第7編 航空災害対策編
 
本編では、航空運送事業者の運航する航空機の墜落等の大規模な航空事故による多数の死傷者等の発生といった航空災害に対する対策について記述する。
 
第1章 災害予防
 
第1節 航空機の安全な運航の確保
第1 航空従事者、航空保安職員の養成・研修の充実
次世代航空保安システムを運用する職員の技術取得や資質向上を図るなど、航空保安大学校等における航空保安職員の研修の充実を図る。
第2 航空運送事業者等への安全指導
(1) 航空関係諸規則の遵守の徹底等
航空運送事業者等に対し、航空関係諸規則の遵守の徹底を指導するものとする。
多様化する運航・整備形態に即した適切な航空関係諸規則の整備を図る。
(2) 教育訓練の充実等
航空運送事業者等において、実施する航空従事者等に対する安全教育・訓練の着実な実施を指導する。
航空運送事業者に対し、過去の事故実例等を参考とした実践的な教育訓練内容の設定及びその実施を指導する。
航空運送事業者等の行う教育訓練の実施状況を把握し、必要に応じてその改善・充実等を図る。
(3) 定期的な安全指導
航空運送事業者に対し、定期的に行う安全指導において、適切な運航管理体制の整備、安全意識の高揚その他事故防止に資する事項について重点点検を行う。
第3 再発防止対策の推進
航空・鉄道事故調査委員会の勧告及び建議等を踏まえて、同種事故の再発防止のために、必要な安全対策の実施を図る。
第2節 航空機の安全性の確保
国際民間航空機関(ICAO)における国際標準の策定その他の活動に積極的に参加するとともに、国際標準の改訂等を我が国の安全性に関する技術基準へ速やかに反映させることにより、安全性の向上を図る。
諸外国の技術基準との整合性にも配慮しつつ、航空機技術の急速な進展を航空機及び装備品等の安全性に関する技術基準等へ反映させることより、安全性の向上を図る。
民間事業者の能力や外国政府の証明等の活用を通じて航空機検査制度の合理化を図る一方、航空機製造国等諸外国の航空当局と連携し、安全性に関する情報交換を通じて航空機等の安全性の向上を図る。
航空運送事業者に対し、定期的及び随時に安全性確認検査等を実施し、事業者の航空機整備体制及びその実施状況について確認することを通じ、事業機の安全性が確保されるよう指導・監督する。
航空運送事業者以外の整備事業者に対しても、事業場認定検査等を通じて適正な航空機整備が行われるよう指導・監督する。
第3節 情報の収集・伝達体制の整備
第1 情報伝達ルートの確立
発災時等に災害応急対策の実施に関し、必要な情報の連絡を迅速かつ確実に行うことができるよう省内(本省、地方支分部局等の内部、本省と地方支分部局等の間、地方支分部局等相互間。以下、この節において同じ。)及び関係省庁、地方公共団体、関係公共機関、関係事業者との間で情報伝達ルートの確立を図る。
第2 情報伝達手段の確保
発災時等に省内及び関係省庁、地方公共団体、関係公共機関、関係事業者との間で情報伝達手段を確保するため、ポケットベル・携帯電話・自動車電話等の移動通信機器の充実に努める。また、重要回線の専用線化、高度化、衛星通信・無線通信の活用を含めた多重化等について検討する。
その際、夜間、休日、出勤途上においても、的確に対応できる体制を整備することとし、このため、省内関係者へのポケットベル・携帯電話の貸与、コンタクトポイントとなる者の複数化及び情報ネットワークの活用等の措置を講じる。
第3 多様な情報収集手段の確保
関係省庁及び地方公共団体が整備する画像情報収集システム、被害状況の早期予測システム等へのアクセス手法が確保されるよう努める。
第4節 航空交通の安全のための情報の充実
航空路誌、ノータム等により航空交通の安全確保に関する情報を適時・適切に提供する。
航空運送事業者に対し、航空交通の安全に関する各種情報を態様、要因毎等に分類、整理し、事故予防のために活用し、必要な措置を講ずるよう指導する。
航空運送事業者に対し、分類整理した各種情報を事業者相互間において交換し、情報の活用を促進するよう指導する。
第5節 空港における応急体制の整備
 自らまたは地方公共団体、関係公共機関、関係事業者を指導して、不特定多数の者が利用する空港施設等について以下のような応急体制の整備に努める。
第1 利用者の避難誘導体制の整備
発災時等における利用者の避難誘導に関わる計画を作成する。計画の内容については、避難者の集中・殺到や混乱の発生にも十分配慮したものとなるようにする。また、避難誘導計画の内容を空港施設で業務に従事する職員に周知徹底するとともに、避難路等については、空港施設内に掲示することにより、利用者に対して明示する。このほか、職員を対象に発災時等を想定した避難誘導に関わる訓練を実施する。
第2 負傷者の搬送体制等の整備
空港管理者及び地方公共団体に対し、救助工作車、救急車、照明車等の車両、ヘリコプター及び応急措置の実施に必要な救急救助用資機材の整備に努めるよう指導する。
第3 消防体制及び救急医療体制の整備
空港管理者及び地方公共団体に対し、消防ポンプ自動車等の消防用機械・資機材の整備促進に努めるよう指導する。
空港管理者及び地方公共団体は、あらかじめ、空港管理者と医療機関、消防と医療機関及び医療機関相互の連絡体制の整備を図るとともに、医療機関の連絡・連携体制についての計画を作成するよう努める。
空港管理者、日本赤十字社及び地方公共団体に対し、負傷者が多人数にのぼる場合を想定し、応急救護用医薬品、医療資機材等の備蓄に努めるよう指導する。
第4 建設中の空港施設等における工事関係者の避難誘導体制の整備
発災時における工事関係者の避難誘導に関わる計画を作成するとともに、避難誘導計画の内容を工事関係者に周知徹底する。また、工事関係者を対象に発災時等を想定した避難誘導に係わる訓練を実施する。
第5 自衛隊への派遣要請
空港事務所長等法令で定める者は、自衛隊への派遣要請が迅速に行えるよう、あらかじめ、要請の手順、連絡調整窓口、連絡の方法を取り決めておきとともに、連絡先を徹底しておく等必要な準備を整えておく。
第6 空港緊急計画の整備
空港管理者は、防災関係機関との相互の連携を強化するためにも、国際民間条約第14付属書に準拠した空港緊急計画を策定する。
第6節 捜索・救難体制の整備
東京救難調整本部を通じて、捜索活動等に従事する関係省庁に対して情報を伝達する体制を維持・整備する。
第7節 代替輸送の実施体制の整備
関係省庁、地方公共団体、関係公共機関、関係事業者と協力して、空港施設が被災し本来の機能を維持できなくなった場合にも、被災空港を発着地とする輸送に大きな支障が生じないよう、代替輸送の実施体制の整備を図る。
第8節 被災施設の応急復旧体制の整備
発災時に、空港施設の被害状況の把握及び応急復旧を迅速化かつ的確に行うため、復旧に必要な技能を有する職員の確保、復旧用の資機材の整備等を図る。また、発災時に、復旧に必要な技能を有する職員を必要に応じて、地方公共団体、関係公共機関、関係事業者に派遣するための体制を整備する。所管の特殊法人についても同様とする。
地方公共団体、関係公共機関、関係事業者の管理する施設の被害状況の把握及び応急復旧を迅速かつ的確に行うため、地方公共団体、関係公共機関、関係事業者に対し、復旧に必要な技能を有する職員の確保、復旧用の資機材の整備、復旧に必要な技能を有する職員や資機材等の相互融通を含めた事業者間の広域的な応援体制の確立等について指導・助言する。
第9節 被災者等に対する支援体制の整備
自らまたは地方公共団体、関係公共機関、関係事業者を指導・助言して、その管理する施設、土地について避難場所としての活用の可能性を図る。また、避難場所として活用することが適切な施設、土地については地域防災計画等で避難場所として明確に位置づけるよう、地方公共団体に要請する。
第10節 被災者等への情報提供体制の整備
報道機関や通信会社と協力し、空港施設の被害状況や利用可能な程度、公共交通機関の運航状況、地方公共団体、関係公共機関、関係事業者による被災者等への支援対策の実施状況等に関する情報を被災者を含む一般国民に提供するための体制の強化を図る。また、発災時等に被災者等からこれらの情報についての問い合わせがあった場合に的確な対応ができるような体制の整備に努める。
第11節 二次災害の防止体制の整備
自らまたは関係事業者を指導して、危険個所の把握・監視、危険の発生が切迫した場合の関係者への通報、倒壊のおそれのある施設の除去等に係わる計画の策定、資機材の備蓄等により二次災害を防止するための体制の整備に努める。
第12節 防災訓練及び防災についての啓蒙活動の実施
発災時に応急対策が適切かつ円滑に行われるよう、以下のとおり、防災訓練及び防災についての啓蒙活動を実施する。また、地方公共団体、関係公共機関、関係事業者に防災訓練及び防災についての啓蒙活動を鋭意実施するよう指導・助言する。
第1 防災訓練の実施
関係省庁、地方公共団体、関係公共機関、関係事業者と協力して、航空災害の発生を想定した防災訓練を実施する。この場合、訓練内容が実践的で効果的なものとなるよう、事前に十分な準備を行うとともに、実施後にその結果を評価し、必要に応じて、防災対策の点検、見直しを行う。
関係省庁、地方公共団体等が実施する訓練に積極的に参加する。
第2 防災についての啓蒙活動の実施
関係省庁、地方公共団体、関係公共機関、関係事業者と協力して、防災思想の普及徹底及び防災知識・技能の向上を図るため、次のような啓蒙活動の実施に努める。
(1) 国土交通省及び関係公共機関、関係事業者の職員を対象とした防災に関する研修会、講習会の開催。防災に関するパンフレット、リーフレット等の作成、配布。
(2) 広く一般国民を対象とした防災に関する講習会、シンポジウムの開催。キャンペーン運動の展開。国の防災対策、交通機関、空港施設内で被災した場合の対処要領等を内容とするパンフレット、リーフレット等の作成、配布。
第13節 航空交通環境の整備
空港整備七箇年計画等に基づき、空港、次世代システムを含む航空保安施設等の整備を行うとともに、空港周辺対策の実施を図る。
第14節 防災に関する研究の推進
災害による被害の発生防止または軽減を図る観点から、関係省庁、地方公共団体、関係公共機関、関係事業者のほか、大学、民間研究機関、海外研究機関とも協力して、防災に関する科学技術の研究の推進を図る。
研究のより一層の充実を図るため、所管の研究機関における研究用の資機材及び装備の高度化、専門の研究者の育成等を図る。また、研究機関相互間における研究者及びデータの交流、共同研究の推進等に努める。
研究により得られた成果を速やかに防災対策に反映させるよう努める。
 
第2章 災害応急対策
 
第1節 発災直後の応急対策
第1 活動体制の確立
航空災害が発生した場合、本省及び関係地方支分部局等では、非常参集要員の緊急参集、情報収集・連絡体制の確立、災害対策本部の設置、各局部課における発災時に対応した業務体制への移行等により、速やかに防災活動体制を確立する。
第2 政府対策本部等への対応
関係省庁会議の開催、政府対策本部の設置等が行われてた場合には、予め指定した職員をこれに参加させ、関係省庁との情報交換、災害応急対策の調整等に従事させる。また、政府対策本部が設置される場合には、国土交通省内にその本部を設置する。
第3 情報の収集・伝達
(1) 災害応急対策の実施に必要な情報の収集・伝達
自らまたは関係省庁、地方公共団体、関係公共機関、関係事業者を通じて、全般的な被害状況や空港施設の被害状況、公共交通機関の運航状況等の災害応急対策を講じるために必要な情報の収集を速やかに行う。
航空災害が発生した場合または発生するおそれがある場合、事故情報等の連絡を官邸、関係省庁、関係都道府県及び関係指定公共機関に行う。航空災害発生直後の被害の第1次情報等については、被害規模を迅速に把握するとともに、被害規模に関する概括的な情報等を速やかに官邸及び関係省庁に連絡する。なお、社会的影響の大きい大規模な航空災害が発生した場合、被害の第1次情報を速やかに官邸に連絡する。
なお、情報の収集・伝達にあたっては、内容の詳細な把握よりも迅速な対応に重点をおくものとする。
(2) 情報伝達手段の確保
発災後、直ちに情報伝達手段の機能確認を行うとともに、支障が生じた施設、設備の復旧を行う。また、携帯電話、衛星電話、無線通信等を活用した緊急情報連絡用の回線設定に努める。
第4 捜索、救助・救急、医療及び消火活動
捜索救難に関する関係機関として、東京救難調整本部を通じて、相互に密接に協力して、捜索活動を行う。
東京救難調整本部を通じて、捜索活動に従事する関係省庁に対し情報を伝達する。
空港管理者は、空港及びその周辺における発災に関し、速やかに被害状況を把握するとともに、迅速に救助・救急活動を行う。
空港管理者は、空港及びその周辺における発災に関し、速やかに火災の発生状況を把握し消防機関に通報するとともに、迅速に消防機関と連携協力して消火活動を行うものとする。空港管理者は必要に応じ、地方公共団体に応援を要請する。
救護班の緊急輸送について、必要に応じ、または国、日本赤十字社及び地方公共団体からの要請に基づき、輸送手段の優先的確保など特段の配慮を行う。
第2節 被災施設等の応急復旧
自ら整備し、または管理する空港施設の被害状況を早急に把握するとともに、被災した交通施設等の応急復旧を迅速に行う。
地方公共団体、関係公共機関、関係事業者を指導・助言して、その管理する空港施設の被害状況の早急な把握、被災した空港施設の迅速な応急復旧を行わせる。この場合、必要に応じて、応急復旧に係わる事業者間の広域的な応援態勢が的確に機能するよう調整を行うとともに、復旧に必要な技能を有する職員(所管の特殊法人の者を含む。)の地方公共団体、関係公共機関、関係事業者への派遣等を行う。
第3節 緊急輸送の実施
第1 基本方針
救助・救急、医療、消火活動の迅速な実施、被災者等の生活の維持、復旧用の資機材等の確保等を図るため、関係省庁、地方公共団体、関係公共機関、関係事業者と密接に連携し、陸海空の各輸送モードを活用した負傷者、応急対策要員、援助物資等の緊急輸送が円滑に実施されるよう必要な指導、調整を行う。
政府対策本部が設置された場合には、同本部による緊急輸送体制に係わる総合調整及び計画の作成等が適切に実施されるよう、関係省庁、地方公共団体、関係公共機関、関係事業者とともに、必要な協力を行う。
これらの場合において、予め定められたネットワークを踏まえつつ、交通施設等の被害状況、被災地の輸送ニーズ、輸送手段の確保状況等を勘案した適切な輸送ルートの設定、モード別の輸送分担、緊急度・重要度等を考慮した効率的な輸送活動が行われるよう留意する。
第2 関係事業者等に対する要請、調整
被災地方公共団体若しくは政府対策本部からの依頼に基づきまたは必要に応じて自ら、地方公共団体、関係公共機関、関係事業者に対し、緊急輸送への協力要請を行う。さらに、要請によっていたのでは、緊急輸送の円滑な実施に特に大きな支障があると認められる場合には、法令の定めるところにより、国土交通大臣の輸送命令を発し、緊急輸送に従事させる。
地方公共団体、関係公共機関、関係事業者による緊急輸送の実施状況を的確に把握するとともに、被災地方公共団体若しくは政府対策本部からの依頼に基づきまたは必要に応じて自ら、事業者間、輸送モード間の輸送分担、結節等についての調整を行う。
被災地方公共団体と関係公共機関、関係事業者の間で、緊急輸送に係わる費用負担についての交渉が円滑に行われるよう、必要な助言、指導を行うとともに、財政支援措置についての調整を行う。
第3 緊急輸送に対する支援
緊急輸送が円滑に実施されるよう、必要に応じ、輸送活動を実施する際に必要とされる許可手続の簡素化・迅速化等法令の弾力的な運用を図る。また、緊急輸送の円滑な実施に資するような交通関連情報を把握し、必要に応じてこれを緊急輸送に従事する事業者に提供するよう努める。
緊急輸送が安全に実施されるよう、所管の輸送モードについて安全性を確保するために必要な措置を講じる。特に、救援活動に従事する小型航空機の運航の安全確保には、十分留意する。
第4節 代替輸送の実施
被災地住民等の利便性の確保、全国的な輸送システムの維持等を図る観点から、関係省庁、地方公共団体と密接に連携し、被災空港を発着地とする輸送に係わる代替輸送が円滑に実施されるよう、関係公共機関、関係事業者に対し、必要な指導、調整を行う。
また、他の地域や他のモードからの旅客、貨物のシフトに対応できるよう、運営面を含めた受入体制の整備を図る。このほか、代替輸送に対する支援措置を講じるよう努める。
第5節 被災者等に対する支援対策の実施
第1 被災者の避難場所の提供
自らまたは地方公共団体、関係公共機関、関係事業者の管理する土地、施設で避難場所としての活用が可能なものにおいて、地方公共団体と協力し、被災者の避難場所の確保に努める。
第2 被災者等に対する宿泊施設等の提供
被災地方公共団体と関係公共機関、関係事業者の間で支援措置の実施に係わる交渉が円滑に行われるよう、必要な助言、指導を行う。
第6節 被災者等への迅速な情報提供
報道機関や通信会社と協力して、空港施設等の被害状況、公共交通機関の運航状況、地方公共団体、関係公共機関、関係事業者による被災者等への支援対策の実施状況等に関する情報については、速やかに被災者を含めた一般国民に提供する。また、被災者等から、これらの情報について問合せがあった場合に的確な対応ができるような体制を整備する。
第7節 二次災害防止対策の実施
自らまたは地方公共団体、関係公共機関、関係事業者を指導・助言して、二次災害発生の危険性のある箇所の把握・監視、危険が切迫した場合の関係者への通報、倒壊等のおそれのある施設等の除去等の措置を講じる。
第8節 自発的支援への対応
ボランティアの申入があった場合には、地方公共団体、関係公共機関、関係事業者とも調整の上、予め定めた対応方針に基づき、ボランティアの受入が速やかに行われるよう努める。