1.情報の共有化とコミュニケーション推進
 (6)事業計画説明の改善




 国民の方々の多様なニーズを的確に反映した質の高い道路行政を図るため、特に社会に大きな効果や影響を及ぼす広域的な道路に重点を置き、PI手法を導入した道路事業に取り組んでいます。
 例えば、交通渋滞の激しい国道9号玉湯交差点(島根県松江市)において、PI手法による合意形成を試みた結果、住民の方々と課題に対する認識の共有化が図られるとともに、行政と住民の方々との信頼関係が醸成されました。




 PI(パブリック・インボルブメント)とは

政策の立案や事業の計画・実施等の過程で関係する住民の方々や国民一般の方々に情報を公開した上で、広く意見を聴取し、それらに反映することです。



【目的:多様なニーズを的確に反映した質の高い道路行政の展開】

行政と国民の方々との双方向コミュニケーションを活性化させ、アカウンタビリティの向上と、多様なニーズを的確に反映した質の高い道路行政の展開を図ります。

【国内の直轄国道におけるPIの試行事例】




【取組状況:わが国の実状を踏まえ、社会に大きな効果や影響を及ぼす広域的な道路を中心に実施】

・平成9年度以降、各地域の実状や事業内容に応じ、様々な手法によりPIの試行を開始しました。
・平成11年度は、国内での試行事例や海外での先進事例を参考にしながら、わが国の実状に適したPIのあり方
 について、特に社会に大きな効果や影響を及ぼす広域的な道路に重点をおいて検討を実施してきました。
・それらの成果を踏まえ、PIの理念や基本的考え方を示した実施指針(案)を作成中です。
・今後、広域的な幹線道路を対象として、幅広くPIを実施していきます。



国道9号線の交差点の例(島根県松江市)
【中国地建】
【概要】

 渋滞の激しい交差点の改良事業において、地元への事業説明段階での反対運動により事業が休止していましたが、PI方式を導入し、計画段階から住民の方々と共に考える姿勢を示し、改めて事業の必要性から検討することとし、複数の計画案を住民の方々に提示しました。
 これにより渋滞解消という課題に対する考え方が共有されたこと、計画段階でのわかりやすい情報提供と住民参加での対策の策定により、事業に対する理解をいただくこととなりました。


【工夫した点】

PI方式を導入、住民とともに考える

 地域住民の方々と事業の必要性を確認する段階に立ち戻り、PI方式を導入することとしました。この中で、都市計画マスタープランを受けた地区別構想と整合のとれた渋滞解消計画とすること、複数案を提示して住民の方々との意見交換のもとに計画を考えていくという基本姿勢を明示し、行政と住民とが共に考え、作り、育てていく取り組みが可能となりました。

複数の計画案の提示

 複数の案をメリット・デメリットとともに提示し、住民の方々の意見や評価を収集してその評価や意向を整理して説明しました。また、各案における渋滞シミュレーションをわかりやすい画像で表現して説明を行いました。

【説明会の様子】



【成果】

課題に対する基本的考え方の共有

 地域の現状を整理し、課題に対する基本的考え方を示していく中で、渋滞問題の解消が地区別構想策定の中で大きなテーマであるという認識が、行政と住民の方々との間で共有されました。
 さらに、地元自治会代表者らを中心とした、まちづくり委員会が発足し、より建設的な計画案の検討を行うこととなりました。
 これらは、行政と住民の方々との信頼関係を醸成することとなりました。

複数の計画案の提示による論点の明確化

 複数の計画案を提示したことで、住民の意見を取り入れる姿勢が理解され、感情的な反対論は少なくなりました。また、各案を比較し議論していくことにより、より前向きな議論へと進むことができました。