国土交通省の「現場力」紹介(現場職員インタビュー)

国土交通省の「現場力」紹介(現場職員インタビュー)
北海道開発局 開発連携推進課

現場職員インタビュー

スクラム除雪とi-Snow

在田 尚宏のプロフィール写真

※所属・役職等は、取材時(2025年12月)のものです。

在田 尚宏

開発専門官 / 北海道開発局 開発連携推進課 1
  • 北海道開発
  • スクラム除雪
  • i-Snow

主な略歴

01 現在の業務概要

北海道の資源・特性を活かした地域の発展を支える
現在の業務内容を教えて下さい。
 私は現在、北海道開発局(開発監理部開発連携推進課)にて、「北海道総合開発計画2」に基づく業務を担当しています。
 この計画では、北海道の資源・特性を活かして地域の活力ある発展を図るため「観光立国を先導する世界トップクラスの観光地域づくり」「地球温暖化対策を先導するゼロカーボン北海道の実現」「自然共生社会・循環型社会の形成」などが主要施策に位置づけられており、当課では、これら北海道の開発に資するポテンシャルの調査等の業務に取り組んでいます。
 例えば、「地球温暖化対策を先導するゼロカーボン北海道の実現」という施策に関連し、道路排雪により集積された雪を冷熱エネルギーとして各種施設の冷房等に活用している事例があります。雪も自然エネルギー、つまり再生可能エネルギーの1つですが、まだ十分に活用されていないエネルギーの一つです。今後の更なる活用可能性等について、調査を進めています。
雪氷エネルギー資料
脚注
  1. 北海道総合開発計画
    北海道開発法に基づき、北海道の資源・特性を活かして、我が国が直面する課題の解決に貢献するとともに、地域の活力ある発展を図るため、国が策定する計画。
    現在は第9期計画となり、令和6年3月12日に閣議決定され、計画期間は令和6年度から概ね10年間。
    (第9期計画の目標)
    1 我が国の豊かな暮らしを支える北海道~食料安全保障、観光立国、ゼロカーボン北海道
    2 北海道の価値を生み出す北海道型地域構造~生産空間の維持・発展と強靱な国土づくり
    https://www.hkd.mlit.go.jp/ky/ki/keikaku/u23dsn0000000fqs.html

02 「スクラム除雪」の実施

路線バスの早期運行再開を目指して
在田さんは、令和7年2月の大雪時に、帯広開発建設部にて「スクラム除雪」に取り組まれたそうですが、これは、そもそもどのような取組ですか。
 通常、道路の除排雪は、各道路管理者(国道、都道府県道、市町村道)がそれぞれの管理する道路で実施しますが、「スクラム除雪」は、帯広市(市道)と北海道開発局帯広開発建設部(国道)が道路排雪のタイミングを合わせ、連携のうえ共同で実施する道路排雪作業です。
 具体的には、国道に接続している市道に溜まった雪を、市の除雪機械(除雪ドーザ)で国道まで押し出し、国の除雪機械(ロータリ除雪車)で国道に溜まった雪と一緒に国道排雪用のダンプトラックに積み込み、雪捨て場まで運搬する取組みです。
 「スクラム除雪」は、令和7年1月から、東北地方整備局(青森河川国道事務所)と青森県内の自治体(青森市、弘前市)で試行されていますが、今回の災害級の大雪対応の自治体への支援策として当局でも取り入れました。北海道内では初めての取組みです。
スクラム除雪(連携除雪)イメージ
スクラム除雪(連携除雪)イメージ
「スクラム除雪」に取り組むこととなった背景を教えて下さい。
(降雪状況)
 帯広市は、北海道内では比較的降雪量の少ない地域ですが、令和7年2月に記録的な大雪に見舞われました。急速に発達しながら日本海を北東に進む低気圧と、三陸沖で発生した前線を伴う低気圧、この2つの低気圧の影響により十勝地方で湿った空気が流れ込み、2月3日の夜遅くから翌4日の昼前にかけて予想を大幅に超える大雪となりました。当初の予想降雪量は最大で60cm程度でしたが、2月3日17時頃から降り始めた雪は、2月4日9時までの24時間降雪量で124cmに達し、帯広市における観測史上最多となりました。特に、2月3日21時からの12時間降雪量は120cmに達し、これは当時の国内観測史上最多となる記録的な大雪でした。
 当初の予想(最大60cm程度)でも相当な降雪量であったため、我々も国道の除雪体制を整えた上で、道路交通の混乱を避けるため、NEXCO東日本(北海道支社)と連携し、高速道路の一部区間及び国道の主要な峠区間において「予防的通行止め」を実施しました。
 その後、十勝管内の他の国道区間でも通行止めが発生する可能性があるため、職員が交代しながら対応にあたりました。2月4日午前0時時点では、降雪は多くなかったものの、午前2時過ぎから外の景色が白一色となり、吹雪とは異なる雪が深々と降り続く状況で、周りが全く見えないほどの降雪となりました。明け方5時頃にはすでに背丈ほどの雪山となり、車道と歩道の境目もわからない状況でした。

(降雪による影響と除排雪の実施)
 このように、短時間で極めて強い降雪により記録的な大雪となり、帯広市内では交通障害をはじめ社会活動や市民生活に甚大な影響が生じました。帯広市では、2月4日に「帯広市雪害対策本部」を設置し、国と北海道はリエゾンを派遣。被害状況の共有や今後の対応方針を協議した結果、帯広市内での交通障害の解消が最優先事項となりました。特に、路線バスの早期運行再開に向け、雪害対策本部の動きとは別に、帯広市、北海道、国の道路管理者に加え、バス会社、ハイヤー協会による連絡会議を開催し、道路幅員の確保及び道路排雪を優先的に実施する路線を確認しました。
 国道では、予防的通行止めを解除した後、道路幅員を確保するため、道路排雪作業に移行しました。その作業進捗も踏まえ、帯広市の除排雪作業を支援することとし、バス会社から強い要望があった、帯広駅バスターミナルから国道236号に接続する帯広市道(南12丁目西甲線)で「スクラム除雪」を実施することとしました。帯広駅バスターミナルは、高速バスのほか、市内路線バスの発着拠点です。当該市道は主に路線バスの回送ルートとして重要な区間であり、当時は安全に走行できる別のルートで回送されていましたが、時間を要するため、路線バスの定期運行再開のためにも早期の除排雪が必要な状況でした。
市道から国道への雪の押し出し
市道から国道への雪の押し出し
国道の運搬排雪に合わせ積み込み・運搬
国道の運搬排雪に合わせ積み込み・運搬

03 「スクラム除雪」に取り組む上で工夫した点

刻々と変わる情勢を見極め、効果の最大化を
インタビュー中①
「スクラム除雪」に取り組むにあたり、特に工夫された点は何でしょうか。
 「スクラム除雪」の実施個所の選定です。取組効果を最大限に発揮できる場所を特定する必要がありました。日々進捗していく道路排雪の作業計画を踏まえた市道と国道との道路排雪のタイミングを合わせることができる場所の確認、バス会社から提示された路線バス定期運行再開への必要条件(道路幅員の確保、路面悪路の解消、車両・歩行者の通行の安全確保など)を踏まえた現地状況の確認等、限られた時間の中で関係者との調整の上、実施箇所を決定しました。また、「スクラム除雪」の実施に向け、国道側の道路排雪作業に影響が生じない範囲で道路排雪計画を一部見直し、市道側の道路排雪とタイミングを合わせるなどの調整も行いました。
帯広市との連携はどのように進めましたか。
 通常、除排雪作業は、帯広市と帯広開発建設部それぞれが発注する除雪事業者が行いますが、「スクラム除雪」は“事前の準備期間も無くぶっつけ本番”の取組みのため、除雪事業者間の連携、現場作業時の安全確保が一番の課題でした。
 今回の対応では、作業動作等に関する情報の一貫性を保つため、現場のオペレーションは帯広開発建設部で一元的に行いました。当日の作業の流れ、「スクラム除雪」実施区間での除雪機械の合流のタイミングや進入方向、安全業務を担う交通誘導員の配置と作業時の連携など密に確認しました。
 また、当日は、報道関係者にも現地を公開したため、取材時の安全確保についても確認しました。
帯広市雪害対策本部参加状況
帯広市雪害対策本部参加状況
帯広市との連携において、特に難しく感じたことはなんですか。
 情報の錯綜を防ぐことです。帯広市は、大雪対応の総括窓口となる「雪害対策本部」と除雪現場を総括する担当部署の「土木室道路維持課」が対応しました。短期間で「スクラム除雪」の計画調整が必要となるため、情報伝達が伝言ゲームにならないように「土木室道路維持課」と直接連絡調整できるようにホットラインを構築し、調整結果を「雪害対策本部」に報告することで情報の統一を図りました。

04 「スクラム除雪」の反響

市民からの温かい声が励みに
帯広市の積雪状況(スクラム除雪実施当時)
帯広市の積雪状況
(スクラム除雪実施当時)
「スクラム除雪」に取り組んだことで、どのような効果が得られましたか。
大雪時には、広域的・連続的に除排雪機械が稼働します。特に道路排雪では、ダンプトラックや交通誘導員の確保は困難を極めます。
「スクラム除雪」では、市道側には除雪ドーザのみ準備していただき、国道側で準備しているロータリ除雪車、ダンプトラックと交通誘導員で十分に対応できたため、今回のように大雪時の対応では有効な取組だと感じました。
「スクラム除雪」の結果、地域の皆さんはどのような反応を示されましたか。
 「スクラム除雪」の実施後、帯広市内の道路排雪も進捗し、徐々に路線バスの定期運行が再開されることで、バス利用者の方々から「やっと動いてホッとした」「久しぶりにバスで移動できて、気分が晴れた」「バスは大事な交通手段、動いてくれて本当に良かった」など多くの温かいご意見を頂戴しました。
 また、今回の大雪では、「スクラム除雪」のほかにも、帯広開発建設部(国道)では様々な対応を実施しました。予防的通行止めに始まり、道路排雪作業の予告に係るプレスリリース、作業の進捗状況に係るSNSでの情報発信など。また、帯広市道の運搬排雪作業を支援するため、除雪機械及びオペレータの派遣を行いました。
▼除雪機械等の派遣による道路除排雪支援の実施
除雪機械等支援
帯広市道西5条通線除排雪作業
除雪機械等支援2
帯広市道西12条南乙線除排雪作業
 予防的通行止めの解除後、道路幅員確保のため速やかに道路除排雪に着手し、その進捗状況等を道路利用者の皆様に発信することで、安心感の醸成につながり、除雪事業者の皆様への感謝の声も含め、沢山の労いのコメントを頂戴しました。
 大雪など日常と違う状況下では、現地の状況をこまめに情報発信していくことが非常に大切であり、また作業に対する理解を得る上でも有効であると改めて強く実感しました。
▼排雪作業前後
排雪前
排雪前
排雪後
排雪後

05 これからの除雪について

新技術による除排雪作業の効率化を追求
「スクラム除雪」の今後についてお考えをお聞かせください。
 「スクラム除雪」は試行的な取組となりますが、今回、北海道開発局帯広開発建設部が大雪対応として実施した結果は、昨今の除雪機械の不足、人手不足への対策として有効な取組であると感じました。
 一方で、市道からの雪だし作業を複数回繰り返す必要があり、国道側では雪の積み込み時に待ち時間が生ずるなどの課題も生じました。こうした作業効率の低下や道路管理者間の費用面の考え方など、今後、整理が必要であると感じています。
「スクラム除雪」も含め、積雪寒冷地である北海道における除雪について、今後、どのような取組が有効とお考えですか。
 昨今、除雪現場においても、除雪機械の熟練オペレータの減少、少子高齢化、担い手不足などの課題があります。
 これら除雪を取り巻く課題の解決に向け、北海道開発局では、ICTの活用等で除雪作業の生産性・安全性を向上させる取組として、産学官民が連携したプラットフォーム「i-Snow3」を平成29年3月に立ち上げ、除雪機械のワンマンオペレータ化など除雪作業支援技術の検討・配備に取組んでいます。
脚注
  1. i-Snowとはプラットフォームの名称
    Smart   → 賢い、機敏な
    Nice    → 魅力的な、快適な
    Operation → 操作、運転
    Work    → 除雪作業
    i     → ICT、i-Construction、除雪への愛(諸説あり)
    https://www.hkd.mlit.go.jp/ky/jg/gijyutu/splaat0000010dmm.html
i-Snow活動イメージ
i-Snow活動イメージ
除雪装置自動制御付ロータリ除雪車(2.6m級)
除雪装置自動制御付
ロータリ除雪車(2.6m級)
 ロータリ除雪車をはじめとする除雪機械は、運転手と機械操作を行うオペレータの2名で乗車していますが、熟練オペレータの減少・担い手不足に対応するため、機械操作を自動化し、1人でも除雪機械を動かせる「除雪機械のワンマンオペレータ化」の開発を行っています。北海道開発局ではロータリ除雪車、東北地方整備局では除雪グレーダ、北陸地方整備局では除雪トラックなど、地方整備局毎に異なる機種で技術開発し、お互いに共有することで、各現場への実働配備を進めています。
 ワンマンオペレータ化に使用する「ガイダンスシステム」では、習い制御という熟練オペレータの機械操作を自動的に記録して同じ動作を再現できる技術のほか、準天頂衛星「みちびき」のGPSを使用し、雪に埋もれて目視出来ない道路の線形や道路附属物(電柱、道路標識等)の位置情報を車内モニター画面上でリアルタイムに確認する技術、除排雪時の雪の投雪時に道路付属物等の障害物を自動的に避ける技術などの開発にも取り組んでいるところです。これらの技術が、今後、除雪作業の負担軽減や、新規オペレータへの習熟サポートにつながることを期待しています。
 このような新たな技術の導入による除排雪作業の効率化や、これまでの知見をもとに今後も様々な改善を重ね、その実績を広く共有することで、除雪に係る組織力の強化につなげていくことが重要だと考えています。
i-Snow省力化イメージ
i-Snow省力化イメージ

06 仕事のやりがい・今後の目標について

時代に適応しつつ、後進育成を
インタビュー中②
今まで携わってきた業務と、業務の中で感じたやりがいを教えてください。
 道路部門を中心に、高規格道路等の建設に係る計画の立案・実施、メンテナンスなど道路の維持・管理や災害対応などの業務を経験してきました。
 若い頃は仕事を回すことに非常に苦労しましたが、様々な業務を経験することで徐々に自身の理解も深まり、自ら行動し臨機な対応が取れるようになったと思っています。業務を進める上では困難は付きものですが、職場や関係する様々な部署等のサポートを得て共通の目標に到達し、やり切った時、仕事に対するやりがいや充実感を感じています。
今後の目標・ビジョンを教えてください。
 来年(2026年)は、私自身、入局30年の節目となりますが、まだまだ一人前にはなれないものだと痛感しております。
入局後、現在までに社会情勢の急速な変化に伴い、我々の仕事も多様化し、活動の場の広がりを感じていますが、時代に即した柔軟な発想や対応、新しいことも果敢に取り入れながら、今後も開発行政、国土交通行政に尽力するとともに、これまでに先輩方から受け継いだ経験・知識、私自身の経験・知識を、次の世代へと確実に継承し、後進育成に励んでいきたいと思います。

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