運輸経済月例報告 今月のトピックス 運輸経済月例報告 平成10年7月のトピックス



   平成9年度輸送量(確報)について  
  国内貨物輸送量は景気停滞により4年ぶり減少  
  低国内旅客輸送量も低い伸びにとどまる  

 平成9年度の我が国経済は、消費税率引き上げ、金融機関の相次ぐ経営破綻、アジア諸国の経済危機の影響等により家計及び企業の景況感は悪化し、個人消費及び企業の設備投資は低調が続いた。加えて、公共投資の抑制等もあり、実質GDPは0.7%減と戦後最大のマイナスを記録した。
 このような状況の中で、9年度の国内貨物輸送量(トンキロ)は、対前年度比0.8%減と4年ぶりにマイナスに転じ、国内旅客輸送量(人キロ)は、同0.7%増と伸びが鈍化した。国際貨物は、外国為替レートが円安傾向で推移したことから、海運(暦年値)、航空(年度値)とも輸出が大幅増となったものの、輸入は微増にとどまった。出入国者数(暦年値)は、円安により入国外客数は同9.9%増と 増加したものの、出国日本人数は同0.6%増と極めて低い伸びにとどまった。
(国内貨物輸送)
 国内貨物輸送量(トンキロ)は、生産、消費の冷え込みに加え、住宅着工及び公共投資の減少等により荷動きが低調に推移したことから、内航海運、鉄道及び自家用トラックが減少し、4年ぶりの減少となった。
鉄道は、これまで好調を続けていたコンテナも0.7%増と低い伸びにとどまり、車扱いの大幅減(9.4%減)により、合計で1.4%減と前年度に引き続いて減少した。
営業用トラックは、1.4%増と伸び率は鈍化したものの増加を維持した。
自家用トラックは、建設需要の低迷が響き、3.5%減と減少に転じた。
内航海運は、貨物船がセメント、鉄鋼等の減少から0.8%減、タンカーが4.4% 減となり、合計で2.0%減と減少に転じた。
航空は、輸送力の拡充等もあり、2.0%増と伸び率は鈍化したものの、5年連続して増加を続けた。

(国内旅客輸送)
 国内旅客輸送量(人キロ)は、実質賃金の減少等により消費が冷え込んだこと等から、航空を除いた営業輸送は減少したが、自家用自動車輸送の増加が寄与したことにより、伸び率は鈍化したものの増加を続けた。
鉄道は、消費の冷え込みに加えて消費税率引き上げ前の先買い需要の反動もあり、JR、民鉄ともに減少した(JRは、定期1.4%減、定期外1.8%減、合計1.6%減、民鉄は、定期2.0%減、定期外2.2%減、合計2.1%減)。
営業用バスは、乗合が3.6%減、貸切が0.5%減とともに減少したため、合計で1.8%減と、7年連続して減少が続いている。
ハイヤー・タクシーは、3.5%減で、8年連続して減少した。
自家用自動車は、保有車両数の増加に加え、燃料油が低価格で推移したこともあり、1.8%増と増加傾向が続いている。
航空は、路線網の拡大、便数の増加、割引運賃の拡充等による需要の喚起もあり、6.1%増と高い伸びを続けた。座席利用率も0.8ポイント上昇した。
旅客船は、5.0%減で、7年連続して減少した。

(国際貨物輸送)
 我が国の輸出入数量(トン数)は、外国為替レートの円安基調及びアジア地域の経済危機の影響を受け、輸出は好調、輸入は横ばいで推移した。
海運による輸出(暦年)は、欧米向けの乗用自動車や鉄鋼が好調であったことから、7.5%増と増加に転じた。
海運による輸入(暦年)は、木材、重油等が減少したものの、鉄鉱石、原油等殆どの品目が増加したため、円安にもかかわらず2.4%増となった。
航空による輸出は、年度後半にはアジア向けが低迷したが、欧米向けの半導体や自動車部品等が好調であったことから、21.3%増と大幅に増加した。
航空による輸入は、円安により運賃負担力の弱い米国からの生鮮食料品が低調であったが、欧州からのワインの増加等により、1.3%増と増加に転じた。

(国際旅客輸送)
出国日本人数(暦年)は、これまで高い伸びを続けていたが、円安による現地滞在費の割高感や、香港ブームの終焉等により、0.6%増と微増にとどまったものの、過去最高を更新した。
入国外客数(暦年)は、円安による割安感等から、9.9%増と前年に引き続いて 高い伸びとなり、422万人と、初めて400万人を上回った。