水の郷百選  第7回全国水の郷サミット開催

土地・水資源局水資源部 水源地域対策課


1 はじめに
我が国においては、「豊葦原(とよあしはら)の瑞穂(みずほ)の国」と言われるほど豊かな水があり、日常生活で水を上手に利用したり活用したりする中から 地域固有の水文化が形成されてきました。
しかしながら、近年の急激な経済発展の中で利便性が強く求められるようになり、水利用の形態も変化したことから、日常生活における水のありがたさや関心が 薄れ、地域固有の水とのかかわりが衰退するとともに、水利用や水環境の保全に対する関心が薄れてきたものと考えられます。
このため、21世紀において、潤いのある社会、水と緑の美しい国土を形成していくためには、地域の風土に根ざした個性豊かな水と人とのかかわりをあらため て見直してみることが必要となっています。
「水の郷」は、この様な認識のもと、水と人とのかかわりにおいて、地域固有の水をめぐる歴史や生活文化を維持・発展させるとともに、優れた水環境の保全に 努め水を活かしたまちづくりに優れた成果をあげている地域を再発見し、これを広く国民に紹介していくことを目的として、全国107の地域について国土交通 省(旧国土庁)で認定しているものです。

2 水の郷サミット
水の郷に認定された市町村は「全国水の郷連絡協議会」を組織し、水環境の保全及び水を活かしたまちづくりに関する活動についての普及啓発・情報交換を図る ため、水の郷サミットを平成7年度から毎年実施しております。

3 第7回全国水の郷サミットの概要
本年度のサミットは、10月25、26日に全国水の郷連絡協議会及び西条市の主催により、西条市総合文化会館をメイン会場とし実施されました。
初日は、サミット全国大会が行われ、冒頭、主催者を代表し全国水の郷連絡協議会会長である伊藤宏太郎西条市長から挨拶がありました。
続いて、田丸頼一千葉大学教授により、「水を活かしたまちづくり」と題した基調講演、川勝平太日本文化研究センター教授による記念講演、井上繁常磐大学教 授をコーディネーターとしたパネルディスカッション「水文化を育む『うちぬき』in SAIJO」が行われ、最後に地元の子供たち(緑の少年団)により「水の郷宣言」が発表されました。
また、翌日(26日)には、西条の「うちぬき」に係る施設やアクトピア事業による親水公園などについて現地視察が行われサミットは終了しました。

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開会セレモニー
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会長あいさつ

4 「21世紀の宝は水の文化」 −記念講演から−
 本日の講演の中で一番申し上げたいことは、「21世紀を水の文化の世紀にしなければならない」ということです。日本の国土面積の7割弱は森に覆われた山 であり、その山が美しい水を育んでいる。その、日本の水文化を拠点にして、世界に「水の文明」として発信していく決意をたてるべき時が来たということであ ります。
 西欧地域は、石炭を燃やして産業革命を起こし、いわゆる火の文化を創ってきた。火の文化は、経済力・軍事力を上げますが、一種の破壊的な力を持った文明 であります。西欧地域では、火の文明をもって森を破壊してきたことを反省し、その再生に取り組むなど、文明の流れは火の文化から水の文化へと移り変わりつ つあります。
一方、日本は、明治以降、火の文化をマスターすることに成功し、今日まで来ていますが、火の文化が入る以前の日本は、自分のところにある資源のみで国づく りをしており、自然の再生をせざるを得なかった。
 そのため、日本は、独自に森を育み、森林を育むことによって美しい水を保ち、その水がきれいであるということによって、美しいということから水を連想さ せるような、水と深く結びついた文化を形成してきました。
 また、日本の国土は、亜寒帯から亜熱帯、高山地域と地球の生態系が詰まっており、日本のそれぞれの風土に応じた水利用の仕方を水文化として発信すること は、世界の類似した生態系を持つ地域のモデルとなり得ます。
 ゆえに、この日本の水文化を、世界に「水の文明」として発信していくという、そういう決意をたてるべき時が来たと申し上げる次第であります。
 (講演記録をもとに事務局で要旨を作成)

5 おわりに
今後とも、「水の郷サミット」等を通じ、全国の水の郷百選に認定された市町村等が連携し、地域固有の水をめぐる歴史や生活文化を維持・発展させ、水環境の 保全、水を活かしたまちづくりの促進が図られるよう期待する次第です。
   

*「うちぬき」
 西条市内にひろがる地下水の自噴井。鉄パイプを帯水層に打ち込む(深さ15〜20m)と、自然に水がわき出すことから「うちぬき」と呼ばれている。一日 の自噴量は約9万トン。

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