運輸経済月例報告 今月のトピックス 運輸経済月例報告 平成9年4月のトピックス



  消費税率引き上げに伴う運輸の動向  

 鉄道旅客には、定期を中心に先買い需要が発生
 貨物は、駆け込み需要により輸送が活発化  

 平成9年4月1日より、消費税率が3%から5%に改定された。
 運輸経済月例報告のデータを基に、今回の消費税率改定前後の運輸の動向について、平成元年の消費税導入時と比較した。

(旅客輸送)

 ○ JR及び民鉄は、減少傾向を続けてきた定期が、3月にはJR12.7%(対前 年同月比:以下同じ)、民鉄7.7%の大幅増となり、元年3月(JR14.2%増、民鉄12.6%増)と同様に先買い需要による増加を示した。また、定期外もJR5.0%増、民鉄4.2%増と、最近の傾向に比べ高い伸びを示した。一方、4月には、定期がJR0.1%増、民鉄2.4%増、定期外がJR、民鉄とも4.2%減となっており、特に定期外に回数券等の先買いの反動減が現れていると考えられる。
 JR、民鉄とも、元年3月に比べ水準は低くなっているものの、ほぼ同様の動きを示している。
 ○ タクシーは、東京では、個人タクシーは運賃改定なし、法人タクシーの大部 分は従来の運賃体系のまま消費税分だけ運賃改定、一部は、短距離の部分だけ値下げして運賃改定と、消費税率改定を契機に運賃の多様化が進行した。4月は1.3%減となっているが、このところ減少傾向で推移していたこともあり、運賃改定の影響によるものかどうかは判断できない。
 ○ バス(東京)については、運賃改定が実施されなかったこともあり、顕著な 変化はみられなかった。
 ○ 航空については、元年は消費税導入の一方で通行税が廃止され、運賃値下げ が行われたのに対し、今回はゴールデンウィークが長期休暇をとりにくい曜日配列であったことなどから、4月、5月の伸び率は元年に比べて低かった。

(貨物輸送)

 ○ 百貨店売上高の大幅増が示すように、家電製品等の耐久消費財を中心に、駆け込み需要が発生し、3月の貨物輸送は活発であった。
 ○ JR貨物は、3月には駆け込み需要によるコンテナ輸送の増加(11.8%増) はあったものの、車扱いの大幅な減少傾向に歯止めがかからず、減少幅の縮小にとどまった。なお、元年には、コンテナが24.7%増と大幅増を示し、合計でも増加であった。
 ○ 特積みトラックは、3月には10.2%増と、元年(11.1%増)とほぼ同様の高 い伸びを示したが、4月には1.1%減と10ヵ月振りの減少となり、反動減があらわれたものと考えられる。一般トラックは、3月には3.3%増と元年(9.1%増)に比べて低い伸びにとどまり、駆け込み需要による輸送需要増は顕著ではなく、また、4月は3.5%減と減少に転じた。
 ○ 国内航空は、3月には10.1%増と高い伸びを示し、駆け込み需要の影響が現 れたと思われる。なお、4月(5.1%増)、5月(3.6%増)は、2月以前の水準にもどっている。

(輸送関連)

 ○ 自動車新車新規登録台数は、旅客車では、10月以降前年同月比で2桁の伸 びを続けていたが、4月(10.4%減)、5月(7.9%減)は大幅減に転じた。元年には、今回とは逆に物品税から消費税への移行で、税率の引き下げとなったために、3月以前には買い控えで減少傾向にあったが、4月以降は20〜30%の大きな伸びを続けた。 貨物車は、旅客車に比べ需要が低迷していたこともあり、3月以前にも高い伸び率はみられなかったが、4月(24.0%減)、5月(16.2%減)と激減しており、消費税率引き上げの影響といえよう。
 ○ 国内旅行取扱額は、3月にはJR切符の手配等の増加により、7.0%増であっ た。元年をみると、17.1%増と大きな伸びとなっているが、これは、当時は旅行会社で発券可能であったJR定期券の先買い需要が影響したものである。
 なお、4月は、6.6%減となっており、反動減があったものと考えられる。