健全な水循環系構築に向けて(中間とりまとめ)


健全な水循環系構築に向けて(中間とりまとめ)

健全な水循環系構築に関する関係省庁連絡会議 平成11年10月6日


1.現在の水循環系に対する認識  

 水は、地球上の限りある資源であり、生物の命を育み、私たちの生活や産業に不可欠な基本要素である。また、大気から大地、河川等を経て海域に向かう水の循環は、河川・地下水の水量の確保、水質の浄化、水辺環境や生態系の保全に大きな役割を果たす。一方、時には洪水等の災害をもたらす。さらに、水の循環過程における人との関わりは、他の活動や水循環系全体に影響をおよぼしている。
 我が国における現在の水循環系は、治水、各種用水や再生可能なエネルギー源としての利用等、安全、快適で豊かな人間生活を目指して太古の昔より人の手により工夫が施され、長い時間をかけて人為的な水循環系と自然の水循環系とが有機的に結びついたものになっている。例えば、適切な農林業活動等を通じて発揮される森林や農地等のかん養機能や、下水道等の排水処理による汚濁負荷の軽減も、水循環系に大きな役割を果たしている。
 その一方で、都市への急激な人口・産業の集中と都市域の拡大、産業構造の変化、過疎化・高齢化・少子化の進行、近年の気象の変化等を背景として、水循環系が急激に変化し、問題を引き起こしていることも事実である。
 このようなことから、21世紀の持続可能な発展のためには、健全な水循環系の構築が重要な課題である。そのためには、安全で快適な生活及び健全な生産活動が実現するとともに環境の保全に果たす水の機能が確保されるなど、人間の諸活動と水循環系との調和を図っていくことが重要である。 
 

水循環系を取りまく状況変化と問題点
-- 背 景 --
  • 気象の変化 
  • 都市への急激な人口・産業の集中及び都市域拡大 
  • 産業構造の変化 
  • 多消費型社会への変化 
  • 経済の高度化、効率性重視 
  • 過疎化、高齢化、少子化の進行 
  • 国民ニーズの多様化    等 
-- 要 因 --
  • 少雨化傾向、多雨・小雨の較差拡大 
  • 流域の涵養機能、保水・遊水機能、自然浄化機能の低下 
  • 渇水に対する社会・経済の弾力性低下 
  • 各種用水需要の増大 
  • 水質汚濁負荷の増大、汚濁物質の多様化 
  • 安全な水、おいしい水のニーズの増大 
  • 各種施設の整備等による水循環系の変化 
  • 水面・水辺空間・緑地空間の減少 
  • 地下水の過剰採取 
  • 地域における水管理体制の弱体化    等 
-- 水循環系の問題点 --
  • 通常時の河川流量の減少 
  • 水需給の逼迫、渇水の頻発 
  • 都市型水害の多発 
  • 洪水・渇水被害ポテンシャルの増大 
  • 非常時の用水確保の困難化 
  • 水質汚濁の進行と新たな水質問題の発生 
  • 地下水位低下、湧水枯渇、地盤沈下 
  • 都市におけるヒートアイランド現象の一因 
  • 生態系への悪影響 
  • 親水機能の低下、水文化の喪失   等 

2.健全な水循環系の定義

 健全な水循環系とは、流域を中心とした一連の水の流れの過程において、人間社会の営みと環境の保全に果たす水の機能が、適切なバランスの下にともに確保されている状態。

 


 
 
 
 

3.健全な水循環系構築のための施策の基本的方向

(1)流域の視点の重視

  • 近年顕著になっている水循環系の問題に対応するためには、水循環が上流域から下流域へという面的な広がり、地表水と地下水を結ぶ立体的な広がりを有することを考慮すると、単に問題の生じている箇所のみに着目するだけではなく、流域全体を視野に入れることが従来にもまして重要。 

(2)水循環系の機構把握、評価及び関連情報の共有 

  • 健全な水循環系構築のための施策の推進にあたっては、流域の水循環機構を解明・把握し、流域の自然、社会条件を踏まえ、水循環系の健全性の実態を把握し、問題点を抽出するとともに、その具体的問題点に即した効果的、効率的な施策を講じることが必要。 
  • その中で、水循環系の健全性を評価するに際しては、これをいかに評価すべきか、手法の確立も含めた多面的な検討を進めるとともに、水循環に密接に関連する情報も含め、流域の各主体が水循環系の情報を共有することも必要。 

(3)流域における各主体の自主的取り組みの推進(役割分担、連携、計画策定等) 

  • 水循環系は、流域の自然条件、社会経済活動の状況、水に関する歴史的背景等、流域により千差万別であるため、具体的施策は流域ごとに異なる。 
  • 流域における効果的な取り組みのためには、流域ごとの特性に応じ、流域内の行政・住民・事業者等の各主体が連携し、それぞれが主体的に取り組むことが必要。 
  • 具体的には、流域内の各主体が健全な水循環系に関する理念と当該流域における問題点に関する認識を共有するとともに、各主体の適正な役割分担を踏まえ、住民・事業者等が自主的に取り組むことを推進するとともに、行政も含めた連携が必要。 
  • これらの取り組みを推進し、各主体の合意において、流域ごとに水循環健全化に向けた計画の策定が望まれる。 


 
 
 
 

4.水循環系の問題点ごとの主な要因と対応策のイメージ

(1)水循環系の問題点ごとの主な要因
 水循環系の問題点ごとの主な要因を、以下のように整理した。

  1)通常時の河川流量の減少、水需給の逼迫、渇水の頻発、渇水被害ポテンシャルの増大

  • 少雨化傾向、多雨・少雨の較差拡大  
  • 流域の涵養機能、保水・遊水機能の低下  
  • 各種用水需要の増大  
  • 各種施設の整備等による水循環系の変化  
  • 渇水に対する社会・経済の弾力性低下  等  

  
  2)都市型水害の多発、洪水被害ポテンシャルの増大 

  • 都市への急激な人口・産業の集中及び都市域拡大  
  • 流域の涵養機能、保水・遊水機能の低下  
  • 各種施設の整備等による水循環系の変化  等  

  
  3)非常時の用水確保の困難化 

  • 水面・水辺空間・緑地空間の減少  
  • 各種施設の整備等による水循環系の変化  等  

  
  4)水質汚濁の進行と新たな水質問題の発生 

  • 水質汚濁負荷の増大、汚濁物質の多様化  
  • 流域内の自然浄化機能の低下  
  • 安全な水、おいしい水のニーズの増大  
  • 地域における水管理体制の弱体化  等  

  
  5)地下水位低下、湧水枯渇、地盤沈下 

  • 流域の涵養機能の低下  
  • 地下水の過剰採取  等  

  
  6)都市におけるヒートアイランド現象の一因 

  • 各種施設の整備等による水循環系の変化  
  • 水面・水辺空間・緑地空間の減少  等  

  
  7)生態系への悪影響 

  • 水質汚濁負荷の増大、汚濁物質の多様化  
  • 流域内の自然浄化機能の低下  
  • 地域における水管理体制の弱体化  
  • 流域の涵養機能、保水・遊水機能の低下  
  • 各種施設の整備等による水循環系の変化  等  

  
  8)親水機能の低下、水文化の喪失 

  • 都市への急激な人口・産業の集中及び都市域拡大  
  • 水面・水辺空間・緑地空間の減少  
  • 水質汚濁負荷の増大、汚濁物質の多様化  
  • 地域における水管理体制の弱体化  
  • 各種施設の整備等による水循環系の変化  等 
     

     

(2)水循環系の問題点に対する対応策のイメージ
 水循環系の問題点に対する対応策のイメージを、その主たる目的に応じて整理したものを以下に例示する。
 
  1)@流域の貯留浸透・かん養能力の保全・回復・増進(水を貯える・水を育む) 

  • 森林の適正管理による水源かん養機能の維持・向上  
  • 農地の適切な保全・整備・利用による自然循環機能の維持増進  
  • 都市域における緑地の保全・整備  
  • 河川護岸等の再自然化による浸透能力増進  
  • 雨水貯留浸透施設(調節池等)の整備   等  

  
  2)水の効率的利活用(水を上手に使う) 

  • 節水、水利用の合理化  
  • 雨水の有効利用、下水処理水等の再利用  
  • 工業用水の回収利用の推進  
  • 下水処理水等の河川還元  
  • 流域を越えた相互水運用  
  • 用途間の水転用  
  • 異常渇水時の円滑な水融通  
  • 災害時等に備えた身近な水源の整備と用水供給システムの確保  
  • 既存施設の機能維持・向上(ダム群連携等)   
  • 自然・社会事情の変化に対応した水資源開発  
  • 地下水利用の適正化と代替水源の確保   等  

  
  3)水質の保全・向上(水を汚さない・水をきれいにする) 

  • 水質汚濁負荷の発生源対策の推進  
  • 汚水処理施設の整備促進、高度処理の推進  
  • 生活排水負荷を抑制するための住民の取り組みの支援  
  • 非特定汚染源対策の推進  
  • 森林、農地、水域における保全・浄化機能の維持・向上  
  • 公共用水域及び地下水の直接浄化対策の推進  
  • 水道における高度浄水処理  
  • 取排水地点の再編等による取排水システムの最適化  
  • 有害化学物質等のモニタリングと調査研究の推進   等  

  
  4)水辺環境の向上(水辺を豊かにする) 

  • 都市域、集落内の水面確保  
  • 河川・水路等の維持流量、環境用水の確保  
  • 水辺の保全・整備  
  • 環境との調和に配慮した施設整備   等  

  
  5)地域づくり、住民参加、連携の推進(水とのかかわりを深める) 

  • 治水・雨水対策と洪水被害が広がりにくい地域づくり等の推進  
  • 農業用水路等の環境保全に向けた地域ぐるみの対応の促進  
  • 流域内の各種主体間や上下流の連携・協力、住民主体の取り組みの促進  
  • 水文化の保存、再生、創出   等  


 関係省庁連絡会議設置当初の申し合わせ(H10.8)
 

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