運輸経済月例報告 平成11年12月のトピックス



ハッピーマンデーと3連休化による旅行需要の喚起について
  
  本年1月と2月の各3連休の旅客輸送等の状況は概ね増加(対前年)
  休日1日当たりでも国内旅行関連交通機関を中心に3連休効果  
         


 本年から導入されたハッピーマンデー制度による3連休の増加は国民生活にゆとりと潤いをもたらすとともに、旅行需要を喚起することで依然足踏み状態から脱していない個人消費の拡大にも資するものである。今回は、初めてのハッピーマンデーたる本年1月10日を含む3連休、及び続く2月11日〜13日の3連休の各旅客輸送等の状況を通してこの制度の効果をみることとする。

【ハッピーマンデー】
 平成10年10月国民の祝日に関する法律の一部を改正する法律が国会において成立し、平成12年から、祝日のうち「成人の日」及び「体育の日」がそれぞれ1月及び10月の第2月曜日になることになった。このいわゆる「ハッピーマンデー」により祝日の数が増えなくても3連休が増加することとなり、国民生活においてまとまった自由時間が創出されることとなった。なお初めてのハッピーマンデーとなった本年1月10日に関しては、昨年までの15日が本年は土曜日であることから、週休2日制の場合実質的に休日の1日増加という効果も持つこととなった。

平成11年1月平成12年1月
10111213141516 101112131415
17181920212223 16171819202122
24252627282930 23242526272829
31 3031
平成11年2月平成12年2月
10111213 101112
14151617181920 13141516171819
21222324252627 20212223242526
28 272829
(注)赤字は祝日及び度日曜日

【連休増加についての国民意識】
  3連休が従来よりも増加した場合にそれをどう活用するかという国民意識については、11年8月から9月にかけて総理府が行った「余暇時間の活用と旅行に関する世論調査」の中で調査されている。「3日以上の連続した休暇が増えた場合の余暇時間の過ごし方」として複数回答方式により挙げられた項目は、その割合の多い順に、
@「2泊3日以上の宿泊旅行」28.8%、A「1泊2日の宿泊旅行」25.6%、B「趣味娯楽(家庭菜園、釣り、マージャン、パチンコなど)」24.1%、C「何もしないでのんびりする」21.2%、D「友人などとの交際」19.8%、E「日帰りの行楽(ハイキング、温泉など)」18.9%、F「テレビ、ラジオ、新聞、雑誌などの見聞き」18.0%(以下省略)、となっており、増加分を旅行関連の活動に充てようとする国民の志向は高い。
 これは、同世論調査の結果中、同様に、現在の3日以上の連続休暇の過ごし方(複数回答方式)としては、多い順に、
@「テレビ、ラジオ、新聞、雑誌などの見聞き」31.0%、A「1泊2日の宿泊旅行」22.2%、B「何もしないでのんびりする」20.7%、(中略)E「2泊3日以上の宿泊旅行」16.8%、F「日帰りの行楽(ハイキング、温泉など)」16.7%(以下省略)、となっていることから、連続休暇が増加した場合には特に2泊3日以上の宿泊旅行の割合が上がることがわかる。したがって、ハッピーマンデーによる3連休化によって旅行需要が増加するとともに、その期間もより長くなることが推測される。

【本年1月の3連休の結果】
 それでは、実際に、先の1月8日(土)から10日(月)の3連休の旅行動向について各交通機関等の旅客輸送等の結果でみると、その主なものは以下のとおりであった。(図表1
 一様に各機関とも前年に比べて輸送量等を増加させている。上記世論調査の結果からみても、この増加分の中に3連休化による旅行需要喚起の効果があることは間違いないと考えられる。(なお、子供の学校の始業式が3連休後となり冬休みが事実上長期化した地域では、より3連休効果が高まったことも考えられる。)
 ただし今回は、3連休効果の他に考慮すべき要因・状況として以下のことがある。
T Y2K問題に係る代替的な旅行需要 ; この年末年始の輸送動向は、いわゆるコンピューター2000年(Y2K)問題により消費者の間に旅行等の手控えがみられたため、JRの新幹線・特急・急行、国内・国際航空等には輸送量減少の影響が顕れた。その手控え分の代替として直後の3連休の旅行需要が生じた部分があると考えられる。
U 景気動向や消費支出全体の状況 ; 対比される前年1月の我が国経済は長引く低迷の中にあり極めて厳しい状況であったため、その後の景気の改善により潜在的な旅行需要自体が増加した可能性もあるが、最近まで個人消費はなお足踏み状態を脱していないとされている(11年12月の実質消費支出は速報値で対前年比4%の減少)等のデータ面からは、こうした部分が大きいとは考えにくい。(なお後記「消答動向と旅行需要」参照)
V 天候の影響 ; 前年は鉄道等一部に積雪による運休等があったが、本年も航空等には積雪の影響があった。全体的にみれば天候による影響は大きなものではないと考えられる。
したがって、本1月の3連休の増加に関して、3連休効果以外で影響の大きい因はY2Kの影響と考えられる。  以下ではこうしたことを踏まえて2通りの方法による試算を行った。
(1)休日1日当たり輸送量による比較
 図表1の3連休効果には、平日1日分が休日になったという効果と、連休が3日に伸長したこと自体が持つ効果の2つの部分があると考えられる。「ハッピーマンデー」の趣旨は休日が増えることよりむしろまとまって伸長することにあると考えられるので、休日(前年は土日)1日当たりの輸送量で比較すれば、2つの効果のうち平日が休日になる効果が捨象されると考えられる。(図表2
 各社とも(A)/(C)は増加しているが、いずれにも上でみたようなY2Kの影響が含まれている。小田急特急や国内航空等比較的簡便な旅行に対応すると考えられる機関において(A)/(C)が比較的大きいのは、休日が増えずに伸長するだけでも一定の効果があることを示しており、こうした分野では「ハッピーマンデー」の趣旨が生きやすいものと考えられる。
(2)3連休効果の推測
 仮にその時々の消費動向を背景とした潜在的な旅行需要が前年と同程度であり、天候の影響もないとすれば、本3連休の輸送増加の要因となっているのは3連休効果及びY2Kの影響である。
 このうち3連休効果の大きさを図表1の前年1月3日間(平日1日を含む)とその次週にあった3連休(15日〜17日)との割合〔図表3(D)/(B)〕と同じと仮定した上で、図表1の増分全体からこれを差し引くと、2つの要因の構成は図表3のように試算できる。(図表3

【本年2月の3連休の結果】
 本年2月11日(金)〜13日(日)の3連休の輸送動向については、前年2月が11日(木)の祝日の後平日をはさみ土日に続く飛び石連休であったため、以下の2通りの比較を行った。(図表4))
 (E)/(F)が図表1の(A)/(B) 同様平日1日分が休日になった効果を含むのに対して、(E)/(G)には休日がまとまったことによる効果が顕れていると考えられる。なお、Y2Kによる影響については、2月3連休の場合さほど大きくはないと思われる。

【消費動向と旅行需要】
 このように、景気状況等を背景とした潜在的な旅行需要の動向を捨象すると以上のとおり試算されているが、最後に、実際の旅行消費には必ずしも景気関係の各指標とは比例的でない面もあるため、最近の収入、消費と旅行需要の関係についてみておく。(図表5
 旅行会社国内旅行取扱額は11年前半までは消費支出全体よりむしろ実質収入に呼応し、かつより大きく減少する形で推移しており、今般の景気低迷期において特に消費者の支出節約の対象となりやすかったことがうかがえる。その後秋以降再び大きく減少となっているが、これは消費支出全体の動きに対応するものである。
 したがって、本年1月及び2月の3連休の輸送動向が各機関とも最近にない大きな増加を示したのは、前年のこの時期に特に旅行が手控えられていた反動による部分も小さくはないと考えられる。現段階では、少なくとも、今回の祝日3連休化はこうした反動にとってよい契機となり、一時期にせよ最近低迷していた旅行需要を大きく喚起したことに意義があると考えられる。



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