建設産業・不動産業

ジョン・コリンジ氏/Mr. Jon Collinge

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Q1: 今のお立場で環境不動産に関わりを持つようになったきっかけは何でしたか。

A1: 私はエンジニアとして多くのビルを見てきましたが、その経験の中で、サステナビリティの観点から悪い実践例(バッドプラクティス)が数え切れないほどあることを痛感してきました。サステナビリティの普及により不動産市場が改善するためには、まず既存建物への対応がとても重要な意味を持つと考えます。
会社としての立場から申し上げると、Lend Lease(※以下、LL)社では、不動産セクターにおけるサステナビリティの価値は極めて理解しやすいものだという見解です。なによりもまず、財務的・環境的・社会的あるいは健康・福祉関連といったサステナビリティの様々な便益は、環境不動産に対する需要を喚起するものです。これによりテナント、入居者、ビルのオーナー、あるいはファンドマネージャー、投資家、その他関係者にとって価値を生むことになります。もっとも、環境不動産に対して価値を考える際には、財務的な投資効率やその他の投資基準も必要ですから、通常の評価の面も併せて考えなければいけません。「グリーン」であることが必ずしもプレミアム賃料を意味するわけではありません。しかしながら、求められる環境パフォーマンスのレベルに達しないビルはやがて人気がなくなり、陳腐化していくこともまた事実です。

Q2: 環境不動産の市場形成を促進していくための一番大きな課題は何だとお考えですか。また、その解決策・方向性について考えをお聞かせください。

A2: 環境不動産の市場形成において一番大きな課題は、テナント・投資家・顧客から発信されるシグナル(信号)により把握することが出来ます。もし、テナントからの需要がないのであれば、我々が環境不動産を供給する必要はなくなるということです。同様に、投資家からサステナブルな開発を行ってほしいという明確な要請がない場合は、我々が一方的に環境価値の高いビル開発に伴う投資コストの正当性を認めてもらうことはできません。さらに、お客様がサステナブルな不動産は特に必要としないし関心もないならば、環境配慮型のショッピングセンターの開発はできません。
それから、もう一つ課題として言えることは、政府による法制度が今後どうなっていくかが不確実であるということです。将来的に環境不動産に関する法律の方向性が不透明な状況であれば、投資家が投資判断を行うことが非常に難しいといえます。
これらの課題に対する解決策に関しては、まずテナントに環境不動産の有する価値の理解が広まること、それによって環境不動産に対する需要が高まり、その結果として環境不動産の価値が向上していくことだと我々は考えています。また、投資家がグリーンに対する理解を深めていけば、我々がファンド組成の際にグリーンの要素を十分に盛り込んで展開することができます。それから、若い世代の人々はサステナビリティに対する意識が高いので、彼らが社会の主流となって環境不動産を選好するようになれば、投資家は環境不動産に対して投資を行う必要性に気付くであろうと思います。

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Q3: LL社が環境不動産のビジネスを推進するに当たって、業務方針というものが重要だと認識されているようですが、この業務方針に対して様々なステークホルダーの方々からの反応はいかがでしょうか。

A3: この質問はLL社の立場としてお話しします。まず株主、彼らはステークホルダーの中でも重要な方々ですが、私は当社の株価が今のところ過小評価されていると考えています。LL社では現在、多くのサステナブルで非常に複雑なプロジェクトを手がけており、現在シドニー中心部のバランガルーで60億豪ドルを投下して炭素・水・廃棄物がほとんど出ない極めてサステナビリティの高い開発を行っています。ただこれはまだ未完成であるため、投資家としてはプロジェクトが完成した段階でLL社を評価しようとしているようです。これは非常に複雑で政治的な要因も絡んだプロジェクトですが、是非成功させたいと当社では考えております。
一般的な話をしますと、例えば建設請負業者やコンサルタント会社などもステークホルダーとして挙げられますが、彼らは当社が手掛ける環境配慮に対する取組をよく理解して下さっており、さらに各社が自らサステナブルな取組を開始しています。彼らの様々なサステナビリティに関わる認定・資格取得に対しては当社が費用を負担しており、彼らにとってもメリットとなっていると思います。

(2010年10月28日)

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