3.地下水関連法制度とこれまでの地下水政策


(1)地下水の採取・利用に関する法制度

 地下水の採取・利用については、工業用水法や建築物用地下水の採取の規制に関する法律(ビル用 水法)において、地盤沈下の防止を目的として、工業用井戸やビル用揚水設備を規制しています(都道府県知事による許可制)が、その適用は指定された地域の みです。
 鉱物の掘採においては、鉱業法により、国に権利賦与の権能が与えられ、他の利益との調整について定め られているのに対し、地下水の採取についてはこのような法文上の定めはありません。また、鉱物・岩石・砂利等の採取に伴う地下水への影響についても、法文 上の明確な規定はなく、運用上の問題として「その他の産業の利益」に該当しうるにとどまります。
 
 

表−3.1 地下水等の採取・利用に関する法制度

名 称
制定年
地下水等の位置付け
工業用水法
1956年
・ 政令で定める地域(「指定地域」)内の井戸により地下水を採取してこれを鉱業の用に供しようとする者は、井戸ごとに、そのストレーナーの位置及び揚水機の 吐出口の断面積を定めて、都道府県知事の許可を得なければならない。
・ 「指定地域」の要件としては、地下水を採取したことにより、地下水の水位が異常に低下し、塩水若しくは汚水が地下水の水源に混入し、又は地盤が沈下してい る一定の地域について、工業の用に供すべき水の量が大であり、地下水の水源の保全を図るためにはその合理的な利用を確保する必要があり、かつ、その地域に 工業用水道がすでに布設され、又は一年以内にその布設の工事が開始される見込みがある場合に定める。(具体的には、宮城県、福島県、埼玉県、千葉県、東京 都、神奈川県、愛知県、三重県、大阪府、兵庫県の10都府県で指定されている。)
建築物用地下水の採取量規制に関する法律(ビル用水法)
1962年
・ 指定地域内の揚水設備により建築物用地下水を採取しようとする者は、揚水設備(井戸)ごとに、そのストレーナーの位置及び揚水機の吐出口の断面積を定めて 都道府県知事の許可を受けなければならない。
・ 指定地域の要件としては、「当該地域内において地下水を採取したことにより地盤が沈下し、これに伴って、高潮、出水等による災害が生じるおそれがある場 合」とされている。(具体的には、埼玉県、千葉県、東京都、大阪府の4都府県で地域指定されている。)
鉱業法
1950年
・ 国は、まだ掘採されていない鉱物について、これを掘採し、及び取得する権利を賦与する権能を有する(鉱業権は土地所有権とは独立した物権とみなされる)。
・ 鉱業権者は、公共の用に供する施設・建物の地表地下とも50m以内の場所において鉱物を掘採するには、管理庁又は管理人の承諾を得なければならない。
・ 掘採が、保健衛生上害があり、公共の用に供する施設を破壊し、その他の産業の利益を損じ、著しく公共の福祉に反するようになったと認めるときは、鉱業権の 取消・縮小の処分が行える。
・ 鉱物の掘採のための土地の掘さく等によって他人に損害を与えたときは、その損害を賠償する責を有する。
採石法
1950年
・ 岩石・砂利の採取における災害・公共施設の損傷の防止、他の産業の利益との調整については、「採取計画の認可」を通じて行われる。
砂利採取法
1968年
同上

【資料】 国土庁長官官房水資源部「今後の地下水利用の
あり方に関する懇談会(中間報告)」(2000年)





(2)地下水の水質保全に関する法制度

 地下水の水質保全については、環境基本法の中で政府が水質の汚濁に関する環境基準を定めるとし ていることを踏まえ、1997年3月に地下水も対象とした水質汚濁にかかる環境基準についての告示を行っています。
 また、1989年に改正された水質汚濁防止法では、一定の排出基準を定め、この基準を超える有害物質 を含む汚水の地下への浸透を禁止し、水質の監視を義務づけています。違反した場合には罰則が適用され、損害が発生した場合は損害賠償責任が課せられます。 1997年4月からは地下水の汚染が判明した場合、都道府県知事が汚染の浄化を命ずる権限が認められています。なお、規制の対象が有害物質の最終排出点と なっており、貯蔵タンクなど途中のプロセスにおける漏洩・地下浸透が対象となっていないことが問題点として指摘されています。
 このほか、水質汚染に関する法律としては、廃棄物の処理及び清掃に関する法律、農用地の土壌の汚染防 止等に関する法律、鉱山保安法、臨時石炭公害復旧法、放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律があります。
 なお、民法では、汚水溜めなどは土地の境界から2メートル以内につくることを禁止し、刑法では浄水汚 穢罪や水道毒物混入罪の規定があります。
 
 

表−3.2 地下水の水質保全に関する法制度


名 称
制定年
地下水の位置付け
公害対策基本法
1967年
大気の汚染、水質の汚濁、土壌の汚染、騒音、振動、地盤の沈下、悪臭による人の健康及び生活環境の被害を「公害」と定めている。
環境基本法
1993年
政府は、大気の汚染、水質の汚濁、土壌の汚染及び騒音に係る環境上の条件について、それぞれの人の健康を保護し、及び生活環境を 保全する上で維持されることが望ましい基準を定めるものとする。
水質汚濁防止法
1970年
多数の地下水汚染が顕在化してきたことに伴い、有害物質を含む水の地下への浸透を禁止及び地下水の水質の監視体制の導入による地 下水汚染の未然防止、地下水の水質の浄化に係わる措置命令等に関する制度的枠組みを唱えている。

【資料】 国土庁長官官房水資源部「今後の地下水利用の
あり方に関する懇談会(中間報告)」(2000年)