事業者名 |
三岐鉄道株式会社 |
事例名称 |
近鉄北勢線を三岐鉄道が再生 |
概要 |
北勢線は、大正3年に北勢軽便鉄道鰍ェ地域の足として、また、木材、砂利などの運搬を目的として運営を開始。昭和6年7月には、現在と同じ営業キロ(20.4q)で桑名市(西桑名駅)と員弁郡(現いなべ市)北勢町(阿下喜駅)まで延長された。
その後、数社の経営母体の変遷を経て、長年近畿日本鉄道鰍ェ運行を続けてきたが、自家用車利用の進展、就学人口の減少等により、赤字に歯止めが掛からない状況が続き、平成14年3月に路線の廃止届書が提出された。
しかし、三重県及び沿線自治体では、財政支援を行うこと等により、鉄道として存続させていくこととして、三岐鉄道鰍フ協力を得て近畿日本鉄道からの事業承継を経て、15年4月運行が開始された。16年からは、国の補助金を受けて、駅前広場等のまちづくり事業と連携しつつ、高速化事業を行うこととしている。 |
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取組の様子 |

北勢線 270系 |
協力者・関係者 |
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事例に携わった関係者 |
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鉄軌道事業者:近畿日本鉄道梶A三岐鉄道 |
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国及び県:国土交通省、三重県 |
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沿線自治体:桑名市、北勢町・員弁町(現いなべ市)、東員町 |
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広域連合:桑名市、北勢町・員弁町(現いなべ市)、東員町、大安町・藤原町(現いなべ市)、多度町、木曽岬町、長島町 |
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その他市民団体等:「北勢線とまち育みを考える阿下喜駅を残す会」、北勢軽便鉄道をよみがえらせる会」等 |
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その他 |
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北勢線運営協議会(広域連合で1市8町)・・存続、運営にかかること |
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北勢線運営会議(沿線1市3町と三岐鉄道)・・運営資金の交付 |
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北勢線活性化協働会議(北勢線地元検討会、民間団体、業界団体、行政、三岐鉄道、学識経験者) |
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北勢線の利用促進と地域振興プログラム検討会(中部運輸局、三重県、沿線自治体、三岐鉄道、バス協会) |
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背景 |
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近畿日本鉄道の廃止表明後、三重県及び沿線市町は「北勢線問題勉強会」を組織し、北勢線の対策について検討を行った。(鉄道として存続させるか、代替バスに転換するかを基本方針の検討)
その後、桑名・員弁広域連合(1市8町で構成。以下「広域連合」という。)は、「近鉄北勢線利用促進協議会」を設置し、総決起集会や北勢線フォーラムを開催して、存続のための運動を展開。
広域連合は、鉄道利用の半数以上が学生の通学であること、80%以上が定期券利用者であること、高齢者福祉に寄与することとの観点から鉄道を存続させる方向で検討。鉄道施設整備と赤字補填を前提として三岐鉄道に協力要請をし存続が決定。 |
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鉄道の再生には利用者減少に歯止めをかけ、より利便性の向上を図る必要があることから、沿線地域と連携して、施設の更新、スピードアップ、駅周辺整備を進めることとしている。 |
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内容 |
◆存続を決定した後 北勢線活性化のための方策として北勢線活性化基本計画を策定。 |
行政機関、住民などによるワークショップ、利用者アンケート等に基づき、今後10年間の目標を具体化した。 |
【計画内容】 |
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リニューアル(鉄道事業者が中心となって)
安心・安全・快適な車両・軌道・駅舎を実現し、安定経営ができる収支構造を確立する。 |
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鉄道を活かしたまちづくり(行政が中心となって)
鉄道と自動車が共存できる魅力あるまちづくりを目指し、道路政策と並ぶ重要な交通政策の柱として位置付ける。 |
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利用推進施策等について具体策を計画(住民が中心となって)
乗ることと乗せることに知恵を出し合い、鉄道を公共施設と位置付け、積極的にかかわる。 |
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地域活性化に向けて、それぞれが得意分野で活動する。 |
【支援内容】 |
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平成15〜24年(10年間)で総額55億円。沿線53.2億円、三重県2.8億円。 |
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公共交通総合プログラムの採択をうけ、沿線及び利用者アンケートを実施。ハード・ソフト両面でニーズの把握を 行い、今後の施策及び整備計画の方針を検討。 |
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老朽化駅舎の建替え、利用促進のため、パークアンドライド,キッスアンドライド(乗換までマイカーで送迎等),駐輪場等を順次整備。 |
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鉄道の高速化、近代化整備を16年度から本格的に実施。国土交通省は高速化事業に関する鉄道施設整備に幹線鉄道活性化補助を適用し支援。 |
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鉄道事業者、沿線自治体の概要 |
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事業形態 :第一種鉄道事業者 |
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営業キロ :20.4km |
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輸送人員(平成14年度): |
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主な沿線自治体及び人口(平成15年3月末):北勢町
14,022人、員弁町 8,574人、東員町 26002人、桑名市
108,896人 |
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効果 |
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鉄道維持のためのハード及びソフト面(沿線のまちづくり計画等とあわせ北勢線の活性化施策、設備改良計 画)を検討。
駅前広場等整備を行うことから、周辺アクセス路の整備について改善計画の検討が開始された。 |
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沿線の東員町は、北勢線の駅周辺整備計画を機に「コミュニティバスの運行計画」の策定に着手、バスと鉄道の連携調査を開始、また、桑名市においても自主運行バスの計画の見直しを開始した。 |
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地域の公共交通を一体的に検討する中、「鉄道の特性」を生かしたサービスレベルの向上に向けバス・鉄道の連携の場を設置。 |
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駅を中心としたまちづくり整備とあわせて北勢線沿線の交通体系の構築を図る調査を三重県が開始。 |
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沿線自治体のマイレール意識が高揚。 |
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成功(失敗)理由 |
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県及び沿線市長の連携により、地域が一体となって鉄道を支援する体制が構築されたこと。 |
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10年間の目標を立て、今後の三岐鉄道のあり方を県、沿線市はもとより、地域住民に対し明確にしたことにより、自治体から今後10年間にわたる財政支援をとりつけることができ、もって三岐鉄道鰍ェ今後鉄道事業を行うに当たっての経営基盤の確立、強化を図ることができたこと。 |
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存続に向け、各種検討の場で地域における鉄道のあり方を議論したことにより、通学や高齢者に必須の公共交通機関として鉄道の姿を浮かび上がらせる結果となり、マイレール意識が向上したこと。 |
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今後の課題 |
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コミュニティバスの計画策定など利用促進策の検討。 |
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北勢線は、沿線自治体の支援を受けており、今後各施策の検証、鉄道事業経営の情報開示等が必要。 |
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今後の赤字補填に対する枠組みと見通しに不安 |
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お問い合わせ先 |
中部運輸局 |