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総合政策局社会資本整備政策課 粟津企画専門官


※所属・役職等は、取材時(2025年3月)のものです。
 
プロフィール・近況等
(主な略歴)
 2001(H13).4 国土交通省入省Ⅰ種技術(建築)/住宅局住宅総合整備課
 2008(H20).7 関東地方整備局建政部住宅整備課長
 2014(H26).4 川口市役所技監兼都市計画部長
 2017(H29).4 内閣府政策統括官(防災担当)付参事官(事業推進担当)付参事官補佐
 2020(R2).7  内閣総理大臣補佐官付秘書官
 2021(R3).7  住宅局住宅総合整備課住環境整備室企画専門官
 2024(R6).7  現職

 2001年、国土交通省入省後、本省住宅局でキャリアをスタートしました。その後、本省を始め、地方機関や他府省庁、地方自治体で住宅・建築、道路、まちづくり、災害・防災関係の業務を担当しました。
 現職では、官民連携(PPP/PFI)による社会資本整備や環境政策(グリーンインフラ)の業務を担当しています。最近、社会資本整備関連の業務では、遊休公的施設を活用した官民連携による地方創生、いわゆる「スモールコンセッション」の機運醸成・普及啓発に力を入れており、毎月講演や自治体訪問などを行っています。また、環境政策の業務では、グリーンインフラの活用推進に関する施策の企画立案や普及啓発に注力しています。
 休日には、プールで泳いだり、新作映画・ドラマ鑑賞、読書などしています。また、ドライブがてら温泉に行くのも好きです。
 

1. 2001年に発足した「国土交通省」に抱いたイメージについて

 国土交通省ができる直前の建設省というと、あまり良くない話題が取り上げられている印象もありましたが、建設省、運輸省、北海道開発庁、国土庁が一緒になり、スケールの大きい国土交通省になることでイメージが刷新されたように感じました。
 また、インフラや交通などに関する多くの分野を一元的に取り扱う、前例のない大規模な省庁再編に立ち会うことができたということで、非常に高揚していた記憶があります。
 ただ、再編当時は、省庁ごとの文化の違いや、縦割りといった実務面での課題もあったように覚えています。自分自身は技術系の建築職で採用されたことから、これまで旧建設省関係の部局に配置されてきましたが、事務系の同期は、旧運輸省や旧国土庁など、会うたびに政策が全く異なる部局に異動になっていて、これが国土交通省かと実感していました。
 なお、採用されたばかりの頃はそこまで思わなかったのですが、25年経った今では、同期というつながりの重要性をひしひしとかみしめています。何か新たな施策を進める際、自分に馴染みのない分野であっても、そこに同期がいれば話もしやすく、ありがたいと感じることが多々あります。また、同期が旧省庁の垣根を越えて様々な部局にいることも、旧運輸省関係と旧建設省関係の行政の連携等が、時が経つにつれてスムーズになってきている要因の一つではないかと感じています。
 

2. 印象に残っている国土交通省における出来事について

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 自分にとって印象深いのは災害対応です。2004年、入省4年目で、初めて大きな災害を経験しました。新潟・福島豪雨、台風第16号、台風第23号に加え、新潟県中越地震という4つの激甚災害について、公営住宅担当として対応し、被災した公営住宅の復旧や被災者のための公営住宅の整備に関する様々な企画立案を行いました。災害ごとに被害の状況も対応の仕方も違うので、非常に大変だったと記憶しています。
 このほか、国土交通省では、2011年の東日本大震災、2019年の房総半島台風や東日本台風の対応をしました。房総半島台風の際には、多くの住宅の屋根瓦が飛ばされるなど、屋根に甚大な被害が出ましたが、このような被災した屋根を直すための直接の支援策が当時の国土交通省にはありませんでした。結局、被災者、被災自治体、国会など様々なところから何とかして欲しいとのご要望を頂戴し、住宅の耐震改修を政策として進めていた住宅局市街地建築課市街地住宅整備室に白羽の矢が立ちました。当時そこに在籍していた私は、内閣府の防災担当部局や総務省など関係する省庁や被災自治体と連絡を取り合って様々な調整を行い、知恵を絞って対応しました。
 また、内閣府の防災担当部局に出向したタイミングでは、2017年の九州北部豪雨、2018年の西日本豪雨に加えて、北海道胆振東部地震にも対応しました。特に発災後は、住家の被害認定調査や罹災証明書の発行の支援、賃貸型・建設型応急住宅の供給の支援、被災した家屋の応急的な修理の支援といった初動対応に従事しました。その後、これらの災害での経験を後に伝えるべく、各種の業務対応の手引きの策定等を行いました。これらの業務は、国土交通省での住宅・建築行政の知識や経験があったからこそ、対応できたものだったと思います。また、これらの過程では、出向元である国土交通省を初め、関係省庁との連携・調整も必要であり、これまでの経験や人脈が役立ったと感じました。
 さらに、2024年の能登半島地震への対応も行いました。発災直後から、賃貸型・建設型応急住宅の供給支援を目的に、石川県庁にリエゾンとして派遣されました。特に建設型応急住宅に上下水道を手配することが必要となりましたが、上下水道が大規模に被災していたことから、建設型応急住宅にまで手が回らないという現実がありました。石川県の意向もあり、避難所から出て被災者の住まいとなる建設型応急住宅の整備を何としても迅速に進めていく必要があったことから、上水道担当(当時)の厚生労働省と下水道担当の国土交通省(水管理・国土保全局)とで現地で調整を行い、問題意識が共有されたことで道筋を付けることができました。このほか、敷地に敷く砂利をどこから調達するかについて、道路局や海事局・港湾局などにも相談しましたが、同じ国土交通省でも普段交流の少ない部門とも協力して対応したことはとても印象に残っています。再編から25年経って、垣根を越えた連携も出来るようになり、非常事態への対応の深みが増したと大いに感じました。

 

3.印象に残っている自身が関わった業務について

 川口市役所への出向は非常に良い勉強になりました。市役所では、国土交通省全体の業務範囲を横断的に幅広く担当することとなり、経験のない業務にも限られた情報や時間で迅速に対応・判断していかなければなりませんでした。また、市役所での取組みを形にして、市議会において、市民に対して取組みを示していく答弁の重要性も身をもって体験しました。国土交通省からの出向者として受け入れて下さり、このような貴重な経験をさせていただいたことは今でも大きな財産となっています。市役所はもちろんですが、地方整備局や国内留学、他府省庁への出向など、色々な経験を経て今があると思っています。いろいろな経験を積むことで、自分自身が成長できたのではないかと感じています。
 

4.国土交通省がこの25年で変わったこと/変わらないこと

(変わったこと)
 残業が少なくなり、働き方改革が進んだと感じます。
 デジタル技術の活用が進んで、行政手続きや業務の進め方、仕事のやり方が効率化されたことが大きいです。反面、会話や議論が少なくなったなど、善し悪しはありますが、総じて政策決定プロセスが効率化された点は大きいと思います。
 また、公共だけでは上手く物事が進められない時代になったと感じています。例えばインフラの維持管理に関して、規模の小さな地方自治体では技術系職員が少なくなり、ノウハウやマンパワーが不足して手が回らない、といった切実な状況が現場にはあります。そこで、民間の力や創意工夫を上手に活用するなど、民間との連携が不可欠な時代になっています。
(変わらないこと)
 国土交通省がインフラを支える使命は今も変わっていませんし、現場を重視する、地域の声を大切にするといった姿勢、安全・安心を第一と考える姿勢なども変わっていません。重視する度合いはますます深くなり変わってきていると感じますが、その姿勢は不変であると思います。
 

5.これからの25年への抱負について

 全国各地の持続可能な発展を下支えする国土交通省、国土交通省が主役であるというよりも、地域が主役となり、それを下から支えるような存在として、次世代につないでいける組織になって欲しいと思います。安全・安心の観点など、特に重要な立ち位置から主役になる場面も当然ありますが、多くの場合は民間や地域の方が活躍できる環境を下支えする立場でありたいと考えます。まちづくりにしても、それぞれの地域が主役であり、国土交通省はそのような地域が輝く可能性を引き出していく役割を担うプロ集団でありたいと考えます。
 

6. これからの国土交通行政を担う世代へのメッセージ

 国土交通省では、多様な分野が活躍のフィールドとなるので、幅広い視点を持ち、柔軟な発想で、新しい事に取り組んで欲しいと思います。実際働いてみると、新しい事に取り組もうとすること、そしてそれを実践することは意外と難しいものです。自分自身にも言い聞かせていますが、昨年と同じ業務を今年も同じように取り組むことで良いのかを考えた上で、前向きに取り組んで欲しいです。
 また、一つひとつの仕事が社会に大きな影響を与えますので、責任感と情熱を持って取り組んで欲しいです。とはいえ、そればかりだと正直しんどいので、仕事を楽しみ、自分で面白くしていく余裕も持ちながら、自分自身の成長につなげていってもらえればと思います。
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7.その他、HP をご覧の方へのメッセージ

 日々の通勤・通学、旅行や買い物、インフラの整備・メンテナンスなどの裏には、国土交通行政のさまざまな取組みがあり、私たちは皆さんの安全・安心のために、日々努力しています。ぜひ国土交通省の取組みに関心を持っていただければ嬉しいです。

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