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国土交通省 都市局 公園緑地・景観課
企業のみどりの保全・創出に関する取組みサイトの表題の画像
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(2) イギリスの政策
a. 普及推進方策の特徴
イギリスでは屋上緑化に対する政府の指導や補助金といった制度は整備されていない。 しかし、アーバンルネッサンス、グリーンベルト、生物多様性行動計画などの政策に関連して、屋上緑化を実施する例が増えている。
1938年、最も有名なイギリスの屋上庭園の一つ Derry and Toms(デパート)における屋上緑化が整備された。 都市における緑豊かな空間の提供が目的であった。
1970〜1980年代、見た目の美しさや周囲の景観と調査させることなどを目的として、オフィスビルなどに屋上庭園がつくられるようになった。 雑誌Architect Journalに2年間にわたり緑化技術と屋上緑化例が詳細に紹介されるなど、技術情報に関する認知度が高まった。
1980〜1990年代、政府機関であるBiodiversity Action Plan(BAP)とEnglish Natureによりチョウ、クモ、コガネムシ、ハチ類の調査が実施された。 この結果からロンドン市内では、更地が生物多様性に重要な役割を果たしており、ミドリシジミチョウなどはこのような更地のみで見られることが分かった。
1990年代、環境に配慮した建物の整備が注目を集め、環境改善効果に重点が置かれるとともに屋上緑化が徐々に増加した。
2000年以降、「生物多様性の保全」のために屋上緑化が導入された。
2003年より、Livingroofs.org、Royal Holloway University of Londonが協力し、 生物多様性のための屋上緑化デザイン、培地、植栽の選択の研究が始まった。 ロンドンでは、クロジョウビタキの生息地を提供するために、200,000 m2の大規模な屋上緑化が予定されている。
シェフィールド大学では、管理・潅水がほとんどなく、培地の厚さが20cm以下でどのような植物が生育することができるのか研究が行われるようになった。 これらの研究の成果に基づき、Moorgate Crofts Business Centre(Rotherham)への導入植物が決定されるなど、 大学の研究成果が行政を通じて実際の屋上緑化に導入された。
ロンドンでは、セダム緑化が導入されるケースが多かったが、 単一の植栽の屋上緑化では生物多様性の効果はあまり期待できないことが研究により判明してきたため、ブラウンルーフが推奨され始めた。 ブラウンルーフは前述のスイス、特にバーゼルが研究の中心であり、イギリスとスイスの共同プロジェクトによってその技術がイギリスに導入された。
ロンドンでは、ブラウンルーフの整備においても、 スイスにおける自然環境の復元を主眼としたものに加えイギリスの園芸の知識を応用した景観的にも優れたものが整備されている。

クロジョウビタキ(Livingroof.org)
■ 図-5  クロジョウビタキ(Livingroof.org)

b. 整備事例
● 歴史的な屋上庭園:デリー・アンド・トムズ(ロンドン)
イギリスで最古の屋上庭園、1938年公開
イングリッシュ・ウッドランド庭園、チューダーコート庭園、スペイン庭園
8000m2、400種類の植物 カモやフラミンゴも生育
1.5mの土壌、2400kg/m2 (最大荷重)

デリー・アンド・トムズ(ロンドン)   デリー・アンド・トムズ(ロンドン)
■ 図-6  デリー・アンド・トムズ(ロンドン)

● ゲイトウエイハウス(ベイジングストーク)
1976年完成
緩衝材としての役割
潅水システムに雨水を利用
屋上庭園のコスト  約2000万円
どの窓からも庭園が見えるように工夫

ゲイトウエイハウス(ベイジングストーク)   ゲイトウエイハウス(ベイジングストーク)
■ 図-7  ゲイトウエイハウス(ベイジングストーク)

● シャロー小学校(シェフィールド)
スイスと同様の生物多様性のための屋上緑化
イギリスでは、粗放的な手法でも花が咲く緑化が求められることが多い
屋上の通路が見えるところーワイルドフラワー
奥のエリア:自生種、地域の特色を反映した草地

シャロー小学校(シェフィールド)   シャロー小学校(シェフィールド)   シャロー小学校(シェフィールド)
■ 図-8  シャロー小学校(シェフィールド)