4.地盤沈下防止等対策要綱


(1)要綱策定の経緯

1) 昭和40年代の後半になって、地下水のくみ上げによる地盤沈下あるは地下水位の低下が全国 的に見られるようになった。そこでこの問題を根本的に解決しようという気運が起こり、地下水に関する法制が議論されることになった。

2) 昭和49年11月、国土庁官房長に参議院の古賀雷四郎議員から「地盤沈下対策緊急措置法案 要綱(試案)」(以下、古賀試案という。)が提示された。そこで国土庁は各省庁担当課長会議(環境庁・厚生省・大蔵省・農林水産省・通商産業省・建設省・ 自治省)を開催し、各省庁及び国土庁の考え方を古賀議員に説明した。

3) また、建設省が昭和49年12月 「地下水法基本要綱案」を、50年2月には環境庁が「地 盤沈下防止法(仮称)案」をそれぞれ作成し、国土庁に説明する等の動きがあった。

4) 昭和50年3月、自民党に地盤沈下対策議員懇談会が発足し、同5月、同世話人会は議員立法のための法文化を参議院法制局で行うこととし、 参議院法制局は50年6月 「地下水の保全及び地盤沈下の防止に関する法律案」をまとめた。しかし、主として代替水源の確保に関して合意に時間を要し、結 局法案の取り扱いは政審預かりになった。

5) 昭和50年11月、通商産業省構造審議会の工業用水基本政策部会が「地下水対策の基本的方針について」を中間答申したが、同年11月、自 民党の地盤沈下対策議員懇談会の世話人会で通商産業省の中間答申の内容と地下水法案とについては国土庁、環境庁、通商産業省の3省庁で調整すべきこととさ れた。

6) 引き続き、昭和50年12月にも通商産業省の産業構造審議会工業用水基本政策部会は「工業用水使用合理化のあり方について」を中間答申し た。通商産業省はこれらの中間答申を受け、51年1月 「工業用水法の一部を改正する法律案」を国会に提出する動きがあったが、その後52年4月、工業用 水法改正案を「工業用水使用適正化法案」に改めた。一方、52年4月、国土庁は通商産業省の工業用水使用適正化法案との調整を図った「地下水の保全及び地 盤沈下の防止に関する法律案」をまとめ、各省庁に提示したが、この法律の所管大臣として、内閣総理大臣、厚生大臣、農林水産大臣、通商産業大臣及び建設大 臣の5大臣を定めたことから、主として権限問題に関連して各省庁の合意を得ることができず、同法案を国会に提出するには至らなかった。

7) 昭和53年3月、国土庁は「地下水の保全及び地盤沈下の防止に関する法律案」(以下、「53年国土庁案」という。)を各省庁に提示した が、各省庁の意見の一致をみず、同年5月には関係6省庁局長会議において、今後とも法の成案を得ることについて協力することを確認したが、その後も意見の 一致をみなかった。

8) 昭和55年2月には自民党の地盤沈下対策議員懇談会の議員から官房長官に対して、関係省庁の調整を内閣官房で取るように申し入れを行い、 官房長官は衆議院予算委員会において、内閣官房も入って法制の調整に努力する旨の答弁を行った。その後、内閣官房、環境庁、国土庁、厚生省、農林水産省、 通商産業省、建設省による関係省庁の調整会議において、法制のあり方を協議することになった。

9) 昭和55年5月、内閣官房内閣審議室が国土庁に対し、53年国土庁案に対する各省庁の意見を踏まえ、内閣審議室の調整案を作成するように 要請し、国土庁は同年6月に調整案である「地下水の保全及び地盤沈下による災害の防止等に関する法律案要綱」を内閣審議室に提出した。

10) 昭和55年8月、内閣審議室長主催で国土庁、環境庁及び建設省が検討法案について調整を行い、内閣審議室長の「基本的考え方」が提示さ れ、国土庁、環境庁、建設省の意見が取りまとめられた。それを受け、同年9月には内閣審議室が厚生省、農林水産省及び通商産業省に対し、経緯と検討法案の 「基本的考え方」についての国土庁、環境庁、建設省の意見を説明した。

11) 以下、昭和55〜56年にかけて、内閣官房、環境庁、国土庁、厚生省、農林水産省、通商産業省、建設省による地下水法案調整会議及び技 術担当補佐会議を内閣審議室で開催した。

12) 最終的には昭和56年7月に内閣審議室が関係省庁に対し、「地下水採取規制に係る総合法制についての考え方」を提示し、それに対する関 係省庁意見を内閣審議室が取りまとめた段階で調整は終了した。

13) 昭和56年8月、内閣審議室より「地盤沈下防止等対策関係閣僚会議の開催について」等が提示され、地盤沈下防止等対策要綱に基づく総合 的な施策の推進へと進むこととなった。

14) 昭和56年11月17日の「地盤沈下防止等対策関係閣僚会議の開催について」(閣議口頭了解)を受けて地盤沈下防止等対策関係閣僚会議 が設置され、翌18日に「地盤沈下防止等対策の推進について」が関係閣僚会議において決定された。

15)関係閣僚会議決定を受け、昭和60年4月26日に濃尾平野及び筑後・佐賀平野、平成3年11月29日に関東平野北部について地盤沈下防止 等対策要綱が策定された。
 
 

(2)要綱の概要

 地盤沈下とこれに伴う被害の著しい濃尾平野、筑後・佐賀平野、関東平野北部の3地域について、 地盤沈下防止等対策関係閣僚会議において、地盤沈下防止等対策要綱が決定されています。これらの要綱は、地下水の過剰採取の規制、代替水源の確保及び代替 水 の供給を行い地下水を保全するとともに、地盤沈下による湛水被害の防止及び被害の復旧等、地域の実情に応じた総合的な対策を目的としています。
 
○○平野地盤沈下防止等対策要綱(骨子)
○○年□□月△△日
地盤沈下防止等対策関係閣僚会議決定


1 要綱の目的
  この要綱は、○○平野における地盤沈下を防止し、併せて地下水の保全を図るため、地下 水の採取規制、代替水源の確保及び代替水の供給、節水及び水使用の合理化、地盤沈下による災害の防止及び復旧等に関する事項を定めることにより、同地域の 実情に応じた総合的な対策を推進することを目的とする。

2 ○○平野の現況
  (地盤沈下、地下水採取量、地下水位等の推移等について記述)

3 要綱の対象地域
  この要綱の対象地域は、規制(保全)地域と観測地域に区分し、別添図面のとおりとす る。

4 地下水採取に係る目標量
  保全地域内における地下水採取目標量等は次の表のとおりとする。

    目標量    年間□□m3
    目標年度  平成△△年度

5 地盤沈下防止等対策
  地下水採取量を4の目標量に抑制するため、規制(保全)地域において次の施策を推進す るものとする。 
(1)地下水採取規制
  工業用水法、建築物用地下水の採取の抑制に関する法律及び地下水採取規制に関する条例 の適切な運用等を図るものとする。
(2)代替水源の確保及び代替水の供給
  水源の表流水への転換を図るため、代替水源の確保に係る事業及び代替水の供給に係る事 業を推進する。
(3)節水及び水使用の合理化
  節水及び水使用の合理化を促進するため、地下水採取者に対し適切な指導を行う。

6 観測及び調査
  対象地域における地盤沈下等の状況を把握するため、沈下量、地下水位、被害の実態等の 調査を行う。

7 地盤沈下による災害の防止及び復旧
  地盤沈下による災害を防止し、河川管理施設及び土地改良施設等の機能を復旧するため、 地盤沈下対策事業及びその関連事業の推進を図る。

8 要綱の推進
(1)国は、要綱の目的を達成するため、要綱に基づく施策の積極的な推進を図るとともに、 関係地方公共団体に対して、助言、指導、その他必要な援助を行うよう努めるものとする。
(2)要綱に基づく施策の円滑な実施を図るため、必要に応じ、国、関係地方公共団体等によ り構成される協議会を開催するものとする。
(3)国土庁は毎年度関係省庁及び関係地方公共団体等の協力を得て、要綱の実施状況をとり まとめるとともに、国は必要に応じ要綱の見直しを行うものとする。

 3地域における近況を以下に示す。また3地域の地盤沈下防止等対策要綱の概要は表-4.1のとおりです。

■濃尾平野
 2007年度(平成19年度)の地下水採取量は目標値を下回り、沈下量が年間1cm以上沈下 し た水準点は3点で沈下域の形成には至っていない。ただし、1994年(平成6年)のように夏期の少雨の影響により地下水位が急激に低下した場合は 沈下が進行する状況にある。

■筑後・佐賀平野
 2007度(平成19年度)の地下水採取量は一部地区で依然として目標値を上回っている。年間1cm以上の地盤沈下面積は約3km2であった。

■関東平野北部
 2007年度(平成19年度)の地下水採取量は目標量を上回っており、年間1cm以上の地盤沈下面積は約369km2、うち2cm以上の沈下面積は約 9km2であった。