妙見堰管理支所鉄塔被災概要 |
《国土交通省地震計で震度「6弱」相当、水平加速度管内最大値を観測》 |
【信濃川 妙見堰関係】 妙見堰は、信濃川大河津分水路の分派点より上流約30qに位置し、総事業約220億円を投入し、平成2年3月に完成した。 この堰の目的は @河川改修計画に基づく河床安定を図ると共に、福島江用水と長岡市上水の安定取水の確保 AJR小千谷発電所の放流水の流量調節 B国道17号のバイパスの橋梁架橋 である。 |
妙見堰には主ゲートが7門の他に、調節 ゲートが1門あり、この8門で流量調節を行っている。その他、左右岸に魚道を有し、豊かで清らかな信濃川には多くの魚類が生息する。 長岡市上水は毎秒1.37d、福島江用水は毎秒25.7dを取水しており、妙見堰の堰柱には国道17号橋梁(車道8.75m×2車線)が架橋され、小千谷バイパスにつながっている。 JR小千谷水力発電所は、首都圏の電車の電力として利用されており、朝夕のラッシュ時には発電ピークを迎える。このことから、朝夕の大きな流量変化を堰地点で流量調整を行い、ゆるやかな流れを形成する重要な役割を担う。 |
(信濃川上流から下流を望む) |
信濃川妙見堰周辺(信濃川下流方向から望む) |
妙見堰の概要 |
通信鉄塔被災状況 |
地震情報 妙見堰では、中越地震の震央に近い施設であった事もあり管理所内の地震計で、震度「6弱」相当、水平加速度「820」ガル<管内最大値>[2004.10.23 17:56:04]を記録している。 |
国土交通省の無線回線は、各種防災業務における音声やデータ通信を確保する為構成されており、妙見堰管理支所の通信鉄塔は、長岡局から接続される回線を構成していたものである。 ☆ 無線通信鉄塔(高さ28.2m、重さ28t) |
24日16時頃、地震後における妙見堰管理支所庁舎点検の際、管理支所建物とその屋上に設置された通信鉄塔が傾いているとの報告を受けた。 この被害報告を受けて、同日19時に鉄塔倒壊による市民生活への影響を考慮し、信濃川河川事務所では、その影響範囲にある鉄塔近隣の市民に対して、鉄塔倒壊の危険性について事情を説明し理解を得ると共に、市民に対して自主避難を要請した。 なお、近隣住民の自主避難は25日15時までにすべて完了した。 |
【被災前の鉄塔】 |
【回線構成図】 |
屋上に設置された通信鉄塔の詳細点検を行ったところ、23日夕刻からの数回にわたる強い地震力を受けた鉄塔基礎部分は、4脚の底盤プレートとコンクリート基礎を固定する28oアンカーボルトの大半が破断し、また、コンクリート基礎の一部も損傷し、鉄塔本体が倒壊の危機性にさらされていることが明らかになった。 その様子は、アンカーボルトの上部押さえナットの殆どが飛び散り、またアンカー本体がコンクリート破壊により大きくむき出しになり、鉄塔基礎の固定機能が著しく低下し、無線鉄塔の倒壊危機にさらされた。 このような中でも妙見局マイクロ回線は、26日13時までその機能を維持し、防災通信に使用することが可能であった。 さらに現地調査を進めると、管理支所建物も度重なる余震の影響から、25日時点で、震災当初が1.4%であった庁舎の傾き度合いが、3.5%にまで拡大していた。 その状態は、SRC建築物の安全基準値である3.3%を超えるものであり、転倒の危険性が一段と高まったことから、無線鉄塔をこのままの状態で維持することは困難な状況となり、早期の撤去を余儀なくされた。 27日以降はさらに庁舎の傾きが大きくなり、通信鉄塔の危険性が一層高まったことを受け、ヘリテレ受信のために派遣した衛星通信車を左岸堤防にそのまま配置し、高感度カメラを用いて、約500m離れた右岸の妙見堰通信鉄塔の状況監視を実施した。 鉄塔撤去に先立ち、今後の余震による倒壊を事前回避するため、その対策工事として、脚部底盤を溶接補強する工事が26日に行われたが、27日の強い余震で、もろくも破壊されてしまい、翌28日に鉄塔脚部の補強、アンカーボルト溶接の再施工を実施した。 |
地震後の対応 |
【通信鉄塔底盤部におけるアンカーボルト破損状況】 (2004/10/29撮影) |
【妙見堰管理支所全景】 (2004/10/29撮影) |
【鉄塔アンカー部破損状況】 (2004/10/25撮影) |
鉄塔撤去 |
妙見堰管理支所通信鉄塔の大型クレーンによる撤去工事は、次の日程で行われた。 当初計画では、鉄塔を上下2つに解体し吊り降ろすこととしていたが、余震による倒壊の危険性をいち早く排除する為、実施段階では650tクレーンを使用し、高さ28m重さ28tの鉄塔を一体のまま吊り降ろす施工計画に変更し、作業を行った。 1)作業日の実施内容 10月 29日(金)クレーンの足場養生 砕石敷均し 30日(土)クレーンの足場養生 敷鉄板敷設 31日(日)予備日(作業なし) 11月 1日(月)クレーン本体等の搬入 2日(火)ブーム搬入・鉄塔撤去 3日(水)鉄塔4分割解体 4日(木)クレーン解体・搬出 2)11月2日の鉄塔撤去時の時系列 7時 650tクレーン組立開始 9時 650tクレーン組立完了 12時 鉄塔頂部で玉掛作業開始 13時 玉掛作業終了、鉄塔脚部切断開始 14時 鉄塔脚部切断終了、鉄塔吊り上げ開始 15時 鉄塔横倒し完了 18時 画像配信終了 |
【通信鉄塔吊り降ろし施工概念図】 |
11月2日に実施した妙見堰管理支所通信鉄塔の大型クレーンによる撤去工事の様子は、その近傍にある公衆トイレの屋上に設置したカメラで撮影し、その画像は左岸の衛星通信車までFPUを使用して画像伝送を行い、衛星回線で北陸地方整備局ほか関係機関への映像配信を行った。 |
【鉄塔撤去状況】 |
鉄塔撤去に伴う影響 |
◆マイクロ回線停止 ・妙見堰の堰諸量データ停止 ・地震計(妙見堰)データ停止 ◆テレメータ回線停止 ・堰管理用テレメータの傍受停止(小千谷局) = 傍受のため他への影響はなし。 ◆警報回線停止 ・警報局停止(横渡局、三仏生局) ◆発動発電機停止 ・上記停止とCCTV監視制御停止 ただし、ゲート操作用電源(発電機)は別途確保している。 |