国土交通省の「現場力」紹介(現場職員インタビュー)

「現場力」紹介(現場職員インタビュー)
北海道運輸局 自動車交通部 旅客第一課

現場職員インタビュー

自然災害時における観光旅客等の足の確保

經亀 真利のプロフィール写真

※所属・役職等は、取材時(2026年3月)のものです。

經亀きょうかめ 真利まさと

課長 / 北海道運輸局 自動車交通部 旅客第一課 1
  • 大雪
  • 情報発信
  • 代替輸送の確保
  • バス

主な略歴

01 現在の業務概要

「平時から非常時まで交通を止めない」を目指して
經亀さんの現在の業務内容を教えて下さい。
 私の業務は、端的に申し上げれば、自動車交通を活用して地域の皆様の「足」を確保する仕事です。具体的には、輸送の安全確保等を図るための乗合バス・貸切バスに対する許認可業務、厳しい経営状況にある交通事業者に対する財政支援業務、退職予定自衛官の再就職支援を通じたバス業界の人材確保対策などを担当しています。併せて、外国人利用者が増加するレンタカーの事故防止対策にも取り組んでいます。
 さらに、大雪などの非常時には、新千歳空港等の旅客施設において旅客の滞留が発生しないよう、関係機関や事業者と連携して代替輸送の確保や情報共有の調整を行うなど、いわば「平時から非常時まで交通を止めない」ための調整役を担っています。

02 令和8年1月の大雪

アクセス交通の途絶による旅客滞留の発生
令和8年1月24日から25日にかけて、北海道地方では大雪になりました。当時の状況を教えて下さい。
 北海道地方は、令和8年1月24日(土)から25日(日)にかけて、北海道の西海上を小さな低気圧が南下した影響により、石狩湾から石狩平野に帯状となった雪雲が継続的に流れ込み、石狩地方を中心に大雪となりました。
 最大24時間降雪量は、札幌で54cm、恵庭島松で53cmを観測し、1月の観測史上一番の多さとなりました。また、札幌では、令和4年2月の雪害時以来4年ぶりに1mを超える積雪深となりました。この大雪により、JRの運休や航空機の欠航、高速道路の通行止め、休校等の影響があったほか、札幌市では、「札幌駅前地下歩行空間」と「札幌市民交流プラザ」が一時滞在場所として開設されました。
 その後も降雪が続き、1月27日(火)朝までに更に約50cmの雪積となりました。
公共交通の分野では、具体的にどのような影響が生じましたか。
(1月25日)
 1月25日(日)は、道央圏の降雪の影響により、新千歳空港と札幌市内を結ぶ高速道路が午前3時30分頃から通行止めとなったため、空港連絡バスは全路線で運休となりました。
 また、札幌方面への輸送の大部分を担う鉄道(JR北海道:千歳線「快速エアポート」)も、降雪の影響により、同日9時頃から運休が出始め、15時頃から運行を見合わせる事態となりました。
 このように、新千歳空港から札幌方面への公共交通機関が運休となってしまいましたが、その間も、新千歳空港には、順次、着陸便が到着しました。
 結果として、新千歳空港には、札幌方面への移動手段が断たれた多数の旅客が滞留しました。
 当初、JR北海道からは、25日18時頃には「快速エアポート」が運行再開される見込みと聞いていましたが、降雪により除雪作業が難航したこと等から、その後、JR北海道からは、3回にわたって運行再開の見込時刻の変更が通知され、最終的には26日(月)10時頃の運行再開が見込まれる旨が通知されるなど、現場は混乱を極めました。
 結果として、25日中には、「快速エアポート」の運行再開には至りませんでした。
高速道路の様子 出典:NEXCO東日本(北海道)
高速道路の様子
出典:NEXCO東日本(北海道)
手稲駅の様子 出典:JR北海道
手稲駅の様子
出典:JR北海道
鉄道待ちの行列の様子(ターミナルビル1階)
鉄道待ちの行列の様子
(ターミナルビル1階)
タクシー待ち行列の様子(ターミナルビル2階)
タクシー待ち行列の様子
(ターミナルビル2階)
(1月26日)
 1月26日(月)は、朝から「快速エアポート」が運休となりましたが、新千歳空港側で到着便の着陸を制限したことで、新たな滞留者の発生は抑制されました。
 25日(日)21時30分頃に高速道路新千歳空港IC~札幌南IC間の通行止めが解除されたことに伴い、26日(月)9時30頃には、新千歳空港と地下鉄大谷地(おおやち)駅間を結ぶ空港連絡バスの運行が再開されたほか、同日14時頃には「快速エアポート」の運行も再開されたため、18時頃には、新千歳空港での滞留者は一旦解消しました。
 一方で、同日22時頃から、JR札幌駅構内のポイント不転換により、鉄道の運転見合せが多発しました。これに伴い、「快速エアポート」の運行本数が大幅減少(通常は1時間あたり6本運行されるところ、1時間あたり1本程度に減少)となり、この影響により、新千歳空港には新たに約2,100人の滞留者が発生する事態となりました。

(1月27日~29日)
 1月27日(火)は、通常より運行本数を間引いた形ではありましたが、鉄道が始発より運行されました。並行して、朝9時30分より、時刻表を定めず満席になり次第運行する「ピストン輸送」の形で、地下鉄大谷地駅と新千歳空港間で空港連絡バスの臨時運行が実施されました。
 この結果、新千歳空港での滞留者は同日11時頃には解消し、その後も滞留者は発生しませんでした。
 地下鉄大谷地駅と新千歳空港間のバスピストン輸送は、28日(水)も、朝から夜まで継続して実施されました。
 一方で、JR北海道は、除雪作業時間を確保して集中的に除雪を行うため、28日(水)・29日(木)の両日21時以降札幌駅を発着する列車を全て運休する旨を27日(火)に発表しました。

03 北海道運輸局の対応①

利用者向け情報提供の実施
そうした状況下で、北海道運輸局ではどのような対策を講じましたか。
 鉄道、バスともに大幅な運休・遅延等が発生している状況下でしたので、まずは、利用者に対し、正確な運行情報を丁寧に届けることが何より重要であると考えました。
 もちろん、各運行事業者においても、利用者に対する個別の情報提供はなされていましたが、国において、これらの情報を総合的、かつ、モード横断的に提供することも重要です。
 北海道運輸局では、令和4年度より「北海道旅の安全情報サイト 」を運用してきました。このサイトは、交通情報のプラットフォームとして、交通に関する情報を、総合的に、かつ、いつでも入手できることをコンセプトとして運用しています。
 災害時には、各交通事業者が、直接、「北海道旅の安全情報サイト」の掲示板(トピックス)へ運休情報等を掲載できる機能も設けており、掲示板に掲載された内容は、日本語のほか、英語、中国語(繁体字・簡体字)、韓国語の多言語表記(自動翻訳)により情報発信することができます。
 また、震度5強以上の地震など大規模な災害が発生した場合に、訪日外国人旅行者向けに交通機関・避難所等の情報を伝達する「災害情報伝達システム」2 の機能も備えており、今回の大雪では、システムを構築して以降、初めてこの機能を活用し、外国人旅行者を含む観光旅客等に対する丁寧な情報提供に努めました。
 特に、1月28日(水)、29日(木)の各21時以降の「快速エアポート」の計画運休に当たっては、①旅客に対する事前の情報提供、②航空旅客に対する、より早い便への振替要請等を重点的に行いました。
 このほか、タクシーによる個別輸送の強化を図るべく、北海道ハイヤータクシー協会及び新千歳空港を管理・運営する北海道エアポート㈱と連携のうえ、営業区域外旅客運送を認めることとしました。
脚注
  
  1. 本サイトのトップ画面「注意が必要な情報」では、北海道の主な交通機関が、運休情報や遅延情報等を自ら掲載し、発信している。また、情報発信した各機関ホームページへのリンク機能も構築している。 重大な災害時には、「重要なお知らせ」として、外国人向けに空港アクセスや避難所などの情報を分かりやすく提供している。
    https://hokkaido-safe-travel.mlit.go.jp/
今お話しのあった営業区域外旅客運送とは、具体的にどのようなものでしょうか。
 タクシーには「営業区域」があり、タクシー会社の営業所の所在地に基づいて営業が許可された区域内でのみ営業が可能です。道路運送法第20条に基づき、乗車地と降車地のどちらもが営業区域外にある運送はできませんが、災害の場合その他緊急を要するときなど一定の条件を満たした場合は、例外的に営業区域外での運送が可能となります。
 今回は、大雪により鉄道、バスが大幅に運休・遅延している状況下であり、タクシーによる輸送を強化する必要があったことから、北海道運輸局として、営業区域外旅客運送を認めることとしました。
先ほどお話しのあった「北海道旅の安全情報サイト」を通じた情報提供は、どの程度、有効だったと評価されていますか。
 1月25日(日)と26日(月)累計で新規ユーザーが約2,200人(うち、外国人約300人)増え、約5,100アクセスがありました。また、21時以降の札幌駅発着列車を全て運休した28日(水)には、新規ユーザーが約 24,000人(うち、外国人約200人)増えましたので、非常時における情報発信ツールとして、一定の役割を果たせたものと考えています。
このほか、観光旅客等向けの情報提供に際して工夫した点はありましたか。
 「北海道旅の安全情報サイト」では、利用者目線に立った情報発信を心掛けました。例えば、運休本数ではなく何便が運行しているかに着目して情報を発信したほか、1運行あたりのキャパシティや、地下鉄東西線大谷地駅に直結し札幌中心部へのアクセスが可能であることなど結節点となる大谷地バスターミナルの特徴なども併せて提供しました。
 また、北海道運輸局HPへの情報掲載のほか、運輸局の公式Xも活用し、大谷地バスターミナルの混雑状況等を写真付きリアルタイムで提供するなど、きめ細かな情報発信に努めました。利用者からは、「混雑状況を参考にして行程を検討することができた」等の反響がありました。
 また、公式Xでは、日本語・英語の2か国語で情報発信し、さらに関係機関と連携し、Xの投稿を相互にリポストし合うことで発信力を高め、情報の更なる拡散を図りました。
 Xは、リアルタイムに情報を発信するうえで効果的であり、今後の災害時等においても有効に活用していく考えです。

04 北海道運輸局の対応②

代替輸送の確保
また、特に鉄道が計画運休となった1月28日・29日における新千歳空港と札幌中心部とのアクセス確保に向けては、どのように対応されましたか。
 1月25日(日)以降の札幌圏における記録的な降雪・低温により、札幌圏の各駅等では積雪が多く、列車に多くの運休や遅延が発生していました。運行終了後の夜間時間帯において除雪するだけでは、こうした状況を解消するのは難しい状況にありました。
 このため、先ほど申し上げたように、JR北海道は、除雪のための時間を十分に確保し、札幌圏の輸送力を確保できるよう、1月28日(水)、29日(木)の両日、21時以降札幌駅を発着する列車を運休(計画運休)することとなりました。
 こうした状況を踏まえ、鉄道の計画運休後に新千歳空港に到着する航空旅客等による滞留者の発生を防ぐため、北海道エアポート㈱において、災害時の協定に基づき、代替交通手段として、新千歳空港から大谷地バスターミナルへ運行する空港連絡バスの増便及び貸切バスによる緊急乗合輸送が実施されました。
 この対応により、鉄道の計画運休後であっても、臨時バスと地下鉄東西線(臨時便を含む)を乗り継ぐことで、新千歳空港から札幌中心部への移動手段を確保することが可能となりました。
 北海道運輸局では、北海道エアポート㈱による代替交通手段の確保を「後方支援」する立場として、運輸局職員がバス事業者等と電話やWEB会議を通じて連絡調整を行い、必要車両数の確保や運行上の課題整理を支援しました。また、利用者向けの周知資料(チラシ)の作成・共有を通じて、関係機関との情報共有を図りました。併せて、大谷地バスターミナルに運輸局職員12名を派遣し、臨時バス到着時の乗客案内、荷物降ろしの補助、タクシー乗り場への誘導、地下鉄臨時便への案内などを、最終バスの到着まで現地で支援しました。
 臨時バスは、28日(水)は10便が運行され245名が、翌29日(木)は18便が運行され617名が、それぞれ利用され、結果、両日は新千歳空港における滞留者の発生を抑制することができました。
新千歳空港・地下鉄大谷地駅・JR札幌駅位置関係図
新千歳空港・地下鉄大谷地駅・JR札幌駅位置関係図
大谷地バスターミナルでの乗客サポートの様子
大谷地バスターミナルでの乗客サポートの様子
臨時バスの様子
臨時バスの様子
運輸局においてバス手配等のオペレーションをサポートされたとのことですが、具体的にどのように実施されましたか。また、これらの対応を行うにあたって、特に工夫された点や苦労された点などがあれば、併せて教えて下さい。
 今回の雪害対応では、北海道運輸局は、関係機関による円滑な輸送を支えるべく、主に「調整役」としてのオペレーションに徹しました。具体的には、北海道エアポート㈱やバス事業者等とWEB会議を一日数回実施し、空港での旅客の滞留状況や航空機の運航状況を踏まえながら、必要となるバスの台数や運行上の課題を共有しました。
 また、車両不足が見込まれる場面では、当運輸局職員が直接バス事業者へ電話連絡し、応援車両を確保いただけないか協力を依頼しました。
 また、大谷地バスターミナルの事業者と協議を重ね、ターミナル終業後の出入口を臨時のバス降車場所として活用できるよう調整し、夜間帯でも利用者が滞留せず、スムーズに降車できる動線を確保することができました。
 時間的、情報的な制約が大きい中でしたが、関係者が同じゴールを目指して対応できるよう、きめ細かな情報共有と現場目線での調整を重ねた点が、今回の大きなポイントと考えています。

05 今後の業務目標

豊かな自然環境という北海道の強みを活かしつつ、非常時には柔軟な代替輸送の確保を
積雪寒冷地である北海道の厳しい自然の中では、今後もまた同様の事態が発生する可能性もあろうかと思います。今回の経験を踏まえ、今後、自然災害時の観光旅客等の足の確保に向けて、北海道運輸局として、どのように対応していく考えですか。
 北海道では、積雪や寒波といった厳しい自然条件の下、今後も同様の事態が起こり得るものと認識しています。今回の雪害対応を通じて、関係機関が早い段階から情報を共有し、状況に応じて柔軟に代替輸送を組み立てていくことの重要性を改めて確認しました。
 北海道運輸局と北海道エアポート㈱は、関係機関の参画を得て、大雪等の災害時に新千歳空港における滞留者の発生を予防し、また、滞留者が発生した場合にその解消を図るスキームを事前に構築しておくこと等を目的とする「大雪等による新千歳空港滞留者解消連携会議」を定期的に開催しています。引き続き、こうした枠組みを活用し、関係機関との平時からの連携を一層強化するとともに、災害時の情報共有や意思決定の手順を整理し、実践的な訓練や検証を重ねていきたいと考えています。
 自然条件をコントロールすることはできませんが、関係者が連携し、知恵と経験を積み重ねることで、観光旅客を含む利用者の「足」をできる限り確保するための体制づくりは可能であると考えています。
 豊かな自然環境は、北海道の大きな強みです。引き続き、この強みを最大限に活かすべく、運輸局職員として「平時から非常時まで交通を止めない」ことを目指して、取組みを進めてまいります。
大雪等による新千歳空港滞留者解消連携会議の様子
大雪等による新千歳空港滞留者解消連携会議の様子

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