運輸経済月例報告 平成11年7月のトピックス



最近の我が国経済と輸送の動向(月例報告ベース)
  
  景気はやや改善するも、旅客輸送は、航空を除き減少が続く  
  貨物輸送は、航空、特別積合せトラック等が回復傾向  


【一般経済動向】図1図2参照
 我が国経済は、実質国内総生産(GDP)が、対前年度比で9年度0.4%減、10年度1.9%減と2年連続でマイナスとなり景気低迷が続いた。四半期別にみると、9年10-12月期以降、対前期比でマイナスが続いていたが、11年1-3月期に至り、2.0%増(年率換算8.1%増)とプラスに転じ、4-6月期も0.2%増(年率換算0.9%増)とプラスを維持した。景気は、民間需要の回復力が弱く、厳しい状況をなお脱していないが、各種の政策効果の浸透などで、やや改善している。
 主要な経済指標をみると、実質賃金が9年4-6月期から対前年同期比でマイナスが続き、百貨店販売額の減少にみられるように、個人消費は低迷していたが、11年4-6月期に至り、実質消費支出がプラスに転じるなど緩やかに回復してきている。
 政府の緊急経済対策等の効果により、11年に入り公共工事着工金額及び住宅着工戸数が増加したが、鉱工業生産は低水準で概ね横ばいの状況にある。一方、雇用情勢は厳しさを増しており、雇用者数は減少し、完全失業率はこれまでの最高水準で推移している。

 以下、最近の輸送動向について、「運輸経済月例報告」のデータに基づきまとめてみる。

【国内旅客輸送】図3参照
 JRは、雇用者の減少、少子化傾向に伴う就学者の減少、中長距離利用の行楽客の減少等により、対前年同期比でマイナスが続いている。新幹線は、ビジネス客の減少、航空との競争等により10年9月から対前年同月比でマイナスが続いている。
 民鉄もJRとほぼ同様の傾向にあるが、定期・定期外に分けてみると、定期客はマイナスが続いているが、定期外客は定期券から回数券・プリペイドカードへのシフト、新規区間開業に伴う需要増等によりプラスとなる時期もみられる。
 バス(東京)は、就学者の減少、鉄道・モノレールの新路線や新駅の開業、事業所の移転・整理等の影響もありマイナスが続いている。
 タクシー(東京)も、景気低迷、企業の経費節減等によりマイナスが続き、実車率が5割を下回る状況となっている。
 航空旅客は、ローカル線ではマイナスとなる時期があるものの、幹線を中心とした輸送力の拡充や特定便割引等の割引運賃の拡充等により概ねプラスが続いている。

【国内貨物輸送】図4参照
 JR貨物は、景気低迷による全般的な荷動きの減少のほか、10年は大雨による輸送障害、石灰石輸送の路線廃止等から対前年同期比で大幅なマイナスが続いていたが、11年に入りマイナス幅が縮少しつつある。
 トラック輸送もマイナスが続いていたが、個人消費や住宅投資の回復等を反映して、特別積合せトラックが11年3月から対前年同月比でプラスに転じ、一般トラックも、マイナス幅が縮少しつつある。
 内航海運は、砂利・石灰石、セメント等の建設関連貨物の減少等によりマイナスが続いていたが、油送船は11年3月から、貨物船は4月から対前年同月比でプラスに転じた。
 航空貨物は、半導体等の一般貨物の減少によりマイナスとなっていたが、11年に入りプラスに転じた。

【国際旅客輸送】図5参照
 出国日本人数は、消費低迷や円安による割高感から9年10-12月期から対前年同期比でマイナスが続いたが、11年に入り韓国、中国等のアジア方面を中心に需要が回復し、プラスに転じた。
 入国外客数は、円安により欧米からの訪日客は増加していたが、9年12月以降の韓国の経済危機により、入国外客数の約4分の1を占める韓国からの訪日客が大幅減となりマイナスが続いた。11年に入り韓国を含むアジア経済の回復によりプラスに転じた。

【国際貨物輸送】図6参照
 外貿コンテナ(輸出)は、10年に入りアジア経済危機の影響を受け、アジア向けが自動車部品等を中心に落ち込み、対前年同期比でマイナスが続いたが、アジア経済の回復に伴い、11年4月にプラスに転じた。
 外貿コンテナ(輸入)は、9年10-12月期から国内需要の冷え込み、円安等によりマイナスが続いたが、11年に入りプラスに転じた。
 航空貨物(輸出)は、9年は北米向けを中心に好調であったが、10年に入りその反動減に加え、アジア向けの半導体製造装置、電子部品等が減少し、マイナスが続いた。11年に入りアジア経済の回復に伴いプラスに転じた。
 航空貨物(輸入)は、外貿コンテナ(輸入)とほぼ同様の傾向にあったが、11年に入りアジアからのパソコン、雑貨等が増加し、プラスに転じた。