標準はある。でも、うまく使えていない
公共交通をより便利に、より活用しやすくするために欠かせないのが、運行情報などの「データ整備」です。現在、日本ではGTFS-JPという国内標準仕様が使われていますが、国際標準のGTFSとは一部構成や考え方が異なっており、活用する現場では、混乱や使いにくさが生じるケースも出てきています。
こうした状況を改善するために、TIS株式会社と一般社団法人日本バス情報協会が連携して進めているのが「GTFS-JPのアップデート」プロジェクトです。
GTFS(General Transit Feed Specification)は、世界中の公共交通サービスで使われているデータ形式です。乗換案内や運行情報提供など、MaaSにも欠かせない基盤ですが、日本ではこれを独自にアレンジした「GTFS-JP」が主に使われています。
日本バス情報協会の太田恒平さんは、「GTFS-JPは、日本の交通事業者や地域の実情に合わせて発展してきたものですが、そのぶん国際標準仕様と異なる点も多くなっています。例えば、路線の定義や項目の扱いに違いがあり、データ作成者が何をどう整備すべきか、判断に迷う場面も出てきています」と説明します。
仕様のずれが原因で、せっかくデータを作っても他のサービスで読み込めなかったり、活用が難しくなってしまう。結果として、地域の移動を支えるサービスづくりが進みにくくなるという課題がありました。
国際標準仕様と歩調を合わせつつ、現場に合ったかたちに
今回のプロジェクトでは、GTFS-JPの仕様を国際標準仕様と整合させながら、国内の実情にも合った形にアップデートすることを目指しています。
太田さんは「国際標準仕様に合わせることだけが目的ではありません」と話します。「運賃情報の扱いや、国内でよくある事業形態への対応など、データを作る側と利用する側の現場のニーズを取りこぼさないような形で整理していきます」と続けます。
標準仕様をよりわかりやすく、整備しやすいものにすることで、交通事業者や自治体が無理なく質の高いGTFSデータを作成できる環境づくりを目指しています。
ITと交通データ、それぞれの専門性を活かして
このプロジェクトでは、IT分野での開発力・設計力を持つTISと、交通データの専門性を有する日本バス情報協会がタッグを組みます。
「公共交通は、事業者、自治体、データ提供者、そして利用者と、関係者がとても多い分野です」と語るのは、TISの長井大典さん。
「その中で、データの仕様を見直すことは、単なる技術の話ではなく、『社会インフラとしてどうあるべきか』を問う作業でもあります。より良い標準仕様が実際に現場で使われ、業務の効率化や新しいサービスづくりにつながっていくような流れを支えたいと考えています」(長井さん)
「データ整備が楽になる」ための基盤づくり
プロジェクトでは、国内標準仕様のアップデートだけでなく、データの技術的な解説や「使い方」のガイドラインなども充実させます。
駅やバス停、路線、時刻表、運賃など、交通サービスの基礎情報を、日常業務の中でも整備・更新しやすい形式で整理し、GTFSデータの作成と利用がスムーズになるよう支援していく計画です。
「わかりやすく使いやすい標準仕様をつくるには、多くの交通事業者やコンテンツプロバイダーのみなさんの意見が欠かせません。検討プロセスの中で、ぜひ現場からの声を聞かせていただければと思っています」(太田さん)
目立たないけれど、確実に生活を支えるものになる
今回の取り組みは、一般の利用者にとっては見えにくい「データの裏側」を整える作業と言えます。ですが、これらの整備が進むことで、より正確な乗換案内、使いやすい予約サービス、地域をまたいだ移動のしやすさなど、日々の移動体験が少しずつ変わっていく可能性があります。
「交通データの整備や標準化は、地道だけれど確実に生活に役立つものです。だからこそ、関係者の皆さんと協力しながら、将来につながる基盤をつくっていきたいと思っています」(長井さん)
標準化された交通データが広く活用されることで、さまざまなサービスの質が高まり、地域を越えた移動や暮らしの選択肢も広がっていきます。
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写真: 森裕一朗(Yuichiro Mori)
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