国土交通省の「現場力」を発揮した業務・職員インタビュー
国土交通省の「現場力」を発揮した業務・職員インタビュー - 国土交通省
関東地方整備局 江戸川河川事務所
現場職員インタビュー
流域治水 ~防災ツーリズムの推進~
主な略歴
- 1991(H3).4 建設省関東地方建設局河川部河川管理課 採用
- 1994(H6).4 建設省関東地方建設局江戸川工事事務所放水路課 設計係
- 2019(H31).4 内閣府政策統括官(防災担当)付参事官(調査企画担当)付 参事官補佐
- 2021(R3).4 国土交通省関東地方整備局霞ケ浦導水工事事務所 所長
- 2023(R5).4 国土交通省関東地方整備局統括防災グループ 総括防災調整官
- 2024(R6).4 現職
01 現在の業務概要と放水路の整備
洪水被害の軽減を目指して
- 現在の業務内容を教えて下さい。
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江戸川河川事務所は、江戸川の約60㎞、中川の約20㎞、綾瀬川の約10㎞を管理しており、地域を水害から守るため、河川の堤防整備や河道掘削などの治水対策を進め、日々の河川の維持管理を行っていますが、私は、その現場の事務所長として、事務所全体のマネジメントを担当しています。
首都圏外郭放水路 庄和排水機場
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江戸川河川事務所では、放水路の整備をしていると伺いました。具体的にはどのような整備を進められているのでしょうか。
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放水路とは、河川の氾濫を防ぐため、河川の途中に新しい川を分岐して掘り、海や他の河川などに放流する人工の水路のことです。中川や綾瀬川の流域は、江戸時代以前は、利根川や荒川が流れていた低平地で大雨が降ると溜まりやすく、流れにくいお盆のような地形で、戦後の高度経済成長期の市街化もあいまって浸水常襲地帯となっていました。
このため、江戸川河川事務所では、三郷放水路や綾瀬川放水路、首都圏外郭放水路を建設し、河川と河川をつなぐことで、洪水時には排水機場の排水ポンプを稼働し、綾瀬川や中川の洪水を江戸川へ排水し、洪水被害の軽減に努めています。また、平常時は、それら放水路が有事の際に適切に機能を発揮できるよう、排水機場の排水ポンプや水門などの点検整備を行っています。
首都圏外郭放水路ができる前(H12.8)
首都圏外郭放水路ができた後(H16.10)
02 「流域治水」
流域全体で水害対策を講じ、被害の最小化を目指す
- 本日のテーマである「流域治水」について伺います。「流域治水」はどのような取り組みでしょうか。
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私たち河川管理者は、治水計画に基づき、堤防やダム・遊水地の整備など治水対策に取り組んでいます。ただ、近年は気候変動で、地球温暖化に伴い雨の降り方が変わり、災害が激甚化・頻発化しているため、日本全国で毎年のように大きな水害が生じています。今後も降雨量が増大し、更なる被害の発生が懸念されるため、堤防などのインフラ整備を加速化しつつも、流域の皆さん、例えば、流域にお住まいの方や企業活動をされている方も含めて、流域全体で水害対策を講じ、被害の最小化を目指していくのが流域治水の考えです。いわば「あらゆる関係者が共働して治水対策を行っていく」ものです。
流域治水
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具体的には、どのような対策を進めていますか。
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流域治水の対策として、大きく3つあります。1つ目は、氾濫をできるだけ防ぐ、減らす対策。2つ目は、被害の対象を減少させるための対策。3つ目は、被害の軽減、早期復旧復興のための対策です。これらをハード・ソフト一体的に進めているところです。
具体的に申し上げると、1つ目の「氾濫をできるだけ防ぐ、減らす対策」は、先程も申し上げた堤防やダムなどを整備するハード対策です。2つ目の「被害対象を減少させるための対策」は、浸水が想定されるエリアに居住しないようにするなど住まい方の工夫です。例えば、リスクエリア外への移転を促す、浸水被害地域を指定することで新たな建物の建築を抑制する、頻繁に水が溜まるエリアは「貯留機能保全区域」として指定して開発を抑制する、などです。3つ目の「被害の軽減のための対策」は、事前にハザードマップや避難計画を作っておく、実際に被災した際のことを念頭に、事前に復旧・復興対策を検討しておくなどのソフト対策です。
これら3つの柱に基づく流域治水の取り組みを、現在、全国で進めています。
- 「流域治水」を推進することは、どのような意義がありますか。
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行政のみならず、住民、企業の皆さんにも、水害を「自分事(じぶんごと)」として考えていただくきっかけになると思います。例えば、企業が浸水想定区域で経済活動を営むときには、地域のリスクを事前に分析する、水害が発生した時の対策や業務継続計画を事前に立てる、といった取り組みを行うでしょう。また、住民の方々は、洪水ハザードマップで、水害時の避難路や避難場所を確認するなど、普段の生活の中で取り組める対策を、自ら考えて行動に移すでしょう。流域治水を推進することは、社会全体で、「水害被害を最小化する意識」を醸成していくことにつながると思います。
04 「首都圏外郭放水路」25年の歩み
浸水被害の軽減、“インフラツーリズム”から“防災ツーリズム”へ