運輸経済月例報告 平成11年8月のトピックス



我が国及びアジアの主要港湾の外貿コンテナ取扱量の推移
  
  景気低迷、アジア諸港との競争等により、我が国主要港湾は伸び悩みの傾向  
  しかし11年に入り景気動向を受けてゆるやかに増加  
     北米定期航路は、アジア発貨物の急増により、東航・西航の格差が拡大    


【我が国主要港湾の外貿コンテナ取扱量の推移】図1図2参照
 我が国港湾の外貿コンテナ取扱量(20フィートコンテナ換算個数(TEU)ベースによる。以下同じ。)は、我が国経済の規模の拡大とグローバル化の進展、コンテナ化の進展等により一貫して増加してきており、外貿定期貨物量全体の約9割を占め、国際物流の主力を担っているが、ここ数年伸び率が鈍化し、平成10年には前年比2.1%の減少に転じた。
 主要港湾(東京港、横浜港、神戸港、名古屋港及び大阪港をいう。以下同じ。)毎にみると、我が国第1位の取扱量のあった神戸港は、7年1月の阪神・淡路大震災の影響により7年は前年比50.3%減となり、その後回復しつつあるものの、以下に掲げる我が国主要港湾全般の伸び悩み傾向の中で、未だ震災前の取扱量の7割程度にとどまっている。東京港は、6年以降青海コンテナ埠頭の本格稼働等により増加傾向にあるが、その他の港は、図1のとおり、ここ数年概ね横ばい傾向にある。
 このように最近の我が国主要港湾の外貿コンテナ取扱量は、全般的に伸び悩みの傾向にあるが、これは、1)景気低迷の長期化による消費及び生産活動の停滞、2)アジアの主要港湾の国際競争力の向上に伴う我が国主要港湾への寄港航路数の減少(例えばアジア・欧州航路では、平成5年には19航路の全てが我が国港湾に寄港していたのに対して、平成8年には全24航路のうち12のみの寄港となった)、3)物流コスト低減等のため主要5大港以外の港湾へ貨物がシフトしたこと(図2において、これらの港湾のここ数年の伸びは5大港を大きく上回っている)等の理由が考えられる。
 なお、11年に入り我が国経済が消費・生産等の面でゆるやかに改善していることに伴い、主要港湾の外貿コンテナ取扱量も前年同期比でゆるやかに増加している。

【アジア主要港湾の外貿コンテナ取扱量の推移】図3参照
 香港、シンガポール、釜山等のアジアの主要港湾は、最近急速に取扱量を増加させているが、これは経済発展に伴うアジア発着貨物の増加のほか、1)6万総トンを越えるオーバーパナマックスクラスの大型船の寄港が可能な大水深(水深15m級)コンテナターミナルの整備(平成10年7月現在、シンガポール6、香港4、釜山4の設置数に対し、我が国は神戸の4のみ)2)港湾利用に係る諸料金、荷役体制等の面での使い勝手の良さ、3)船舶の入出港時に必要な港湾諸手続の電子情報処理化(EDI)の導入等から国際競争力を高めていることによる。
 ちなみに、平成元年と9年の各港の取扱量を比較したとき、香港が3.3倍、シンガポールが3.2倍、釜山が2.4倍となっているのに対し、我が国の横浜港は1.6倍、神戸港は0.8倍、東京港は1.6倍にとどまっている。
 我が国主要港湾においても、大水深コンテナターミナルの拠点的整備が進められており、また、11年10月から主要港湾において港湾EDIシステムが稼働を開始した。さらに、船社負担軽減のための港湾諸料金の改善を図る動きが出始めており、今後、より利用しやすい港湾とするための関係者の努力が期待される。

【北米航路におけるコンテナ取扱量の推移】図4,図5参照)
 アジア諸国(地域)の港湾の外貿コンテナ取扱量の増加傾向は、世界最大の基幹航路である北米航路においてもみられるところであり、図4(東航:アジア→北米)、図5(西航:北米→アジア)は積・揚国(地域)別に取扱量の推移を示している。
 従来より北米航路の荷動き量は、東航の方が西航を大きく上回っていたが、9年後半のタイの通貨危機に端を発するアジア経済の混迷により、タイ、韓国、インドネシア等の通貨価値が下落し交易条件が改善する一方、米国経済が好調を維持したため、10年の東航貨物量は前年比18.7%増の5,350千TEUと急増した。特に、米中の経済関係の深化を反映して中国が20.3%増の1819千TEUとなっており、他に、韓国(34.9%増の428千TEU)、香港(26.2%増の730千TEU)等の伸び率が大きい。また、図4中近年の伸びが著しい「その他」にはフィリピン、マレーシア、インドネシア、タイ等が該当し、90年代半ばに一時鈍化したこれらの国々の北米輸出が最近再び伸びていることを示している。品目別にみると、日本発では電機・機械が64.6%、雑貨(タイヤ、繊維製品、スポーツ用品、玩具等)が21.7%のシェアであり、日本以外のアジア発では、雑貨が68.7%、電機・機械が18.2%となっている。東航においては、貨物の急増により運賃引上げの動きが活発化し、11年5月には運賃水準は7年レベルにまで回復した(図6)。
 10年の西航貨物量は、アジア諸国の内需減退により前年比14.1%減の2,958千TEUとなり、東航と西航の荷動きの格差が拡大し、空コンテナの回収コストが海運事業者の負担となっている。品目別にみると、くず紙(17.7%)、冷凍・冷蔵品(果物、野菜、肉等)(17.4%)、雑貨(7.9%)、飼料(7.5%)等となっており、東航が製品貨物が主体であるのに対し、西航は一次産品や原材料が主体となっている。(なお、上に掲げた東航、西航それぞれの品目構成についてはこの10年間でほとんど変化がない。)

【以上、北米航路コンテナ取扱量及び品目別シェア等については、財団法人 海事産業研究所の11年8月の調査報告による。】