「つながっているようで、つながっていない」公共交通
電車を降りてバスに乗り継ぐ。さらにシェアサイクルで目的地へ。今や都市でも地方でも、さまざまな移動手段が整ってきています。しかし、それらをストレスなく組み合わせて使えているか?と聞かれると、多くの人が首をかしげてしまうのではないでしょうか。
ICカードに対応しているところとしていないところがある。経路を調べたり利用したりするのにはアプリが必要だが、移動手段ごとにばらばらな複数のアプリを使わなければならない。渋滞でバスが遅れていてもアプリに反映されない。結果的に「便利なはずの移動」が使いにくくなっている実態があります。
この課題に向き合うべく、群馬県前橋市をフィールドにした実証プロジェクトが始まりました。プロジェクト名は「MaaSのサービス品質向上プロジェクト」。テーマは、地域のすべての移動を「もっとつながる」「もっと使いやすい」ものへと変えることです。
前橋をモデルケースに、地域交通の仕組みそのものを再構築
今回の実証では、群馬県版MaaSアプリ「GunMaaS(グンマース)」を中心に、移動の一元化と利便性向上が図られています。複数の移動手段をシームレスに結び、ICカードによる認証機能を組み合わせることで、利用者の利便性を高めると同時に、移動データの収集と分析も可能にします。
「これまでもMaaSの取り組みは進めてきましたが、今回は国土交通省と連携し、よりチャレンジングな内容に踏み込んでいます。前橋を“モデルケース”にして、地域全体の移動体験を改めて考え直すきっかけにしたい」と語るのは、東日本旅客鉄道(JR東日本) マーケティング本部Suica・決済システム部門 Suica Renaissanceユニット マネージャーの中西良太さん。
GunMaaSでは、ICカードを使って出発地と到着地(OD)を記録し、移動全体の実態を可視化する仕組みも導入されています。これにより、地域の公共交通計画や利用促進施策の設計に、より正確な根拠が得られるようになります。
現場を知る技術と視点が、地域交通の質を高めていく
ナビゲーション機能の最適化を担うのは、複合経路検索サービス「mixway」を提供するヴァル研究所。同社は、公共交通からシェアサイクル、オンデマンド交通まで、複数のモビリティを横断する経路検索技術を持ちます。
「移動手段が増えたからこそ、今この瞬間に最も適した選択肢を、迷わず提示できることが重要です。複雑な情報を、利用者が直感的に理解できるように設計していきたい」と、ヴァル研究所、執行役員の篠原徳隆さんは意欲を語ります。
また、地域の交通政策や観光施策に数多く携わってきたケー・シー・エスは、現場に根ざしたシステム設計や交通データの解析を担当しています。
コンサルティング事業部の石田洋平さんは「到着地となるODデータを正確に取得できれば、地域の移動パターンを“推測”ではなく“事実”として把握できます。これは地域の実情に合わせた交通施策を考えるうえで、大きな助けになります」と説明します。
こうした3社の連携により、今回の実証はアプリの利便性改善にとどまらず、地域交通の運営・計画・体験を一体で見直す機会となります。
“つながる移動”は、誰もが使える交通への第一歩
交通インフラは日常に溶け込んでいるからこそ、わずかな不便や使いづらさが利用のハードルになりがちです。今回のプロジェクトは、そうした“見えにくい使いづらさ”を丁寧に洗い出し、改善していくための実証でもあります。
GunMaaSの知見は、今後、他の地域への応用も視野に入れています。全国各地でMaaSアプリの導入を検討する自治体や、公共交通の再構築に取り組む事業者にとって、本実証の成果が参考となることが期待されます。
前橋で始まったこの取り組みは、「誰でも迷わず使える交通」の実現に向けた、現場発の第一歩です。
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写真: 森裕一朗(Yuichiro Mori)
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