国土交通省の「現場力」紹介(現場職員インタビュー)

国土交通省の「現場力」紹介(現場職員インタビュー)
気象庁 地震火山部 火山監視課 火山監視・警報センター

現場職員インタビュー

火山機動観測

近澤 心のプロフィール写真

※所属・役職等は、取材時(2025年12月)のものです。

近澤 心

火山機動観測班長 / 気象庁 地震火山部 火山監視課 火山監視・警報センター 1
  • 火山機動観測
  • 防災
  • 気象業務150周年

主な略歴

01 「火山機動観測」について

火山周辺に立ち入り、火山の活動状況を把握
インタビュー中①
近澤さんは、現在どのような業務に取り組まれているのでしょうか。
 私は、現在、東京の気象庁地震火山部火山監視課火山監視・警報センターの火山機動観測班に所属しています。「火山監視・警報センター」は札幌、仙台、福岡にもあり、それぞれが各地域の火山活動の観測を行っています。火山活動の監視は、山体周辺に設置した地震計や監視カメラ等の観測機器を用いて、「火山監視・警報センター」において、24時間体制で遠隔にて常時観測しています。また、これらの観測データを補完し、より詳細に火山活動の状態を把握するために、火山周辺(現地)に立ち入り、様々な観測機器を用いて、現場における火山の活動状況に関するデータを取得しています。こうした機動観測業務のほか、常時観測機器の維持管理も行っており、機器の不具合、電源や通信の障害等のトラブルが発生した際、できる限り迅速に復旧し、適切な火山監視体制を維持できるよう対応しています。
 このように、現地での機動観測、常時観測機器の維持管理及びそれに関わる実行計画の立案から実施の調整まで、火山の観測に関わる業務を担当しています。
噴石調査
噴石調査(2004年 浅間山)
現在の業務の中で、特に重要な業務は何ですか。
 火山機動観測を含む火山観測の最終的な目標は、得られたデータを元に火山の活動状況を把握し、防災につなげることです。その目標の実現に向けたそれぞれの業務には一つの流れがありますので、どの業務が一番重要というものではありませんが、その流れを滞らせる事の無いよう、今は何をすべきか各業務における優先順位を決め、それを他の火山機動観測班員とも共有しつつ、適切な業務分担のもとにバランスよく業務全体を進める事が重要と考えます。
近澤さんは、いつ頃から火山に興味を持ちましたか。
 2000年に気象大学校にて受けた職員研修で火山業務を知り、技術的な発展余地が大きい分野ではないかと感じ、それまではあまり接点のなかった火山に興味・関心を覚えました。そんな中でリアルタイムに「有珠山」の火山活動が始まり、その後6月には「三宅島」の噴火と立て続けに火山が起きることで、更なる興味をもち、2001年より業務として携わる事となりました。それからちょうど25年が経ちます。国土交通省の歴史と同じですね。その間、様々な部署を経験してきましたが、トータルでは火山に関わる時間が最も長いです。
噴火中の火山で、火口付近での観測も行うのでしょうか。
 まさに噴火している場面で火口付近に近づいて観測することはありませんが、安全を確保した上で可能な範囲で火山に近づき、影響のない場所からサーマルカメラ(温度測定可能なカメラ)で観測、噴出物の採集を行い、どのような火山活動か分析することはあります。
チームでの連携や現場での判断について教えてください。
 現在のように通信網が発達していなかった時代は、一度現場に入ると連絡手段もなく、様々な現象、アクシデント等に対して現場にいる人間だけで判断する必要があったため、事前にチーム内で認識を合わせ、考えられ得ることを事前に想定したうえで現場に臨むことが求められました。現在も、事前の情報共有の徹底、現場における適正な判断が必要である点に変わりはありませんが、通信技術やデジタルツールの発展により、遠隔からも様々な情報を共有、連携できるようになりましたので、現場が孤立するといった事態は減っているように感じます。
実際に機動観測に携わってきた中で最も印象に残っている観測と、そのときの状況を教えてください。
 火山課に配属になり初めて火山活動の観測を行ったのが、2001年の「三宅島」です。活動状況を確認するため、防衛庁(現・防衛省)や海上保安庁、警視庁、東京消防庁の協力のもと、ヘリコプターにて上空から観測を行いました。「三宅島」では、2000年の噴火で深さ400~500mほど、直径約1.6kmのカルデラが出来ましたが、現地に到着した際、噴火前にはそこにあったはずの地面がなくなり、ただ広々とした空間になっているのを目の当たりにしときに、火山が及ぼす影響の大きさ、自然活動のダイナミックさを強く感じました。
三宅島
噴火当時の三宅島
想定外の事態が起きたときの対応を教えてください。
 火山活動の全てを想定することはできませんので、常に想定外が起き得ることを念頭に機動観測を実施しており、特別な対応というものはありません。ただ、例えば、観測機器が故障した際に、現地で確認すると、事前に想定していたものと全く異なる事象が発生していたり、事前の準備が足りていなかったことが判明する、といった場面があります。そのような場合、完全ではなくとも必要な観測を最低限継続できるよう、手元にある機材のみで対処するなど、柔軟性をもって臨機応変に対応していく必要があります。
急に火山活動が活発化することもあるのでしょうか。
 もちろんあります。それまで静かだった火山で、突然、地震の発生回数が増加し、地下深い場所での火山活動が徐々に浅い場所でも見られるようになる等、ごく短時間のうちに急速に活動状況が変化し、場合によっては噴火に至ることもあります。
緊急時の対応で特に難しいと感じるポイントはありますか。
 緊急時、すなわち火山活動に異常を捉えた際には、必要に応じて火山噴火等の危険が及ぶ可能性があるとして立ち入りが規制された領域内で機動観測を実施することになります。何が起きるか事前に完全に把握することが難しい火山活動に対して、現地で対応する職員の安全を確保しつつ、いかに火山活動を把握する上で効果のある観測を行うか、その判断は迅速かつ慎重に行う必要があり、大変難しさを感じる点です。

02 日本における「火山機動観測」について

身近な存在である火山を監視し、得られたデータを防災に活かす
火山機動観測の技術は、日本にとってどのような意義がありますか。
 日本では、全国に活火山が111存在し、非常に身近な存在です。ある日突然、自分のすぐ近くで火山活動が活発化する、といったこともあり得ます。気象庁は、国民にとって身近な存在である火山を常に監視し、地域の方々にいち早く防災情報をお届けすることをミッションとして活動していますので、機動観測技術を常に磨き続けることは、日本において非常に有意義な活動であると考えています。
「火山 その監視と防災」
「火山 その監視と防災2
この技術は災害対策や防災にどのように役立っていると感じますか。
 火山監視・警報センターが、24時間体制で遠隔にて様々なデータを監視しており、以前に比べ観測の精度は非常に上がっています。ただ、火山周辺地域で実際にどのような現象が生じているか、限られた観測網の中でそのすべてを把握することは難しく、定期あるいは臨時に現地に出向いて観測を行い、観測データのさらなる補完を行っています。今活動している火山がどのような状態かを判断する上で、機動観測に関わる技術は必要不可欠であると考えています。また、観測技術だけでなく、実際に現場に赴き、地域の方々の声を直接聞ける機会を持てることも非常に有益なことだと考えています。
火山について、国民の皆様へ伝えたいことはありますか。
 「桜島」など現在も噴火活動が頻繁に発生している火山が各地にありますが、過度に火山を恐れ、「火山は怖い」という印象だけで終わってしまうと、非常にもったいないと感じています。私が今の仕事に携わるきっかけとなったのは、実際の火山活動を目の当たりにして、恐怖と同時に、自然のダイナミズムを感じ、興味を持ったからです。まずは、ポジティブな印象から火山に触れていただき、その上でどのような危険があるかを知っていただくことが、火山を深く理解する上で大変重要だと考えています。

03 火山機動観測の技術について

新たな技術を火山観測に活用
火山噴火は、ある程度予測することは可能でしょうか。
 過去に発生した火山噴火時の観測データをもとに、噴火前にどのような現象が実際に観測されたかについては、一定の知見が蓄積されています。実際に、そうした知見をもとに、常時観測や機動観測により火山活動の高まりを捉え、火山情報を発表しています。しかし、現時点では、火山活動の推移を精緻に予測することは難しく、例えば「このような現象が起きたら、いついつ噴火が発生する」といった有意な相関関係を見出すには至っていません。
火山観測の手法については、どのような変革がありましたか。
 地震活動を遠隔で観測できるようになったこと(以前は現地の観測施設にて地震波形を紙出力していました)は大きな変革だと思います。また、火山観測が始まった当初は、地震観測だけだったものが、傾斜計、カメラ映像、地磁気や、GNSSなど観測項目自体が増え、様々な方法・切り口での観測が可能になりました。
火山活動の監視にあたり、AIが担う役割はありますか。
 現状の火山観測ではAIは活用されておらず、今後どのように活用すべきかを模索している段階です。例えば、地震が発生した際に各観測点に地震波が到達した時刻や周期、振幅を人の手で一つずつチェックする「検測」を行っていますが、これにAIを活用できるようになれば、作業時間の短縮など大幅な業務効率化が実現できると考えています。また、様々な観測種目のデータをAIが総合的に解析することで、人間には気づかない視点で火山活動を把握できるようになるかもしれません。
臨時観測点設置
臨時観測点の設置(2015年 口永良部島)
機動観測と常時観測はどのように役割分担していますか。
 観測項目は重なる部分もありますが、常時観測による遠隔からの監視だけでは把握しきれない情報も多くあり、常時観測には無い観測項目や現地に人が入る事によって感じられる情報を得ることが機動観測の役割です。また、火山活動が活発になると、監視カメラや地震計等を臨時で設置するなど、状況に応じて観測網の強化を行うことも、重要な役割となります。
機動観測では、航空機やドローンも活用されるのでしょうか。
 防衛省や地方整備局等の協力により、航空機からの観測も行っていますが、地上付近を飛ぶことは難しいため、比較的高い高度からの観測となります。広い範囲を俯瞰して見るには良いのですが、様々な方向から、より間近に細かく状態を捉えるには、ドローンのように小回りのきく機器の方が適していると考えます。現在、機動観測では、ドローンを活用した観測は行っていませんが、今後、火山活動の詳細を監視するためのツールとして有効に活用する体制を整えています。これまで容易には得られなかった上空からの観測が高頻度に実施でき、また、詳細な情報を得られることで、火山活動の把握に効果を発揮すると期待しています。

04 仕事のやりがい・今後の目標について

新しい技術を導入し、観測精度の更なる向上・業務効率化を
インタビュー②
仕事を通じて、どのようなときにやりがいを感じますか。
 火山に関する防災情報を発表する上では、観測データが一番の基礎となります。このデータが無ければ、異常を察知することも、どのような火山活動なのかを評価・判断することも出来ません。火山機動観測班の業務が火山防災を支えているという実感が、観測の実施、常時観測施設の維持管理を行う上での大きなモチベーションとなっています。
近澤さんのキャリアを振り返って気象庁で働く魅力は何ですか。
 気象・地震・火山のいずれも、自然現象を直接の相手として関われる仕事は世の中にそう多くは無く、特殊な職種であると思います。自然を相手として、一般にはなかなか出来ないであろう経験を積めることは、気象庁で働く上での大きな魅力の一つだと考えています。
近澤さんご自身の今後の目標やビジョンをお聞かせください。
 以前には出来なかった、新しい技術を業務に取り入れていくことに、ぜひ積極的にチャレンジしたいと考えています。例えば、ドローンが広く社会で活用され始めた頃、火山観測に非常に有効な技術だと感じ、是非取り入れたいと考えましたが、自分自身がまだ若く、また能力も及ばなかったこともあり、観測手法として新たに導入するには至りませんでした。その後、自分自身も年齢を重ね、業務をマネジメントする立場になったことからも、新しい技術をより積極的に活用していきたいと考えています。ドローンについては、令和8年度から実戦での投入を予定しており、非常にワクワクしています。機動観測の技術向上、効率化に役立てるともに、安定的に運用するための体制づくりにも力を尽くしたいと考えています。
国民の皆様へのメッセージをお願いします。
 我々は、災害などの情報を国民の皆様にお伝えすることは出来ますが、実際に危機に直面している方々を直接的に守ることは出来ません。そのことは、時にもどかしく、また自分自身の非力さを痛感することもありますが、火山機動観測班として課せられた使命は、あくまで「正しい防災情報を発信するにあたって必要となる観測の維持及び技術の向上」であり、それを通じて被害に遭われる方を少しでも減らすことに貢献できればこの上ない喜びです。この使命を果たすべく日々努力を続けて参りますので、国民の皆様には、我々の業務にご理解いただき、気象庁が発信する情報をぜひ有効にご活用いただきたいと思います。

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