運輸経済月例報告 今月のトピックス 運輸経済月例報告 平成10年8月のトピックス



   秋田新幹線「こまち」開業を契機とした人的交流の拡大  
  「こまち」沿線地域を中心に県外からの観光入り込み客が増加  
  首都圏〜秋田県の旅客輸送は、JRが大幅増、航空・高速バスが減少  

 秋田新幹線「こまち」は、平成9年3月22日に運行開始し、これにより東北新幹線と田沢湖線の直通運転化が図られた。東京〜秋田の所要時間は48分短縮(最も所要時間の短い列車同士での比較)し、盛岡駅での乗換の必要がなくなり、利用者利便の向上が図られた。
 こうした「こまち」効果を最大限に活用するため、官民の連携により人的交流の拡大に向けた様々な取り組みがなされたこともあり、平成9年(暦年)の秋田県への県外からの観光入り込み客数は、1,530万人、対前年比で12.5%増と大幅に増加した。
 また、9年度の首都圏〜秋田県の鉄道、航空、高速バスによる旅客輸送量は、合計で244万人、対前年度比9.5%の増加となった。内訳をみると、JRが36.5%増と大幅に増加した一方、航空が16.5%減、高速バスが8.2%減と輸送分担に大きな変化が生じた。
【首都圏と秋田県の旅客輸送量の変化】
 首都圏(東京、神奈川、千葉、埼玉、茨城、栃木)と秋田県の鉄道、航空、高速バスによる旅客輸送量は、平成9年度に244万人、対前年度比9.5%の大幅な増加となったが、これを輸送機関別にみると、
 鉄道(JR)は、146万5千人で、対前年度比36.5%増の大幅な増加となった。8年度 には、田沢湖線が改修工事で運休していたことを考慮し、7年度と比較しても26.7%の増加であった。9年度の首都圏と秋田県を除く東北地方との鉄道による輸送量が3.2%減となっていることからみると、「こまち」運行開始が大きな需要喚起につながったことが裏付けられる。
 航空は、86万5千人で、同16.5%減と減少に転じた。9年度の羽田と秋田空港を除く東 北地方の各空港との間の輸送量は6.3%増となっていることから、「こまち」への大幅な旅客のシフトによるものといえよう。なお、10年4月以降の羽田〜秋田の旅客は、対前年同月比で増加傾向にある。
 高速バスは、10万9千人で、同8.2%減と減少に転じた。低廉な運賃とともに、乗換な しで目的地に直行できるという高速バスの魅力が、「こまち」の新幹線直通運転という点で競合したことにより「こまち」へのシフトが生じたものと思われる。

【秋田県への観光入り込み客の動向】
 平成9年(暦年)の秋田県への観光入り込み客は、4,160万人で、対前年比2.6%増であった。県内客は微減であったが、県外客は1,530万人、同12.5%増と大幅に増加した。
 これを県北地域(鹿角、大館・北秋田、能代・山本、男鹿・南秋田)、「こまち」沿線地域(秋田・河辺、大曲・仙北)、県南地域(本荘・由利、横手・平鹿、湯沢・雄勝)に分けてみると、
 県北地域では、0.4%減の微減であるが、県外客は2.4%増と増加している。同地域で は、9年5月に発生した大規模な土石流により、主要な観光地である十和田湖・田沢湖間を結ぶ国道が3か月間分断されたことが影響しており、夏以降の入り込み客数は増加に転じている。また、県外客は、秋田自動車道が延伸された男鹿地域及び「こまち」に連絡した鉄道沿線である大館、能代地域での増加が目立っている。
 「こまち」沿線地域では、12.7%増、特に県外客が31.4%増と大幅に増加しており、 四半期別でみても、「こまち」が運行を開始した9年第2四半期から2桁台の増加が続き、「こまち」による集客効果が大きかったことがうかがえる。
 県南地域では、県内、県外客とも減少を続けている。同地域では、9年7月に秋田自 動車道が東北自動車道に直結しているが、その効果がまだ現れていないものと思われる。

【人的交流の拡大を通じた地域活性化の動き】
 秋田県においては、「こまち」の運行開始、秋田自動車道の東北自動車道直結に加え、大館能代空港も10年8月に供用を開始しているが、こうした高速交通体系の整備効果を生かしつつ、地域固有の自然、歴史文化、伝統芸能等を活用した魅力ある地域づくりを進め、観光等による交流拡大を通じて地域の活性化を図る動きが盛んである。
 運輸省としても、@高速交通体系の整備による観光客の移動の広域化、Aテーマルートの設定等により地域の魅力をトータルでPRすることが観光客誘致に有効なこと等を踏まえ、広域連携による観光交流の拡大を支援しており、本年11月3〜5日には、東北ブロックにおいて、第一回広域連携観光振興会議(WAC21)が開催されている。