。

   工事における新技術の活用(施策番号XB)

・民間等からの新技術情報を収集し、有用な新技術のより一層の活用を図るた

 め、新技術活用促進システムを整備。


(問い合せ先)
  国土交通省                    代表 03-5253-8111
   大臣官房技術調査課建設コスト管理企画室 課長補佐  
元永 秀
                     (内線22353)直通 03-5253-8221
   大臣官房公共事業調査室         専門官    今村 純
                     (内線24294)直通 03-5253-8258
 

<参考>

・新行動指針・新行動計画の施策番号一覧

   別紙−1 公共工事コスト縮減対策に関する新行動指針 取り組み状況一覧表

   別紙−2 平成12年度の取り組み内容

   ○我が国における公共工事コスト構造の特徴