建設産業・不動産業

公共工事の入札及び契約の適正化の推進について(入札契約適正化法に基づく地方公共団体あて要請)

国総入企第25号
総行行第157号
平成16年12月28日
 
各都道府県知事 殿
 
国土交通省総合政策局長
総務省自治行政局長
 
 
公共工事の入札及び契約の適正化の推進について
 
 公共工事の入札及び契約の適正化については、従来より必要な改善措置を講じるよう要請してきたところであり、特に、「公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律」(平成12年法律第127号。以下「入札契約適正化法」という。)が平成13年4月1日に施行されてからは、同法の厳正な運用について要請してきたところです。
 これまでの各地方公共団体の入札及び契約の適正化への取り組みにより、全体としてはその改善が見られるものの、今般、入札契約適正化法に基づき行われた、公共工事の各発注者による「入札契約適正化法」及び「公共工事の入札及び契約の適正化を図るための措置に関する指針」(平成13年3月9日閣議決定。以下「指針」という。)の措置状況調査の結果(別添参照)によると、同法において各発注者に法律上義務付けられた事項であるにもかかわらず、一部の地方公共団体においては、未だ措置されていない事項があるとともに、指針において発注者に措置するよう努めることを求めている事項についても、その実施が不十分な事項が見受けられます。
 このような調査結果を踏まえつつ、昨今の入札及び契約をめぐる動向を勘案し、各地方公共団体におかれては、入札契約適正化法において義務付けられている措置であって未実施のものについては、可及的速やかに措置を講ずるとともに、同法第18条に基づき、下記の入札及び契約の適正化のための措置を講ずるよう、要請します。
 各都道府県におかれては、貴都道府県内の市区町村に対しても、入札及び契約のより一層の適正化が進むよう、本要請の周知徹底をお願いします。
 
 

Ⅰ 昨今の公共工事の入札及び契約を巡る動向に鑑み特に対応を強化すべきであると認められる事項

 
1.談合等の不正行為及び発注者の関与の防止の徹底
 
(1)公共工事の入札及び契約の事務に携わる職員が談合等の不正行為に関与することはあってはならないことであるが、発注者職員が逮捕される事件も発生しており、未だ不正行為が後を絶たない状況であるため、各地方公共団体においては、このような現状を重く受け止め、各般の措置を総合的に講ずることにより不正行為の防止の徹底に全力を尽くすとともに、不正行為に対しては厳正に対処すること。
 
(2)このような観点から、その職員に対し、公共工事の入札及び契約に関する法令等に関する知識を習得させるための教育、研修等を適切に行うとともに、入札及び契約について審査等を行う入札監視委員会等の第三者機関を設置するなど、必要な対策の実施に積極的に取り組むこと。
 
(3)また、入札契約適正化法第10条に基づく公正取引委員会への通知義務を適切に実施するため、談合情報を得た場合の取扱要領の策定及び公表を推進することと併せて、談合情報対応のための内部での連絡・報告の体制を整備し、不正行為の排除の徹底に努めること。
 
2.指名停止措置等の適正な運用の徹底
 
 指名停止措置については、入札及び契約に係る不正行為の排除を図る観点から適切に運用されるべきものであり、その恣意性を排除し客観的な実施を担保するため、あらかじめ指名停止基準を策定し公表するとともに、「工事請負契約に係る指名停止等の措置要領中央公共工事契約制度運用連絡協議会モデル」及び「工事請負契約に係る指名停止等の措置要領中央公共工事契約制度運用連絡協議会モデルの運用申合せ」、さらには「工事請負契約等に係る指名停止措置の適切な運用等について」(平成13年12月13日付け総行行第199号・国地契第45号 総務省自治行政局行政課長・国土交通省大臣官房地方課長通知。別添参照)を参考に、必要に応じ基準の見直しを行い、その適切な運用に努めること。この際、同通知において、排除勧告応諾等の時期を待たずして立ち入り調査や排除勧告がなされた時点で指名停止措置を講じることや、未だ指名停止措置要件には該当していないにも拘わらず、指名停止措置要件に該当する疑いがあるという判断のみをもって事実上の指名回避を行い、事業者に対して不利益な取扱いをすることについては、望ましくない運用事例として掲げられていることに十分留意し、慎重に対応すること。
 
3.ダンピング受注の防止の徹底
 
(1)いわゆるダンピング受注は、工事の手抜き、下請けへのしわ寄せ、労働条件の悪化、安全対策の不徹底等につながりやすいことに加え、公正な取引秩序を歪め、建設業の健全な発達を阻害するおそれがあることから、低入札価格調査制度及び最低制限価格制度を適切に導入・活用し、ダンピング受注の排除を徹底すること。
 また、低入札価格調査制度の運用に当たっては、低入札価格調査制度の調査要領の策定及び公表を推進するとともに、調査の実績を踏まえた調査基準価格の適宜見直し、調査結果の公表等により、適切な調査の実施と調査結果の有効な活用を図られたい。
 
(2)この際、最低制限価格の事前公表については、当該価格と同額での入札による抽選落札を増加させ、適切な積算を行わず入札を行った業者が受注する事態が生じることも懸念されるため、地域の実情を適切に考慮し、事前公表の実施の適否についても十分検討し、これらの問題が生じることがないよう取り扱うこと。
 
(3)さらに、低入札価格調査基準価格を下回る価格により落札した者と契約する場合における措置として、工事費内訳書の提出の徹底や工事の重点監督を行うほか、昨今各発注機関において新たに実施されている、配置技術者の増員の義務付け、履行保証割合の引上げ、前払金支払割合の引下げ等は、適正な施工の確保や受注企業が工事途中で倒産した場合等の損失の軽減を図るために有効な手段であるとともに、これらを契約締結時に行うことを入札公告時にあらかじめ示すことにより、経営状態が悪化している企業の排除が図られ、ひいては工事の確実な履行等を図ることができるものであることから、積極的に導入を検討すること。
 

Ⅱ 措置状況調査の結果から引き続き実施を推進することが必要であると認められる事項

 
1.入札及び契約の過程並びに契約内容の透明性の確保
 
(1)入札及び契約に関する情報の一層の公表の推進
 競争参加者の経営状況及び施工能力に関する評点又は当該点数と工事成績その他の各発注者による評点の合計点数、等級区分を定めている場合の基準の公表は、入札手続きにおける透明性及び公平性を確保するための基本的な事項であることから、未だこれらの公表を実施していない地方公共団体はできる限り速やかに公表すること。
 また、指名競争入札における指名基準の策定・公表については、指名行為に係る発注者の恣意性を排除し、不正行為の未然防止に資するものであることから、各地方公共団体は速やかに策定し、公表すること。
 なお、予定価格の事前公表については、その価格が目安となって競争が制限されること、建設業者の見積り努力を損なわせること、談合が一層容易に行なわれる可能性があること等にかんがみ、各地方公共団体においては、地域の実情を適切に考慮し、事前公表の実施の適否についても十分検討し、これらの問題が生じないよう取り扱うこと。
 
(2)第三者機関等の活用による入札及び契約の過程並びに契約の内容の透明性及び公平性の確保の推進
 入札監視委員会等の第三者機関が設置されていない地方公共団体においては、早急に設置すること。なお、市区町村については、各地方公共団体の規模、第三者機関の運営コスト等の実状も踏まえ、複数の地方公共団体による第三者機関の共同設置、地方自治法第195条に規定する監査委員を活用するなど既存の組織を活用すること等により、入札及び契約の透明性の確保と不正行為の排除に積極的に努めること。
 
(3)苦情等への適切な対応の推進
 入札及び契約に係る透明性を確保し、かつ公正な競争を促進するため、非指名理由の公表を推進するとともに、入札及び契約の過程に係る苦情に対する処理方策の策定及び公表、入札監視委員会等第三者機関の活用など、手続の透明性を一層高め、入札及び契約に係る苦情を中立公正に処理する仕組みを整備すること。
 
2.公正な競争促進のための入札及び契約の方法の改善
 
(1)適切な入札方式の実施及び適正な企業評価に基づく受注者選定の推進
 入札方式については、工事の規模、発注に係る業務執行体制等を踏まえつつ、一般競争入札、公募型指名競争入札又は工事希望型指名競争入札等を適切に実施すること。
 特に、昨今、一般競争入札の拡大が進む一方で、施工能力の乏しい不良・不適格業者の応札が指摘されていることから、適正な施工の確保に支障が生じないよう、工事成績評定、資格審査の強化を図ることとし、例えば、同種工事の実績を競争参加の要件とするとともに、発注者支援データベースの活用等によりその確実なチェックを行うなど、適正な施工の確保のための取組みの推進に努めること。また、工事成績評定の要領の策定、工事成績評定や資格審査のための業務執行体制の充実に努めること。
 なお、十分な技術力を有しない地方公共団体については、企業評価に係る 技術審査、監督・検査等における外部機関の活用等に努めること。
 
(2)入札時における工事費内訳書の提出等の促進
 入札時における工事費内訳書の提出は、談合、ダンピング等の不正な入札の防止に特に有効であるため、各地方公共団体はこれを早急に実施すること。
 なお、技術者の不足等業務執行体制が不十分な地方公共団体は、他の発注者の具体的な活用方法を参考にしつつ、工事費内訳書の有効な活用を図ること。
 
3.適正な施工の確保
 
(1)施工体制台帳の写しの発注者への提出等の徹底
 適正な施工体制の確保のためには、入札契約適正化法第13条において受注者に提出が義務付けられている施工体制台帳の提出により現場の施工体制を把握し、適切に点検を行うことが重要である。このため、各地方公共団体においては、公共工事の監督・検査の充実と併せて、受注者による施工体制台帳の提出を徹底し、今般改正の施工体制台帳等の活用マニュアルを参考に適正な施工体制の確保に努めること。
 また、施工体系図については、第三者でも現場の施工体制を簡明に確認できるよう適切な掲示を行うとともに、開示請求等に対する施工体制台帳の適切な開示に努めること。
 
(2)施工体制把握のための要領、工事の監督・検査の基準の策定及び公表の推進
 公共工事の適正な施工を確保するとともに、施工能力の乏しい不良・不適格業者の排除の徹底を図るため、工事の監督・検査の強化を図ることとし、各地方公共団体においては、施工体制把握のための要領、工事の監督・検査基準等の策定及び公表を推進すること。
 なお、当該要領を未策定の地方公共団体については、既に策定・公表している他の発注者の要領を参考にしつつ、早急に策定に取り組むとともに、技術者の不足等業務執行体制の整わない場合には監督・検査の外部機関への委託も含め、工事の監督・検査の充実に努めること。
 
(3)発注者支援データベースの活用の推進
 各地方公共団体においては、発注者支援データベースを積極的に活用し、入札参加者の選定及び落札者の決定に当たって、入札参加者又は落札者が配置を予定している監理技術者の工事現場への専任を的確に確認し、不良・不適格業者の排除を図るとともに、適正な施工体制の確保に努めること。
 
4.電子入札の導入等の推進
 
 電子入札は、事務の簡素化や入札に係る費用の低減が図られるとともに、併せて入札公告等の情報をインターネットで公表することにより、競争参加資格を有する者が公共工事の入札に参加しやすくなり、競争性の一層の向上に資するものであることから、可能な限りその導入に努めること。
 なお、電子入札の導入に当たっては、導入に要する地方公共団体の負担増も踏まえ、地方公共団体が入札手続の電子化を計画的かつ円滑に検討することができるよう、国においては交付税措置等の必要な施策を講じているところである。
 
( 参 考 )
 
 

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