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「現場力」を発揮した業務・職員インタビュー
国土交通省の「現場力」を発揮した業務・職員インタビュー - 国土交通省
九州地方整備局 九州技術事務所
現場職員インタビュー
インフラDX人材の育成
※所属・役職等は、取材時(2025年12月)のものです。
南竹 知己
副所長 / 九州地方整備局 九州技術事務所
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インフラDX
技術開発
人材育成
主な略歴
1996(H8).4
建設省九州地方建設局緑川ダム管理所 採用
2017(H29).4
国土交通省九州地方整備局企画部情報通信技術課 係長
2019(H31).4
国土交通省関東地方整備局荒川下流河川事務所河川情報課 課長
2021(R3).4
国土交通省九州地方整備局企画部技術管理課DX推進室 課長補佐
2024(R6).4
現職
脚注
https://www.qsr.mlit.go.jp/kyugi/
←
01
DX(デジタル・トランスフォーメーション)
デジタル技術の活用で業務効率を飛躍的に高める
これまで、DX関係にかなり携わってきており、九州地方整備局をリードするような立場と伺っています。DXを、読者の皆さまにわかりやすく教えていただけますか。
DX(デジタル・トランスフォーメーション)とは、デジタル技術を用いて働き方、企業風土を変革することです。
例えば、レコードからCDに変わったことはアナログからデジタルへの変化ですが、我々の生活スタイルは変わっていません。これは単なるデジタル化であり、DXではありません。一方、iPodからストリーミング配信へ変わったことは、ネットで探して配信できるようになり、我々の生活スタイルが大きく変わりました。これがDXです。
九州地方整備局DX体験プログラムや職員研修では、効果が高く、職員が容易に扱える技術をカリキュラムに導入しています。DX体験プログラムでの具体的な例としては、スマホでの点群取得や議事録の自動作成アプリなど、簡単な操作で効用が高い技術を取り入れています。 デジタル技術の活用により、業務の効率を飛躍的に高めるもの、それがDXです。
02
現在の職務概要
インフラDXを通じて建設業の生産性を向上
九州インフラDX人材育成センターの外観
現在は九州技術事務所の副所長を務められていますが、どのような業務に取り組まれているでしょうか。
九州技術事務所の副所長という立場で、主に、同事務所内に開設した「九州インフラDX人材育成センター」で、地方整備局職員、建設業界関係者、これから建設業界を目指す学生の方々を対象に、官民のインフラDX
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人材の育成に取り組んでいます。具体的にはVRや3D計測などインフラDXを体験できる機会や災害対策車両等の見学機会を設けています
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。その他、整備局内の事務所から技術的に困っていることなどを伺い、我々が開発している様々な技術を活用し、課題解決をサポートしています。
脚注
インフラ分野においてデータとデジタル技術を活用して、業務や働き方を改革し、安全・安心で豊かな生活を実現すること
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https://www.qsr.mlit.go.jp/kyugi/office/kengaku/index.html
←
「九州インフラDX人材育成センター」を開設するに至った背景を教えてください。
現在、建設業就業者は、55歳以上が35.9%、29歳以下が11.7%となるなど、高齢化が著しく進んでいます。また、少子化の影響から、担い手不足も非常に深刻です。加えて、日本の建設業は、国際的にも生産性が低いと指摘されています。
こうした現状を打破し、生産性を上げるためには、DXを強力に進めることが有効であり、令和3年度より、本省、各地方整備局でインフラDXの推進体制を構築したもので、本センターは、その一環として開設されました。
先ほども、DX体験プログラムや職員研修について簡単に触れていただきましたが、本センターで実施している各種研修や講習会について教えて下さい。
本センターでは、DXに関する様々な研修や講習会を行っています。例えば、デジタル機器を用いた研修を実施し、現場での即戦力の育成に努めています。具体的には、360°カメラを使用したバーチャルツアー作成や、スマートフォン・タブレットやレーザー計測機器、UAV
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(無人航空機、いわゆるドローン)を使った三次元点群取得などを取り入れています
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。
これら技術の活用により、災害現場で効率的な業務遂行が可能となります。従来、災害調査は、計測等に多くの人手が必要でしたが、現在は、ドローンやスマホで撮影するだけで、距離や面積が容易に計測できます。生産性が大きく上がり、人手を大幅に減らせるほか、調査の迅速化にもつながります。
こうした効果の大きい取組みを研修に盛り込み、整備局職員や自治体、建設業界団体等に体得いただいています。
脚注
Unmanned Aerial Vehicleの略
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https://www.qsr.mlit.go.jp/kyugi/tech_improve/index.html
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センターへの来訪者数について、令和6年度は前年度比1.4倍増、団体数についても令和6年度は前々年度比3倍増と大幅に増えています。これらの要因をどう捉えていますか。
社会全体でDXへの関心が非常に高まっていることが要因と思います。決して技術が高度である必要はなく、身近なデジタル技術を用いて、働く人の負担軽減、安全確保、省力化、工期短縮等のメリットを生じさせることが何より重要です。このため、当センターでは、すぐ日常に反映できるレベルの取組みを行っているところ、そういう取り組みやすさ、内容が来場された方々の口コミで広がったものと思います。
センター内での講習風景
03
インフラDX
住民説明や被害状況把握などで実装中
国土交通省ではインフラDXを推進しているところですが、インフラDXの推進にどう取り組まれていますか。
DXによる効率化余地の大きい業務、技術を習得するまでの所要日数、研修の受講率などを定量的に分析し、短時間で習得でき、かつ、効果が大きい技術から優先して導入しています。
DXというと、よくBIM/CIM
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として三次元CAD
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などから導入を始めるケースが見られますが、当整備局ではタブレット計測など技術的にも費用的にもハードルが低く、現場で取り入れやすいコンテンツから導入を進めているのが特徴です。また、現地で取得した三次元点群データを活用して、仮想空間での様々な体験ができるVR研修について評価を頂いており、他の地方整備局にもVR研修のコンテンツを提供しています。その他、三次元点群の取得や空撮を行うための無人航空機(以下UAV)運用のための職員向けの講習を実施しています。
国土交通省におけるUAVの運用は、平成25年頃に砂防系事務所で始まり、広島豪雨災害(平成26年)では、TEC-FORCE(国土交通省緊急災害対策派遣隊)
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による活動の中で、初めて災害現場で活用されました。
その後、当整備局が「無人航空機登録講習機関」として登録されるための業務に携わってきました。現在は、国の機関として初めて登録され、UAVに関する講習の実施など、整備局職員が安全にUAVを活用できる体制づくりを進めています。
脚注
Building / Construction Information Modeling, Managementの略。建設事業で取扱う情報をデジタル化することにより、調査・測量・設計・施工・維持管理等の建設事業の各段階に携わる受発注者のデータ活用・共有を容易にし、建設事業全体における一連の建設生産・管理システムの効率化を図ること。
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コンピュータ上で立体モデルを設計・作成するためのソフトウェア。
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https://www.mlit.go.jp/river/bousai/pch-tec/index.html
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九州地方整備局にとどまらず、他の地方整備局等でのDX推進にも役立っているのは凄いですね。現場の声はどのように反映されていますか。
災害派遣や災害査定の経験を通じて、国交省職員、自治体職員、被災者された方々の災害現場での困りごとを把握し、その解決策を考えるよう心掛けています。
また、建設業界関係者とも定期的に意見交換し、業界ニーズを把握するようにしています。例えば、高額なレーザー計測機やドローンを導入したものの全く使われていない、という相談を受けることもありますので、有効活用するための仕組みを提案しています。こうした現場のニーズをとりまとめて、DXの取組みに反映させることを意識しています。
VR関連機器、3Dプリンター展示コーナー
インフラDXの主な取組みとして、ゲームエンジン
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を用いたVRが紹介されています。これはインフラ分野にどのような影響を与え、今後どのような可能性や期待があるとお考えでしょうか。
一番大きな効果は、地域住民の皆さんと迅速に合意形成を図れる点です。今後の工事計画や景観のイメージを工事前の段階で住民の皆さんにお示しし、バーチャル空間の中で、住民の皆さんの意見を伺いながら修正を行いつつ、工事完成後の様子を共有できるのは、地域に喜ばれるインフラ整備を進める上で大変有効です。
ゲームエンジンを用いて作成したVR画像
ゲームエンジン(アンリアルエンジン)にて作成
*本CGはイメージです。
ゲームエンジンを用いて作成したVR画像
ゲームエンジン(アンリアルエンジン)にて作成
*本CGはイメージです。
脚注
3Dのゲームを高品質、低コスト、短工期で作成するためのシステムとして作られたツール。
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お話を伺っていると、様々な技術開発に携わってきているように思います。これまでに取り組まれた技術開発の中で、印象的な事例を教えてください。また、それにより、どのような効果・メリットが得られ、現場の仕事はどう変わりましたか。技術開発を進める際に工夫されている点や特に重視している点があれば教えてください。
最も印象的だったのは、ゲームエンジンを使った住民の方との意見交換会です。バーチャル空間を活用することで、事業開始前に意見を反映できたのは大きな成果でした。
災害調査に関しては、UAVの導入により、例えば能登半島地震では、約1,190ha、90㎞に及ぶ災害現場の計測を約10日間で行うことができました。従来は、同様の作業に何ヶ月も要していましたから、大きな成果です。
UAVの導入も重要ですが、それ以上に三次元データの活用が始まったことも画期的です。UAVは、三次元データを取得するためのツールの一つで、地上のレーザー測量機でも同じようにデータが取れます。三次元データが広がることで、現場に行かずともバーチャル空間で距離、面積、体積を計測できますので、平時・災害時を問わず、現場の仕事を大きく変えました。
災害対策車両内での三次元点群データ処理作業(能登半島地震)
国民の生活にどのような形で役立っていると感じますか。
例えば、九州地方整備局のドローン隊が能登半島地震(R6)の際に取得した三次元点群データは、国土交通本省(水管理・国土保全局及び道路局)を通じて、オープンデータとして一般公開されています。
災害現場でデータを取得してから、わずか3時間ほどで関係機関に三次元点群データを提供することが可能で、捜索救助、被災状況の把握、災害査定、災害研究など様々な場面で有効活用されていると実感しています。
2024年1月19日調査(砂防・河道閉塞) 輪島市市ノ瀬町 点群データ
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2024年1月19日調査(砂防・河道閉塞) 輪島市市ノ瀬町 点群データ
脚注
https://www.qsr.mlit.go.jp/infradx/indexnotoearthquake.html
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最新技術の導入により、業務効率化を図ると同時に、行政サービスの質向上が求められると思います。これら両面を実現するためのビジョンなどあればお聞かせください。
例えば、荒川下流河川事務所(関東地方整備局)の取組は全国的に有名です。ここでは河川の巡視業務を DX化し、巡視中の映像をリアルタイムで確認するなどの仕組みや、管理区間を三次元管内図で管理するなどの仕組みを導入しています。
また、河川敷の占有地の利用について、例えば、週末にソフトボール大会を開催する際に、職員を介さずに、電子ロッカーを用いて、あらかじめ受け取っている暗証番号を入れると鍵を貸し出せるといった仕組みもあります。職員も現場に出る必要がありませんし、利用者は好きな時に借りられるので、職員、国民双方にメリットがあります。こうした仕組みは、ぜひ全国に広がってほしいと思います。
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災害派遣経験
コミュニケーションを大事にしつつ、デジタル技術を活用して業務効率化を
南竹さんは、数多くの災害派遣経験をお持ちです。特に印象に残っている経験があれば教えてください。
どの災害も印象に残っていますが、自分の想像をはるかに超える被害状況だった東日本大震災(H23)は、強く記憶に残っています。
鶴田ダム(鹿児島県)での豪雨災害(H18)も忘れられません。ダム管理所が10日間孤立し、燃料も尽きかけている中でダム操作を継続した経験は、強く印象に残っています。
そして、管内で発生した熊本地震(H28)は、デジタル技術を初めて本格投入した現場で、UAVを用いて災害調査を実施し、三次元点群を取得しました。一つに絞るのは難しいですが、この三つは特に印象深いです。
ドローンを使用した被害状況調査(能登半島地震)
災害対応の現場でのデジタル技術の活用可能性についてどうお考えでしょうか。
能登半島地震の際に、被災状況をオープンデータとして速やかに公開したことは、とても画期的でした。
現状、我々のUAVは2,000~3,000m程度の範囲しか飛ばないため、広域での調査は難しい側面がありますが、最近はパワード・リフト機やハイブリッドドローン等の長距離飛行が可能なドローンや、低軌道衛星を使ったリモートセンシング技術で、被災状況をより短時間のうちに詳細に把握できます。こうした技術を用いることで、災害発生直後の情報収集や、復旧・捜索救助活動の迅速化が図られると期待しています。
ドローンを使用した被害状況調査(能登半島地震)
災害現場では、初めてコンタクトを取る国交省職員の方々も多くいると思います。普段顔を合わせていない仲間と仕事をする際に気を付けていることは何ですか。
災害現場では、初めて一緒に仕事をする仲間と組むことが多くあります。特に我々のようにUAVを扱う場合、十分なコミュニケーションをとらないと事故の危険もあるため、チームの関係構築は非常に大事な視点です。
このため、ドローン研修の中には、CRM(クルーリソースマネジメント)というカリキュラムがあります。これは、用いることができるリソースを最大限に活用し、そのチームのパフォーマンスを発揮させることを目的としたカリキュラムです。例えば、人的リソースを有効に活用するために、災害現場に行くまでの間にお互いコミュニケーションをとり、仲間の性格や特徴、趣味、仕事、得手不得手などを話しながら、チームとしてのパフォーマンスを高めていくという考え方です。災害現場をフライトする前には、バーチャル空間でフライトシュミレーションを実施するなど事前準備の必要性・方法なども学びます。こうした準備を重ねることで、初めての相手ともチームとして活動できます。
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仕事のやりがい・これからの目標
若い世代への技術伝承と建設業の魅力向上
災害対応、インフラDX、人材育成など幅広い業務に携わっておられる中、特にやりがいを感じる業務はありますか。
どの業務もやりがいを感じますが、若い職員が災害現場で活躍する姿や、技術開発に取り組んでいる姿を見ると嬉しいです。一緒に働く仲間、特に若い職員が活躍している様子を見ると、嬉しく思います。
例えば、令和7年10月、九州技術事務所では、「Qgi(九技)-Hornets」というUAVの技術開発試験飛行隊が結成されました。所属職員は、様々なシーンでUAVを安全に活用するための試験や活用法などを自らで実践し、他の事務所からの空撮動画撮影や三次元点群データ取得の要請に対応しています。また、それらの経験で得たノウハウは、九州地整の防災ドローン隊である「BlueHawks」とも共有しています。そこで活躍している職員が、現場で新しい戦力として活躍してくれるのは、嬉しく思いますし、本当にやりがいを感じます。
Qgi-Hornets 設立式
Qgi-Hornets 活動風景
南竹さんご自身の今後の目標をお聞かせ下さい。
職員の人材育成に携わっていきたいと思います。若い職員が、災害現場だけでなく、通常の業務過程でも、新しい技術を活用すべく果敢に取り組んでいる姿を見るのはすごく嬉しいです。最終的には、人間のコミュニケーションが大事になりますので、その重要性を伝えたり、職場の雰囲気づくりに関わったりする仕事に携われればと思います。
センター内での講習風景
国民の皆様へのメッセージをお願いします。
まずは、TEC-FORCEの存在を知っていただくとともに、その裏には災害復旧、人命救助に尽力する建設業の皆さんの力があることをご認識いただきたいと思います。
建設業には「きつい」というイメージがあるかもしれませんが、実際はとてもやりがいがある仕事です。だからこそ、建設業についての理解が進み、国民の皆さんにぜひ興味を持っていただきたいと思います。
ご自身のキャリアを振り返ってみて、国土交通省で働く魅力は何ですか。
仲間と一緒に仕事し、目的を達成することだと思います。道路整備、河川整備、まちづくり、すべて同様です。国土交通省職員だけでなく、自治体職員や地域の皆さまも含めて、仲間と共に仕事携わり、成果を出すことは、一番の魅力だと感じています。
どのような人にセンターに来てもらいたいと感じますか。
ぜひ、たくさんの方に来ていただきたいと思います。特に、建設業界を目指す若い世代、小学生でも構いません。そういう方に、ぜひ来ていただきたいと思います。
また、既に建設業に従事されており、DXや新しい技術に悩まれている方にも、来訪いただければ幸いです。
屋外での講習風景