建設産業・不動産業

犯罪収益移転防止法の改正について

1.犯罪収益移転防止法の改正について

 

 ■平成2541日より改正犯罪収益移転防止法が施行されます。
  *正式名称は「犯罪による収益の移転防止に関する法律」ですが、以下では「犯罪収益移転防止法」と称します。

 

平成23428日、特定取引を行うに際しての確認事項の追加等を内容とした「犯罪による収益の移転防止に関する法律の一部を改正する法律」(平成23年法律第31号)が公布されました。

*下位法令(施行令及び施行規則)についても所要の改正が行われています。

 

この改正法は、平成25年4月1日より施行されます。

*罰則強化に関する部分のみ平成23528日に施行されています。

 

<法令関係>

01 犯罪による収益の移転防止に関する法律の一部を改正する法律(平成234月改正)【条文】【新旧対照条文

02 犯罪による収益の移転防止に関する法律(平成235月現在)

03 犯罪による収益の移転防止に関する法律の一部を改正する法律の施行に伴う関係政令の整備等及び経過措置に関する政令(平成243月改正)【条文】【新旧対照条文

04 犯罪による収益の移転防止に関する法律の一部を改正する法律の施行期日を定める政令(平成243月制定)【条文

05 犯罪による収益の移転防止に関する法律施行規則及び疑わしい取引の届出における情報通信の技術の利用に関する規則の一部を改正する命令(平成243月改正)【条文】【新旧対照条文

 

 <参考資料>
 法改正の概要を資料形式でまとめました。
 プリントアウトしてご活用ください。(改正概要資料:A4横版 全11ページ

 

■法改正の5つのポイント

 

今回の法改正でのポイントは、以下5点です。

 

[1]取引時の確認事項の追加(改正法41項)

特定事業者(宅地建物取引業者)は、特定取引※1を行うに際し、本人確認として、その顧客の本人特定事項※2を確認することとされていますが、今回の法改正により、特定取引を行うに際しての確認事項について、この本人特定事項に加えて、新たに次に掲げる事項を確認すべきことが義務付けられました。

○取引を行う目的

○職業又は事業の内容 (*個人顧客の場合は「職業」、法人顧客の場合は「事業の内容」)

○実質的支配者3の有無と本人特定事項 (*法人顧客の場合のみ)

○資産及び収入の状況 (*ハイリスク取引の場合のみ)

※1)特定取引…宅地・建物の売買契約の締結又はその代理若しくは媒介

※2)個人顧客の場合は氏名・住居・生年月日。法人顧客の場合は名称(商号)・本店所在地

※3)株式会社等で25%以上の議決権を有する者等が該当するものとして定義されています

 

[2]ハイリスク取引の類型の追加(改正法42項)

なりすましの疑いがある取引・取引時確認に係る事項を偽っていた疑いがある顧客との取引・特定国等※に居住・所在している顧客との取引の3類型が、マネー・ローンダリングに利用されるおそれが特に高いと認められる取引(=「ハイリスク取引」)と位置付けられ、これらの取引については、取引時確認として行う確認事項のうち、「本人特定事項」と「実質的支配者」について、より厳格な方法で確認することとされました。

また、このハイリスク取引が200万円を超える取引であるときは、「資産及び収入の状況」についても確認することとされました。

※)改正令12条2項において、イランと北朝鮮が指定されています(H24.3現在)。

 

[3]取引時確認等を的確に行うための措置の追加(改正法10条)

取引時確認等の措置を的確に行うため、特定事業者は、その使用人に対して教育訓練の実施等に努めなければならないとされました。

 

[4]特定事業者の追加(改正法22項)

振り込め詐欺等の犯行実態等を踏まえ、あらたに「電話転送サービス事業者」が特定事業者に追加されました。

 

[5]罰則の強化(改正法24条以下)

本人特定事項の虚偽申告及び預貯金通帳の不正譲渡について懲役刑の新設及び罰金額の引き上げを行う等の措置がなされました。

 

 


■今回の法改正を受け、課長通知を発出しました

 

国土交通省では、改正法が施行されるに当たり、特定事業者である宅地建物取引業者が同法で義務付けられる措置を履行するに際して留意すべき事項をとりまとめ、不動産関係団体及び関係行政機関(北海道開発局、各地方整備局、沖縄総合事務局及び都道府県)に対して不動産業課長通知として発出いたしました。

同通知では、改正法4条で規定される取引時確認について、その確認方法のほか、確認事項である「取引を行う目的」と「職業・事業内容」の範囲等についてまとめています。

 

同通知の内容も踏まえ、各措置の実施に遺漏がないよう、お願いいたします。

 

○犯収法の改正概要及び改正犯収法の施行に当たり宅地建物取引業者が留意すべき事項

(平成24年12月21日 国土交通省 土地・建設産業局 不動産業課)

 

 

なお、平成2024日付けで公表しております「不動産の売買における疑わしい取引の参考事例」につきましても、今回の法改正を受け、条項移動の修正が必要となったことから、若干の語句修正もあわせ、あらためて策定・公表いたしました。
*内容自体の改正はございません。

 
 ○不動産の売買における疑わしい取引の参考事例

(平成24年12月21日 国土交通省 土地・建設産業局 不動産業課)

 


2.改正犯罪収益移転防止法上の義務
 
 今回の法改正により、特定事業者には以下の義務が課されることとなります。

 

[1]取引時確認の実施(改正法4条)

※改正前の「本人確認の実施」に当たりますが、今回の法改正により確認すべき事項が増えたことから、その呼称も「本人確認」から「取引時確認」へと改められました。

[2]確認記録の作成・保存(改正法6条)

※今回の法改正により、「本人確認記録」から「確認記録」に呼称が改められたほか、確認事項の追加を受け、記録すべき事項も増えています。

[3]取引記録の作成・保存(改正法7条)

[4]疑わしい取引の届出(改正法8条)

[5]取引時確認等を的確に行うための措置(改正法10条)

※特定事業者に義務付けられる上記[1]~[4]の措置を的確に行うため、特定事業者は、その使用人に対して教育訓練を実施するなどの必要な体制整備に努めなければならないとされました。

 

これらの措置の的確な実施により、不正な資金が移転された場合の追跡の可能性を確保し、訴追や剥奪を免れようとする行為を困難にさせ、マネー・ローンダリングを防止します。

 


3.確認記録
 

確認記録の様式については法令上での指定はありません。

改正規則17条で規定される記録すべき事項を網羅した形で、法改正前と同様に、各宅地建物取引業者において任意に作成していただく必要があります。

 

なお、今回の法改正により確認事項が増えたことから、確認記録に記録すべき事項も追加されています。

下表は、確認記録への記録事項に関する法改正前と改正後の比較表です。参考にしてください。

 

 

旧法時の本人確認記録への記録事項(規則10条)

改正法による確認記録への記録事項(規則17条)

1

本人確認を行った者の氏名

1

取引時確認を行った者の氏名

2

本人確認記録の作成者の氏名

2

確認記録の作成者の氏名

3

 

本人確認書類の提示を受けたときは、

提示を受けた日付・時刻

3

本人確認書類の提示を受けたときは、

提示を受けた日付及び時刻

4

 

本人確認書類又はその写しの送付を受けたときは、

送付を受けた日付

4

本人確認書類又はその写しの送付を受けたときは、

送付を受けた日付

5

取引関係文書を顧客に送付したときは、送付した日付

5

取引関係文書を顧客に送付したときは、送付した日付

6

取引関係文書を顧客に交付したときは、交付した日付

6

取引関係文書を顧客に交付したときは、交付した日付

 

 

7

ハイリスク取引における本人特定事項の確認に際して本人確認書類若しくは補完書類の提示を受け、又は当該書類若しくはその写しの送付を受けたときは、当該提示又は当該送付を受けた日付

 

 

8

取引を行う目的、職業・事業の内容及び実質的支配者並びに資産及び収入の状況の確認を行ったときは、当該確認を行った日付

7

本人確認を行った取引の種類

9

取引時確認を行った取引の種類

8

本人確認を行った方法

10

本人特定事項の確認を行った方法

9

本人確認書類の提示を受けたときは、その書類の名称・記号番号

11

本人特定事項の確認のために本人確認書類又は補完書類の提示を受けたときは、当該書類の名称、記号番号

10

本人確認書類とは別の書類で現住居又は現本店所在地を確認したときは、その書類の名称・記号番号

12

現在の住居等の確認を行うために本人確認書類又は補完書類の提示を受けたときは、当該書類の名称、記号番号

11

法人顧客について、本店に代えて営業所等に取引関係文書を送付することで本人確認を行ったときは、その営業所等の名称・所在地及びその営業所等の確認の際に提示を受けた書類の名称・記号番号

13

法人顧客について、本人確認書類又は補完書類に記載のある営業所等に取引関係文書を送付又は交付したときは、当該営業所の名称及び所在地並びに当該書類の名称、記号番号

12

顧客の本人特定事項

14

顧客の本人特定事項

13

代表者等による取引のときは、代表者等の本人特定事項とその代表者等と顧客との関係

15

代表者等の本人特定事項、当該者と顧客との関係及び当該者が当該顧客のために特定取引等の任に当たっていると認めた理由

14

国等との取引のときは、代表者等の本人特定事項と

その代表者等と国等との関係及び当該国等を特定するに足りる事項

 

 

 

 

16

顧客が取引を行う目的

 

 

17

顧客の職業又は事業内容及び顧客が法人のときは事業内容を確認した方法及び確認した書類の名称

 

 

18

実質的支配者の有無及び当該有無を確認した方法並びに当該確認に用いた書類の名称

 

 

19

実質的支配者が存在する場合の当該者の本人特定事項及び当該事項を確認した方法並びに当該確認に用いた書類の名称、記号番号

 

 

20

ハイリスク取引において確認した資産及び収入の状況の確認方法及び確認書類の名称、記号番号

15

顧客が自己の氏名・名称と異なる名義を用いるときは、その名義と理由

21

顧客が自己の氏名・名称と異なる名義を取引に用いるときは、当該名義及び当該名義を用いた理由

16

取引記録を検索するための事項

22

取引記録を検索するための事項

 

 

23

なりすまし又は偽りに係る取引に際して確認を行ったときは、関連取引時確認に係る確認記録を検索するための事項

 

なお、不動産関係6団体で構成する「不動産業における犯罪収益移転防止及び反社会的勢力による被害防止のための連絡協議会」において、今回の法改正の内容を踏まえた確認記録の様式例の作成準備が進められています。
出来上がり次第、こちらのHPでも参考として紹介させていただく予定です。

 

○確認記録(例)

 


4.疑わしい取引の届出
  

取引に係る業務遂行の過程で、収受した財産が犯罪収益ではないかという疑いが生じたり、顧客が犯罪収益を隠匿しようとしている疑いが生じた場合等には、「疑わしい取引」として、速やかに行政庁(免許行政庁)に届け出なければなりません。

この際、どういった場合が届出の対象になるのかは、宅地建物取引業者において、不動産業界における一般的な知識と経験をもとに、顧客の属性や取引時の状況その他の情報を総合的に勘案して判断していただくこととなります。

なお、国土交通省では、この判断にあたり、特に注意を払うべき取引を類型化し、「不動産の売買における疑わしい取引の参考事例」として取りまとめておりますので、こちらも参考にしてください。

 

○「不動産の売買における疑わしい取引の参考事例(宅地建物取引業者)」 H20.2版

 

※改正法施行後(H25.4.1~)は、が適用になります。

○「不動産の売買における疑わしい取引の参考事例(宅地建物取引業者)」 H24.12版

 

 

実際の届出に関しては、こちらをご参照ください。

○疑わしい取引の届出方法   (警察庁作成:平成22年4月) 

○疑わしい取引の届出様式   (別記様式 第1号~第3号)H25.3末までの届出様式

○疑わしい取引の届出様式   (別記様式 第1号~第3号)※H25.4.1以降における届出様式
○疑わしい取引の届出の入力要領
(警察庁作成 : H23.10版)※H25.3末までの入力要領
○疑わしい取引の届出の入力要領
(警察庁作成 : H24.12版)H25.4.1以降における入力要領

 

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