現場職員インタビュー

現場職員インタビュー - 国土交通省
中国運輸局 自動車交通部貨物課

現場職員インタビュー

「トラック・物流Gメン」

田中 幸久のプロフィール写真

※所属・役職等は、取材時(2025年12月)のものです。

田中 幸久

課長 / 中国運輸局 自動車交通部貨物課1

主な略歴

  • 1992(H4).4 運輸省大臣官房人事課 採用
  • 2017(H29).10 国土交通省自動車局総務課 バス高速輸送システム推進官
  • 2019(H31).4 国土交通省自動車局旅客課 課長補佐
  • 2021(R3).4 独立行政法人自動車技術総合機構企画部経営管理課 課長
  • 2023(R5).4 現職
丸山 峰雄のプロフィール写真

※所属・役職等は、取材時(2025年12月)のものです。

丸山 峰雄

課長補佐 / 中国運輸局 自動車交通部貨物課

主な略歴

  • 2004(H16).4 国土交通省中国運輸局因島海事事務所 監理係採用
  • 2019(R1).4 国土交通省中国運輸局自動車交通部 自動車監査官
  • 2021(R3).4 国土交通省中国運輸局鳥取運輸支局 主任自動車登録官
  • 2024(R6).4 国土交通省中国運輸局鳥取運輸支局 運輸企画専門官(総務企画・観光担当)
  • 2025(R7).4 現職
  • 物流の2024年問題
  • プッシュ型情報収集
  • 是正指導
  • 輸送力

01 「トラック・物流Gメン」

トラック事業者から困りごとを聞き取り、改善につなげる
「トラック・物流Gメン」が創設された背景を教えて下さい。
 「物流の2024年問題」と言われて久しいですが、トラックドライバー不足が顕著となり、何も対策を講じなければ物流が停滞しかねなくなる、といった強い危機感のもと、令和5年6月、政府として「物流革新に向けた政策パッケージ」をまとめました。この中で、適正な取引を阻害する疑いのある荷主企業・元請事業者の監視を強化するため、「トラックGメン」が設置されることとなりました。
 トラック事業者が直面する、長時間の荷待ち、運賃・料金の不当な据置きなどの様々な困りごとを聞き取り、それを荷主に届け、是正するのが主な業務です。(田中課長)
トラック・物流Gメン創設経緯、これまでの変遷
現在の業務内容を教えて下さい。
 大きく2つあります。まず、「プッシュ型情報収集」です。従来の「トラック事業者から相談があった場合に対応する」という「受け身」の対応から、「プッシュ型」でトラックGメンがトラック事業者の話を聞き、改善すべき荷主・元請トラック事業者(荷主等)の拠点や営業所、改善事項の情報を収集しています。そして、2点目は、荷主に対する「働きかけ」や「要請」、「勧告・事業者名公表」といった手段により是正を促す「是正指導」です。
 しかし、我々がやみくもにトラック事業者と荷主の間に入ることで、その後の商売関係に禍根を残すことは本意ではありませんので、その点は特に気を付けています。そのため、荷主には、単に「是正指導」するだけでなく、例えば、制度改正の情報や国の支援策の情報を丁寧に提供するなど、きめ細かく対応するよう心掛けています。(田中課長)
トラック事業者・トラックドライバー・倉庫業者へのヒアリング(プッシュ型情報収集)
荷主等へのアポなし訪問・説明(荷主等パトロール)
荷待ち、附帯作業等の現状確認・指導(荷主等パトロール)
是正指導(働きかけ、要請、勧告(社名公表))、指導後の対象のフォローアップ

日々の活動の様子

02 物流産業の取引適正化

物流を維持し、物流を守る
物流産業の取引適正化が必要とされる背景を教えて下さい。
 トラックは、人流を担うバスやタクシーと異なり、荷主とトラック事業者の間で行われる業務、事業ゆえに、より自由な環境のもと事業が営まれるべきとの考え方から、道路運送法とは別の法体系(貨物自動車運送事業法)となっています。参入規制を緩和した結果、事業者数が増え、競争が増えました。これに伴い、荷主の力が増し、事業環境が厳しくなり、トラック事業者の運賃収入が減っていきました。結果、ドライバーの賃金が安くなり、現場において正当な対価なく作業を強いられるなど、労働環境が益々悪化し、結果、トラックドライバー不足となる。ドライバー不足になると、トラックがあっても物が運べなくなる。物が運べないと、物が届かなくなり、社会経済に影響が及ぶ。現在、物流産業は、こうした悪循環に直面しています。(田中課長)
輸送力が減ると、国民生活に影響が出るのですね。
 そうです。輸送力が減ると、最終的には、消費者に不利益が及びますので、どこかでこの負の連鎖を断ち切る必要があります。物流効率化と言っていますが、結局は、「物流を維持し、物流を守る」のが、我々の仕事です。(田中課長)

03 「トラック・物流Gメン」の効果

誠意をもって説明を尽くせば、事態は変わり得る
「トラック・物流Gメン」の活動によって、具体的にどのような効果が出ましたか。
 メディアに何度も取り上げていただき、活動内容が周知されたと感じています。トラック事業者からは、荷主から「運賃は大丈夫?」や「大変だね」といった労いの声を掛けてもらえるようになった、とか、運賃交渉がスムーズに進み値上げを実現できた、といった報告を感謝の声とともにいただく機会が増えました。中には、「勇気を貰った」、「物流業界の雰囲気を変えてくれた」と評価いただくこともあります。我々の活動が契機となり、トラック事業者が、荷主に対して臆することなくモノを言えるようになったのは、この取組みの大きな成果だと思います。(田中課長)
 パトロールに行くと、トラック事業者からは「今取引している会社の相談に乗って欲しい」といった声や、ドライバーからも「自分たちのために活動してもらえて嬉しい。頑張って欲しい」といった声をいただきます。また、荷主からも「実は、今こんな課題があって・・・」と相談頂くこともあります。(丸山補佐)

 (参考)中国運輸局トラックGメン活動状況 ※令和8年1月20日現在
 〇是正指導
  要請…12件   働きかけ…166件
 〇荷主等パトロール
   立ち寄り先箇所数…2,125箇所
 〇オンライン説明会
   開催回数…29回 参加者人数…約11,000人
   (令和5年8月1日から毎月1回開催【令和5年12月から毎回午前午後の1日2回開催】)
荷主等パトロール
荷主等パトロール
オンライン説明会
オンライン説明会
これまでで、特に印象に残っていることはありますか。
 我々が是正指導した荷主が、精緻なデータ分析のもと、遠路はるばる改善状況を報告に来てくれます。是正指導を契機として、荷主側が積極的に現場の環境改善に取り組む様子は大変心強く、非常に印象に残りました。(丸山補佐)
 運賃を含む取引契約の内容は、民-民の話であり、本来、国が立ち入るべきものではありませんが、トラック事業者からすると、運賃交渉してもなかなか値上げを実現できない、といったもどかしさがあるようです。ある時、元請を通じて運送依頼を受けたトラック事業者から直接ご相談いただき、話を聞いたところ、元請が運賃交渉に応じない原因は、結局、荷主の東京本社がなかなか動いてくれないことがボトルネックになっていることが分かりました。
 そこで、我々が東京にある荷主の本社を訪ね、直接担当者に実状を伝えました。
 更に我々が仲介し、元請と荷主が同一のテーブルにつき、我々Gメンと面談する機会を設けました。最初は張り詰めていた雰囲気も、1時間ほど話すうちに、双方の理解が深まり、荷主はトラック事業者の切実な訴えに真摯に耳を傾ける姿勢を示しました。結果、対話により改善が図られる瞬間に立ち会う機会を得ました。実際に本社の担当者を尋ねたことで、「企業側の責任者に対して誠意をもって説明を尽くせば、事態は変わり得る」ことを強く実感しました。(田中課長)

04 中国運輸局の強み

管轄を超えた広域連携を主導
他運輸局との広域連携について、どう取り組まれていますか。
 中国運輸局で実施する「荷主等パトロール」は、荷主等を特定せず、エリア全域をローラー形式でアポ無しで訪問し、各種情報提供、是正指導等を実施するものです。他の運輸局に先駆けて開始し、各運輸支局の協力のもと、1年で管内1,000箇所以上を回りました。
 こうした活動と並行して、近隣の運輸局にも我々から声をかけ、令和6年9月には、近畿、中国、四国、九州の4運輸局による合同パトロールを近畿で実現しました。更に中部や関東にも出向き、合同パトロールを行いました。周知用チラシを我々が準備し、他の運輸局に共有するなど連帯感の醸成にも努めました。こうした地道な活動を続ける中で、全国の運輸局も、パトロール活動に業務に取り入れるようになりました。
 令和7年10月には、我々の呼びかけに全国の運輸局が呼応し、全国のGメンが東京に集まり、2日間で約120箇所を回る大規模な合同パトロールを行いました。これを契機に、各運輸局間の連携の動きも活発化していると聞いています。(田中課長)
荷主等パトロールの全国展開
荷主等パトロールの全国展開
初めて現場に出たときは如何でしたか。
 私自身は、昨年4月から担当していますので、まだ経験は浅いですが、いつも田中課長の熱意に感銘を受けています。田中課長は、問題のある状況や相手に対して「何か変えてやろう」という気持ちが強く、その背中を見ながら、常にこの人を目指したいと思っています。課長が作った地盤をより広げて、更に質を磨きながら、全体の底上げを実現していく、それが私の使命と思っています。(丸山補佐)
合同パトロールの集合写真
合同パトロール
中国運輸局の「トラック・物流Gメン」の特色や、強みがあれば教えてください。
 中国運輸局では、若手職員がとてもやる気に満ち溢れています。これまでの合同パトロールの経験から、支局間や他の運輸局との連携が進み、管轄を超えた合同パトロールを積極的に企画・実施しています。例えば、令和7年秋には、岡山(中国運輸局管内)と兵庫(神戸運輸監理部)の支局担当者が中心となり、近畿運輸局にも呼びかけて兵庫県赤穂市で合同パトロールを実施したほか、先日は、当局から四国運輸局に声を掛け、香川県坂出市で合同パトロールを実施しました。こうした動きは、現在進行形でどんどん進んでいます。当運輸局の若手職員が、他の運輸局との広域連携に一役を買っていると実感しています。(丸山補佐)
 相談ベースで「これやってみたいのだけれど」、「じゃあやってみようよ」と言った形で、上司も含め、新しいことに取り組みやすい職場の雰囲気が魅力だと思います。それに興味を持って参加してくれる若手職員が多く存在することも有難いです。(田中課長)

05 仕事のやりがいと今後の目標

「新しいことを試す場(ラボ)」を目指して
仕事を通じて、どのようなときにやりがいを感じますか。
 トラック事業者、ドライバー、荷主、それぞれが課題を抱えている中で、我々が関与することで双方のコミュニケーションが円滑になり、「相互理解が深まった、雰囲気が変わってきた」などの反応を聞くと、やってきて良かったと感じます。 また、現場に出ると、自分自身勉強になりますし、同時に、自分の未熟さを感じる機会にもなります。現場で業務に当たれる点は、やりがいの一つと感じています。(丸山補佐)
 様々な現場を回って得られた情報に、現場で自分自身が感じたこと、話をしてくれた方々の思いを乗せて届けた結果、それが相手に伝わり、理解を示された瞬間に「届いた!」と実感し、この仕事の醍醐味を感じます。役所は、往々にして第三者的な立場として捉えられることが多いですが、人の思いに触れ、それを届けることで自分にもその思いが蓄積されていく、そのことで相手方から信任を得られると、「Gメンも物流の一つのパーツ」として認識してもらえた気がして、非常にやりがいを感じます。(田中課長)
面談(田中課長)
面談(田中課長)
面談(丸山補佐)
面談(丸山補佐)
物流産業の取引適正化に向け、今後、どう取り組んでいきますか。
 引き続き、「プッシュ型情報収集」と「是正指導」の2本柱、これにしっかりと取り組んでいきます。この仕事は、相手方と様々な対話を重ねていきますが、先方から信任を得るためにも、我々から、いかに先方にとって有益な情報を提供していけるかが大きなポイントになります。常にアンテナを高く対応しなければと、気を引き締めています。
中国運輸局は、新しいことにチャレンジする抵抗感が少ないことが有難いです。だからこそ、まずは、中国運輸局で試してみて、良い成果が得られたことは全国に展開していく、中国運輸局が、いわば「新しいことを試す場(ラボ)」となれれば、このうえなく嬉しいです。
 荷主だけが悪者のように印象付けられることがありますが、荷主側にも、商売をする上で一生懸命となるがゆえに、結果、様々な無理が生ずる、トラック事業者のことまで考える余裕がない、といった実態があるのも事実です。我々が客観的かつ公平な立場から荷主に気づきを与えることで、事態の改善につながるよう、遮二無二説明を続けていきます。
 「Gメンが来てくれてよかった」、「Gメンに提供してもらった情報が有益だった」と言ってもらえるよう、今後も取り組んでいきます。(田中課長)
Gメンによる事業者訪問①
Gメンによる事業者訪問①
Gメンによる事業者訪問②
Gメンによる事業者訪問②

06 「トラック・物流Gメン」として伝えたいこと

物が届くという「当たり前」を維持するために
どのような人に、「トラック・物流Gメン」を知ってもらいたいですか。
 まずは、着荷主の経営層です。改正物流効率化法により、令和8年4月より、一定規模以上の荷主は、物流効率化のための中長期計画の策定、定期報告、物流統括管理者(CLO)の選任が義務化されます。荷主に対し、改正法の趣旨の周知・徹底を図り、その施行に万全を期していければと思います。
 現在、発荷主までは、「物流にしっかり取り組もう」という意識が浸透し始めていますので、今後は、着荷主側にも、そうした意識をしっかり浸透させる必要があります。物を購入する側は、往々にして、購入したものが物流で運ばれてくるという認識が薄いことがあり、よく「仕入れ」といった言い方をされます。今、徐々にですが、着荷主の中に、仕入れの物流のことを「調達物流」と表現する方も出てきました。
 トラック事業者は、コストに利潤を乗せた形で運賃を計算します。一方、消費の水際にいる着荷主は、市場で売れる相場で「売価」を決めるため、価格設定を巡っては、両者に認識の差が生じがちです。原価を割る値段設定では、生産も物流も立ち行きませんので、生産側の発荷主や、運送を担うトラック事業者は、売り手である着荷主に適正な水準の原価を示し、労務費をきちんと確保する必要があります。
 荷主は、労務費は誰かが負担するもの、自分達が負担すると、その分、割を食うイメージを持っているかもしれませんが、払った労務費はやがて消費となって還元される、いわば「バトン」のようなものであり、荷主には、「いずれ返ってくるものをいったん預けるつもりで考えてはどうか」と説明しています。
 こうした前向きな説明を続けることで、今生じ始めている希望の兆しを、より強固なものにしていけるよう、取り組んでいきます。(田中課長)
Gメンのチーム集合写真
Gメンのチーム集合写真
国民の皆様へのメッセージをお願いします。
 物が届くという「当たり前」を「当たり前」のこととして維持していくためには、国民の皆様の協力も欠かせない要素の一つであることをぜひご認識いただきたいと思います。「ブラックフライデー」や「○○キャンペーン」などで物量が時期により大きく変動すると、最終的に物流にしわ寄せが来ることを頭の片隅に置いていただきたいと思います。例えば、メニュープライシング(物流サービスに応じて価格を変動させる形態)の一環として、「到着をゆっくり待ち、安くて遅めの配送サービス」を選ぶこと、置き配や宅配ボックスなどの活用で再配達をできるだけ減らすこと、「送料無料」を掲げる商品に疑問をもつこと、なども物流の混雑を防ぐ一つの取組みです。
 決して、消費自体を控える必要はありません。消費拡大は、物流事業者にとっても運賃収入増に繋がります。物流に負荷の少ない方法を選びつつ、「必要なものが届く」という当たり前の日常を、消費者、荷主、物流事業者で守っていっていただきたいですし、そのために我々も活動していきたいと思います。(田中課長)
大臣表彰の受賞
大臣表彰の受賞
第38回人事院総裁賞受賞
第38回人事院総裁賞受賞

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