運輸経済月例報告 平成11年6月のトピックス



東京−大阪間の旅客輸送動向
  
  輸送分担率は、新幹線が8割、航空が2割弱、高速バスが1%強  
  航空は増便効果等により大幅増、新幹線はやや減  


● 東京−大阪間の輸送機関別輸送実績の推移(平成元年度〜9年度)(図1図2図6参照

 運輸省の「旅客地域流動調査」に基づき、東京−大阪間の都府間旅客流動を新幹線、航空及び高速バスの輸送機関別に、元年度から9年度についてみると、図1のとおりである。
 新幹線は、4年の「のぞみ」導入、「のぞみ」型車両の拡充等により、高速化や快適性の向上が図られ、旅客数は概ね増加の傾向にあったが、9年度に至り景気低迷によるビジネス客の減少、航空との競争等により前年度比5.3%の減少となった。
 航空は、6年9月の関西国際空港の開港に伴う羽田−伊丹路線の減便もあって、旅客数は7年度には減少した。しかし、その後、事前購入割引の導入 及び拡充、羽田空港C滑走路供用に伴う発着枠増を活用した増便、空港アク セスの利便性向上等により、旅客数は増加傾向にあり、9年度は前年度比15.1%の増加となった。
 高速バスは、ア、新規路線の開設、イ、低廉な運賃、ウ、夜行便のため時間を有効活用できること等の理由により、旅客数は増加傾向にあり、9年度は前年度比5.4%の増加となった。
 輸送分担率の推移をみると、新幹線が元年度以来8割強を占めていたが、9年度は79.6%とややシェアを落とした。一方、航空は元年度の18.6%からその後シェアを落としたが、9年度には19.0%と微増となった。後で見るように、旅客数はその後も伸びており、シェアは増加しているものと推測される。高速バスは、元年度の0.8%から徐々にシェアを伸ばし、9年度には1.4%となった。
 なお、参考までに距離帯による輸送分担率の変化を、東京と岡山、広島及び福岡との間でみると(いずれも9年度実績)、図2のとおりである。
 新幹線のシェアは、東京−大阪間(JRの営業キロで553q、のぞみでの所要時間2時間30分)で79.6%、東京−岡山間(同733q、同3時間12分)で74.4%と優位を占めるのに対し、東京−広島間(同894q、同3時間47分)では50.3%と航空とほぼ互角のシェアとなり、東京−福岡間(同1,176q、同4時間49分)では10.2%にまで落ち、航空優位となることがわかる。

● 東京−大阪間の航空輸送の最近の動向(平成9年4月から11年6月)(図3図4図6参照

 羽田−伊丹、羽田−関西の各路線の9年4月以降の航空3社合計の月別旅客数及び1日当たり便数の推移をみると、図3のとおりである。また、各路線の特定便割引の対象便数の推移をみると、図4のとおりである。
 羽田−伊丹については、10年4月から1日当たり便数(片道ベース。以下同じ。)が20便から26便へ、さらに、11年1月から30便へと段階的に増便されており、10年度の旅客数は325万人で、前年度比25.7%の大幅増となった。一方で、利用率は9年度平均72.3%から10年度は69.4%に低下しているものの依然高水準にある。
 羽田−関西については、1日当たり20便で推移しており、10年度の旅客数は174万人で、前年度比4.0%の増加となった。また、利用率は9年度平均66.3%から10年度は66.7%に微増している。一方で、同路線では特定便割引の対象便数が拡大されており、平均運賃は低下していると考えられる。なお、11年4月から同路線の便数は24便に増便されている。

● 東京−大阪間の高速バスの最近の動向(平成8年4月〜11年6月)(図5図6参照

 東京圏−大阪圏(注1)の高速バスの9年4月以降の月別旅客数の推移をみると、図5のとおりである。
 28系統の合計旅客数でみると、9年4月以降前年同月比で5%前後の増加傾向にあったが、11年4月からマイナスを示すようになった。内訳として代表的な路線をみると、東京駅−大阪駅の路線は堅調であるが、TDL−大阪、横浜−京都といった観光需要依存型の路線が本年に入りマイナス傾向にある。理由としては、観光旅行への出控え、航空の特定便割引の対象便へのシフト等が考えられる。

注1: 運輸省「旅客地域流動調査」は東京都と大阪府間の旅客流動であるが、ここでは東京圏(東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県)と大阪圏(大阪府、京都府、奈良県、兵庫県、和歌山県、滋賀県)の高速バスの28系統を集計している。

● 東海道新幹線の最近の動向(平成9年4月〜11年6月)(図6参照

 新幹線については、東海道新幹線における断面輸送量(注2)の前年同月比の推移をみると、図6のとおりである。
 9年秋以降、前年同月比で数%のマイナスを示しているが、これは景気低迷によるビジネス客や観光客の減少、航空との競争等によるものと考えられる。

注2: 新横浜−小田原区間における断面での乗客数の合計。